ゴリマッチョオネエな魔法使いの素敵なお仕事

犬噛 クロ

文字の大きさ
上 下
4 / 10
1.ゴリマッチョオネエな魔法使いの素敵なお仕事

4

しおりを挟む
 ルンルンに口づけられている。理解はできても、なにが起こっているのか、スチューはついていけなかった。

「なっ、な、な」

 あまりに強く吸われていたから、唇が離れたときは、ぽんっと音が出そうだった。
 スチューはあまりの衝撃に人語を話すこと叶わず、わなわなと震えている。

「あなたの指示に従うわ。王様だろうが魔王だろうが、あなたが会えと言うなら会う。ただし報酬は、前払いでいただくわ!」

 なんだかよく分からないが、新たな災厄に見舞われる予感がする。スチューは一度は引っ込めた刃を構え直した。――が。

「うおりやああああああああッ!」

 ルンルンはいきなり、自らの衣服を破り捨てた。物凄い力で裂かれたピンクの上等な生地の下から、レースに縁取られたトランクスが現れる。

 ――女ものの下着を履いてなくて、良かった……!

 スチューは心から安堵した。そんなものを見せられた日には、きっと発狂し、なにをするか分からなかっただろうから。
 しかしこれからなにが起こるのか、自分はなにに巻き込まれているのか。

「よいしょ」

 戸惑うスチューの前で、ルンルンは最後の一枚をお上品に脱ぎ去る。そしてぴょんとカエルのように跳ね、スチューに飛びかかった。

「わっ、わああああああ! 来るなあああああ!」

 手にした短刀で、刺し殺すのは容易い。が、この魔法使いは、王に召し出された重要人物なのだ。

 ――どうする!?

 対応の仕方を一瞬迷ったせいで、スチューの動きは鈍り、結果ルンルンに押し倒されてしまった。

「はっ、離せ! 血迷ったか、ルンルン!」

 スチューはじたばたと暴れる。唯一の武器である短刀はとっくに取り上げられ、遠くに投げ捨てられてしまった。

「失礼ね、アタシは至極正常よ! むしろビンビンに冴え渡ってる! ようやく運命の人に会えたってね! 堕ちたのは――アタシのほうだわ」
「うんめいのひと……だと……!?」

 スチューに伸し掛かったルンルンは、興奮に爛々と光る目で演説を始めた。

「類まれなる胆力! 濁りない志! ――強い! あんたみたいな鋼の女を、アタシは探し求めていたの!」
「ひ、人違いだ! ジブンはそんな、大層なものじゃない!」
「あら、謙遜しないで!」

 ドレスを着ていたときから察していたが、ルンルンの体は鎧のような筋肉に覆われていた。そんじょそこらの軍人では敵わないだろうほどの恵体である。スチューだって鍛えてはいたが、ルンルンの化け物じみた力で要所要所を抑え込まれてしまっては、どうやっても彼を跳ね除けることはできなかった。

「あ、あなたはそっち側の人では……!? だ、男性が好きなんじゃないのか!?」
「よく誤解されるんだけど、アタシ、根っからの女好きなの。好き過ぎて好き過ぎて、自分のスタイルも女に寄せちゃったってわけ」

 真相を聞いて、スチューはキレた。

「紛らわしいことをすんなあああああッ!!!!!」
「ま、そんなわけだから」

 片時もおとなしくせず、半狂乱で足掻くスチューの足首を掴み、針金のように楽々左右に開くと、ルンルンは彼女の中心に力強く腰を突き入れた。

「いっ……!」

 スチューの膣内には、謎の植物が吐いた蜜液が未だ残ったままだ。そのせいでいきり立ったルンルンの男根を、容易に受け入れてしまった。
 入ったことは入ったのだが――。ルンルンのそれは、非常識なほどの大きさであった。特に、スチューにとっては。

「いた、痛い……!」

 激痛に息が詰まり、目の前に星が飛ぶ。苦しんでいるスチューに遠慮なく、ルンルンは己を根本まで収めてしまうと、深い溜め息をついた。

「ああ……気持ちいい。やっぱ愛のあるセックスっていいわあ! 久しぶりに感じちゃう」
「貴様……っ! あいなんてないのに……っ!」

 ルンルンは繋がったまま、スチューの体を持ち上げると、あぐらをかいた自分の膝の上に乗せた。互いに向かい合ったところで、スチューがボロボロ涙をこぼす。

「は、初めてだったのに……っ! こんなの、こんなの、ひどい……っ!」
「あら」

 スチューの怒りの訴えにルンルンは目を丸くしたが、悪びれる様子もなく、にんまりと笑った。

「アタシあんまりそういう、女の膜のあるなしにこだわるタイプじゃないんだけど、嬉しいものねえ。あら、そうなの~? アタシが、あんたの初めての男なの~?」

 こちらの痛みと悲しみをよそに、デレデレ嬉しそうな魔法使いに、スチューは殺意を抱いた。

「もうやだ! 離せ!」
「だから、これは報酬の前払いだって言ったじゃない。アタシを連れてくって言うなら、頑張って耐えなさい。それがあんたのお仕事でしょ?」
「うっ、うう……っ」

