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【234.5話】 ミックミミミク
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ミニミミックくじの当日
リリアのミミック保管計画もいよいよ大詰めを迎えていた。
「ミック、口を開けなさいよ!ほら!ほら!」
リリアはミミック相手に苦戦していた。
まぁ、正確に言うとリリア、ガスコインとコトロ。
もっと正確に言うとリリアとガスコインが苦労をしていてコトロはリュートで精神効果の補助をしている。
フユネコの仕切っている商店街はミニミミック当選日。周りの商店も大売出しをしている。ルーダ・コートの街で行うジャンボミミックが今日の午後やるので、人手を見込んでミニミミックくじを行うのだ。
間もなく抽選なのでお店も通りも賑わっていて忙しい。
リリアは捕獲したミミックに仕込みを行っているところだ。
リリアは今日までミミックの世話係だった。
生存確認して餌をやるのだ。ミミック三匹、ロープで縛ってあるが、解いて餌をあげる時だけ特に注意していたらあまり危険はない。
しかし、リリアは一度食べられかけているので必ずコトロが付き添っている。
ミニミミックは抽選された三組が、それぞれステージでミミックを選び、退治するとドロップアイテムが当選するといった流れ。
安全に鎖でつなぎ留めておくがさすがに一般人だけでは危ないのでリリア、ガスコインとコトロがサポートする。
「リリアちゃんってば、やっぱり勇者の血を引いているのね。結構ミミックもなついてきてるよ。何だか抽選で潰すのが惜しいよね」
ミミックのボディを磨き上げたリリアは餌あげタイム。
「ミック、ミミ、ミク、順番に餌だからね。ねぇ!見てよ!リリアってば、実は魔物使いの素質があるかも!能力覚醒!覚醒遺伝よ!さすが勇者の娘、父さんご自慢の娘よ。痛い!ミック!ちゃんと餌あるから落ち着いてよ、まったくじゃれ方が激しいよね」
「あの… どうみても餌よりリリアを食べに来ていますよ… 三匹とも全然なついているように見えません。過信せず気を付けてください」コトロが注意する。
リリアはミミックにミック、ミミ、ミクと名前までつけて愛情をかけているようだが、あまりミミックには愛情が伝わっていないようだ。
ミックは隙あらば食いつこうとしているし、ミミは逃げ回っている。ミクに至ってはロープを外すと檻の格子に突撃している。ストレスによる自傷行為だろうか?
とにかくリリアは魔物使い気分でいるが、どいつもこいつもリリアの言う事等一つも聞いてくれている様子はない。
「いやぁ、思った以上の大盛況でね、大賑わいだよ。ネーコちゃん、ラビちゃんに応援に来てもらって良かった、これから抽選会になるから仕込みをよろしくね」フユネコが満面の笑みで倉庫に顔をだした。
「任せてよ!リリア達がちゃんとやっとくわよ。こう見えてもリリアは魔物使いだからね。魔物使いリリアよ!こんど魔物調教師三級の資格でも取りに行こうかな」リリアはニコニコしている。
「三級?金払って規則について三日間講習受けたら誰でも取れる資格だろ。何の能力も要らないやつだぜ」ガスコインが言う。
とにかく、リリア達が仕込みを始めたがこれが大変。
抽選会は当選者がミミックを退治するのだ。退治するとアイテムをドロップして、それがもらえる段取り。なのだが…
自然に任せていては実際どんなドロップアイテムになるか見当もつかない。何もドロップしない場合だって多い。
お金払って抽選して”何も当たらない”では詐欺で訴えられかねないので事前にリリア達がミミックに当選品を詰め込んでおく段取りなのだ。
しかし、当選品をミミックに詰めようとしたが全然口を開けてくれない。
「ミック、口開けなさいよ… さっきまで大口開けてたじゃないの… このおぉ… あ!ガス!ミミを押えて!どっちがミミかって?そっちの大きい方だよ!コトロ!のん気にリュート弾いてないで手伝ってよ!」リリアはかなり苦戦。
「俺は万が一に備えて待機って説明されたのに、こんな事やらされるって聞いてねぇよ」ガスが不満を言いながらミミだかミクだかを押さえつけている。