 やめる気はないようだが、それでも挿入の角度を浅く変え、腰の動きを弱めて、ルンルンはスチューに何度も口づけた。

「ね、そういえばあんた、名前、なんていうの?」

 間抜けな話だが、スチューはまだルンルンに名乗っていなかった。

「す、スチュー。スチュー・ギルバイト……」

 しゃくり上げながら、スチューは自らの名を告げた。

「そう、凛々しい名前。あんたにぴったりね」

 奇抜な化粧や服装やらにばかり気を取られていたが、まつ毛が当たるくらい近くで見る魔法使いは、目鼻立ちが整っていた。いかついが、彫りが深い。きちんと男の格好をすれば、さぞ女にモテるだろうに。だがそれは、言ってもしょうがないことだ。ルンルンは自分の生きる道を、決めているのだろうから。
 唇を合わせながら、自分の体なのに知らなかった深いところまで貫かれて、揺すぶられて……。スチューは朦朧となった。
 品の良い香水の――ルンルンはとてもいい匂いがする。彼の香りに包まれていると、破瓜の痛みは薄れて、熱ばかりが植えつけられていくようだ。

「ガチ惚れしたわ。ずーーーーーっと一緒よ、スチュー。愛してる」

 ルンルンはスチューを抱きながら、なんの遠慮もなく、欲望を解き放った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

赤髪騎士と同僚侍女のほのぼの婚約話(番外編あり)

しろねこ。
恋愛
赤髪の騎士ルドは久々の休日に母孝行として実家を訪れていた。 良い年頃なのに浮いた話だし一つ持ってこない息子に母は心配が止まらない。 人当たりも良く、ルックスも良く、給料も悪くないはずなのに、えっ?何で彼女出来ないわけ? 時として母心は息子を追い詰めるものなのは、どの世でも変わらない。 ルドの想い人は主君の屋敷で一緒に働いているお喋り侍女。 気が強く、お話大好き、時には乱暴な一面すら好ましく思う程惚れている。 一緒にいる時間が長いと好意も生まれやすいよね、というところからの職場内恋愛のお話です。 他作品で出ているサブキャラのお話。 こんな関係性があったのね、くらいのゆるい気持ちでお読み下さい。 このお話だけでも読めますが、他の作品も読むともっと楽しいかも(*´ω`*)? 完全自己満、ハピエン、ご都合主義の作者による作品です。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます!

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

学園一のイケメンにつきまとわれています。

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 主人公・文月栞(ふみづき しおり)は静かに暮らしたい――。 銀縁の(伊達)メガネとみつあみにした黒髪で、地味で冴えない文学少女を演じ、クラスの空気となりたい栞。しかし彼女には壮絶な過去があった。 何故かその過去を知る『学園一のイケメン』の異名を持つ曽根崎逢瀬(そねざき おうせ)に妙に気に入られてしまい、彼女の目立ちたくない学園生活は終わりを告げる!? さらに『学園で二番目のイケメン』や『学園の王様』など、学園の有名人に次々に囲まれて、逆ハーレム状態に!? 栞の平穏無事になるはずだった学園生活は、いったいどうなってしまうのか――? みたいな、女性向け逆ハーレム系恋愛小説。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

【完結済】公私混同

犬噛 クロ
恋愛
会社の同期、稲森 壱子と綾瀬 岳登は犬猿の仲。……のはずだったが、飲み会の帰りにうっかり寝てしまう。そこから二人の関係が変化していって……? ケンカップル萌え!短めのラブコメディです。 ※他の小説投稿サイトにも同タイトル・同PNで掲載しています。 ※2024/7/26 加筆修正致しました。

日常的に罠にかかるうさぎが、とうとう逃げられない罠に絡め取られるお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレっていうほど病んでないけど、機を見て主人公を捕獲する彼。 そんな彼に見事に捕まる主人公。 そんなお話です。 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

そんな目で見ないで。

春密まつり
恋愛
職場の廊下で呼び止められ、無口な後輩の司に告白をされた真子。 勢いのまま承諾するが、口数の少ない彼との距離がなかなか縮まらない。 そのくせ、キスをする時は情熱的だった。 司の知らない一面を知ることによって惹かれ始め、身体を重ねるが、司の熱のこもった視線に真子は混乱し、怖くなった。 それから身体を重ねることを拒否し続けるが――。 ▼2019年2月発行のオリジナルTL小説のWEB再録です。 ▼全8話の短編連載 ▼Rシーンが含まれる話には「*」マークをつけています。

処理中です...