「私はリリア達が呪歌にかからないように演奏をしているのですよ、手伝えませんよ、だいたい失礼の極みですよ」コトロはリリアに不満を露にする。
ミミック達は隙あらばリリアに齧りつこうとするわりに、商品を入れようとしても意地でも口を開けてくれない。
商品
・一等 アンテロープの首だけの剥製(壁掛け用)
・二等 大聖堂司祭長のポートレイト像
・三等 ナガーノ地方産赤ワイン(1ダース)
これらの商品をミミックに詰めるのにリリアは悪戦苦闘中。
「リ、リリアが抑えておくからガスはこじ開けてえぇ!ミックぅ… 口開けてぇぇ…」
リリアがミミックにしがみつき、ガスコインが鉄の棒をテコにして口をこじ開ける。
「こいつ… 硬ぇぇな… 力任せにやるぞ… どうなっても知らねぇぞ」
ガスコインが力任せに開けにかかっている。
「リリア、無茶しない方が… 知りませんよ、怪我しますよ…」
コトロがリュート演奏も忘れて現場を見守る。
頼む方も頼まれる方もメチャクチャだ。
だいたい、リリアに頼んだ時点で事態はムチャな方向に進むのは決定だ。
「景品が… アンテロープの首の剥製とか… ポートレイト像とか… もらっても嬉しくないですよね… 三等の赤ワインが一等賞な気がします。どんな選択肢でしょうか… そもそも、ワイン以外はミミックに入れられなさそうですが…」コトロが呟く。
立派な角のアンテロープは良い値段で取引される上に魔除けアイテムとされているが、貴族クラスか田舎のコテージの住民でもなければ、こんな物壁にかけるとは思えない。
長老のポートレイト像とか、霊験あらたかで縁起物ではあるが、いったい誰が貰って喜ぶのだろうか?
ワインが一番まともな気がする。
「… しかも冷静に考えて、一等がアンテロープで、二等が司祭長ですか… 失礼すぎます、見つかったら張り付けに処されても文句は言えませんよ…」
リリアを見ると… ミミックと格闘中… 勇者は変な格闘をしている。
「ガス!そのままこじ開けて!それぇ!せえぇぇの」
リリアが何とか口を開けさせてガスコインが鉄の棒を口に差し込み思いっきり体重をかける。
“ミックミック!”と呼んで愛情をかけていたリリアが鬼の所業だ!
“バキ!グゥワシャ!“
「痛い!あ…」
「ぅゎ………」
「ぁー………」
ガスコインが渾身の力をかけたら破壊的な音がして上蓋がパッカリと跳ね上がり、リリアにぶち当たった。
そのままミミックは上蓋を全開にしたまま、ピクピクしている。
「ちょ… ガス… 力入れ過ぎだよ… ミックの顎外れちゃったみたいだよ…」
自分が散々けしかけておいてリリアが非難するような声をあげている。
「俺か?俺のせいか? おまえが思い切ってやれって…」ガスもドン引き。
「… どうするんですか… たぶんすぐ死にますよ…」コトロは飽きれている。
「えぇ… ま、まずい… かな?… まずいよ… ね…」リリア。
さっきまで「ミック、ミック」と世話してもらっていたミックは上蓋をおっぴろげ、中身を晒してブルブルしている。
「準備はどうだい?リリアちゃん」フユネコが様子を見に来た。
「え?あ!準備はメッチャ順調よ!ありえないぐらい完璧!完璧すぎて顎が外れるくらいだよ!お客さん待ってるよ!千客万来!フユネコグッズ万歳!こっちはリリアに任せて!泥船に乗った気で放っておいて!」
フユネコを電撃で倉庫から追い返したリリア。
「えぇっと… まぁ、なんとか… そ、そうね… とりあえず景品押し込んでごまかそう」
リリアはブルブルしているミミックに剥製の頭を詰め込んで蓋をしてロープで縛ってしまった。
おかげで半開きのミミックからアンテロープが角を出し、顔を覗かせて、その上から上蓋と一緒にボディを縛り上げているという不気味な景品ができあがってしまった。
ミミックの開いた蓋からアンテロープこっちを伺っているようで、正直気味が悪い。
「すげぇアンバラスだぞ… これでいいのか?リリア」ガスコインが言う。
「うーん… ま、景品を用意したのはフユネコさんだからね… いいよ、大丈夫だよ、時間無いから次いこう。進む勇気も必要だよね」
一瞬戸惑っていたけどリリアはすぐに立ち直ったようだ。なんだか勇者の意味を取り違えたことを言っている。
「あの… 私は表を手伝っていますから… 二人で…がんばってください」
コトロはその場を逃げ出した…
「今回、ミニミミックくじに協力してくれたのはギルド・ルーダの風の冒険者リリアさんと…」
華やかに飾られたステージには布に覆われた景品が三つ並びリリアとガスコインが紹介される。
「コトロ!コトロもステージにあがりなよ!マスターでしょ!コトロ!」リリアは呼びかけながら、どうもどうもといった風に手を振っている。
コトロはギルドの名前を紹介されるのが恥ずかしくって人垣の後ろで小さくなっている。
アナウンスが続く。
「さぁ、当選した三組のご家族は紅白のウォーハンマーを持ってこちらのステージへ… それでは今回の景品の発表です!」
合図と同時に景品の布が外された。
「ぉぉー…」
何とも言えない、ざわつくような、妙な歓声があがる。
ミックは蓋の下から鹿の顔を覗かせ、ミミは誰かの像を咥えて縛られている。
一番小さいが、蓋を閉じて鎮座する三等賞のミクが一番まともな見かけだ。
ステージ周囲集まった人垣から何とも言えない雰囲気のざわめきが沸き上がる。
「… あの… フ、フユネコグッズからの豪華賞品よ!豪華絢爛過ぎて箱に収まりきらないの!…夢溢れんばかりとは正にこのことよね!… よ!フユネコさん!器も大きい!ついでにお腹も!… この子はミク、一番小さいけど、中身はちゃんと豪華賞品」
ざわつく会場に動揺したのかリリアは何故だか勝手にスピーチを始め出した。
「ゴボルェ!」
リリアが説明するそばからミクは、酷い音をだして何かを吐き始めた。
「グエ!オゥエ!」何度もえづいて赤い液体をまき散らしている。
「あ… これね… ちょっとワインが割れて、酔っぱらったみたいね… 血じゃないのよ! えぇ… 今後もフユネコグッズと商店街、ギルド・ルーダの風をごひいきに!」
リリアは雑にまとめるとガスコインの手を引いてさっさと引っ込んでしまった。
「ぅわ… なんでギルドの宣伝を… もう二度とリリアの手伝いをしません」コトロは真っ赤になってうつ向いている。
群衆はまだまだざわざわ中。
リリアのミミック保管計画もいよいよ大詰めを迎えていた。
「ミック、口を開けなさいよ!ほら!ほら!」
リリアはミミック相手に苦戦していた。
まぁ、正確に言うとリリア、ガスコインとコトロ。
もっと正確に言うとリリアとガスコインが苦労をしていてコトロはリュートで精神効果の補助をしている。
フユネコの仕切っている商店街はミニミミック当選日。周りの商店も大売出しをしている。ルーダ・コートの街で行うジャンボミミックが今日の午後やるので、人手を見込んでミニミミックくじを行うのだ。
間もなく抽選なのでお店も通りも賑わっていて忙しい。
リリアは捕獲したミミックに仕込みを行っているところだ。
リリアは今日までミミックの世話係だった。
生存確認して餌をやるのだ。ミミック三匹、ロープで縛ってあるが、解いて餌をあげる時だけ特に注意していたらあまり危険はない。
しかし、リリアは一度食べられかけているので必ずコトロが付き添っている。
ミニミミックは抽選された三組が、それぞれステージでミミックを選び、退治するとドロップアイテムが当選するといった流れ。
安全に鎖でつなぎ留めておくがさすがに一般人だけでは危ないのでリリア、ガスコインとコトロがサポートする。
「リリアちゃんってば、やっぱり勇者の血を引いているのね。結構ミミックもなついてきてるよ。何だか抽選で潰すのが惜しいよね」
ミミックのボディを磨き上げたリリアは餌あげタイム。
「ミック、ミミ、ミク、順番に餌だからね。ねぇ!見てよ!リリアってば、実は魔物使いの素質があるかも!能力覚醒!覚醒遺伝よ!さすが勇者の娘、父さんご自慢の娘よ。痛い!ミック!ちゃんと餌あるから落ち着いてよ、まったくじゃれ方が激しいよね」
「あの… どうみても餌よりリリアを食べに来ていますよ… 三匹とも全然なついているように見えません。過信せず気を付けてください」コトロが注意する。
リリアはミミックにミック、ミミ、ミクと名前までつけて愛情をかけているようだが、あまりミミックには愛情が伝わっていないようだ。
ミックは隙あらば食いつこうとしているし、ミミは逃げ回っている。ミクに至ってはロープを外すと檻の格子に突撃している。ストレスによる自傷行為だろうか?
とにかくリリアは魔物使い気分でいるが、どいつもこいつもリリアの言う事等一つも聞いてくれている様子はない。
「いやぁ、思った以上の大盛況でね、大賑わいだよ。ネーコちゃん、ラビちゃんに応援に来てもらって良かった、これから抽選会になるから仕込みをよろしくね」フユネコが満面の笑みで倉庫に顔をだした。
「任せてよ!リリア達がちゃんとやっとくわよ。こう見えてもリリアは魔物使いだからね。魔物使いリリアよ!こんど魔物調教師三級の資格でも取りに行こうかな」リリアはニコニコしている。
「三級?金払って規則について三日間講習受けたら誰でも取れる資格だろ。何の能力も要らないやつだぜ」ガスコインが言う。
とにかく、リリア達が仕込みを始めたがこれが大変。
抽選会は当選者がミミックを退治するのだ。退治するとアイテムをドロップして、それがもらえる段取り。なのだが…
自然に任せていては実際どんなドロップアイテムになるか見当もつかない。何もドロップしない場合だって多い。
お金払って抽選して”何も当たらない”では詐欺で訴えられかねないので事前にリリア達がミミックに当選品を詰め込んでおく段取りなのだ。
しかし、当選品をミミックに詰めようとしたが全然口を開けてくれない。
「ミック、口開けなさいよ… さっきまで大口開けてたじゃないの… このおぉ… あ!ガス!ミミを押えて!どっちがミミかって?そっちの大きい方だよ!コトロ!のん気にリュート弾いてないで手伝ってよ!」リリアはかなり苦戦。
「俺は万が一に備えて待機って説明されたのに、こんな事やらされるって聞いてねぇよ」ガスが不満を言いながらミミだかミクだかを押さえつけている。
「私はリリア達が呪歌にかからないように演奏をしているのですよ、手伝えませんよ、だいたい失礼の極みですよ」コトロはリリアに不満を露にする。
ミミック達は隙あらばリリアに齧りつこうとするわりに、商品を入れようとしても意地でも口を開けてくれない。
商品
・一等 アンテロープの首だけの剥製(壁掛け用)
・二等 大聖堂司祭長のポートレイト像
・三等 ナガーノ地方産赤ワイン(1ダース)
これらの商品をミミックに詰めるのにリリアは悪戦苦闘中。
「リ、リリアが抑えておくからガスはこじ開けてえぇ!ミックぅ… 口開けてぇぇ…」
リリアがミミックにしがみつき、ガスコインが鉄の棒をテコにして口をこじ開ける。
「こいつ… 硬ぇぇな… 力任せにやるぞ… どうなっても知らねぇぞ」
ガスコインが力任せに開けにかかっている。
「リリア、無茶しない方が… 知りませんよ、怪我しますよ…」
コトロがリュート演奏も忘れて現場を見守る。
頼む方も頼まれる方もメチャクチャだ。
だいたい、リリアに頼んだ時点で事態はムチャな方向に進むのは決定だ。
「景品が… アンテロープの首の剥製とか… ポートレイト像とか… もらっても嬉しくないですよね… 三等の赤ワインが一等賞な気がします。どんな選択肢でしょうか… そもそも、ワイン以外はミミックに入れられなさそうですが…」コトロが呟く。
立派な角のアンテロープは良い値段で取引される上に魔除けアイテムとされているが、貴族クラスか田舎のコテージの住民でもなければ、こんな物壁にかけるとは思えない。
長老のポートレイト像とか、霊験あらたかで縁起物ではあるが、いったい誰が貰って喜ぶのだろうか?
ワインが一番まともな気がする。
「… しかも冷静に考えて、一等がアンテロープで、二等が司祭長ですか… 失礼すぎます、見つかったら張り付けに処されても文句は言えませんよ…」
リリアを見ると… ミミックと格闘中… 勇者は変な格闘をしている。
「ガス!そのままこじ開けて!それぇ!せえぇぇの」
リリアが何とか口を開けさせてガスコインが鉄の棒を口に差し込み思いっきり体重をかける。
“ミックミック!”と呼んで愛情をかけていたリリアが鬼の所業だ!
“バキ!グゥワシャ!“
「痛い!あ…」
「ぅゎ………」
「ぁー………」
ガスコインが渾身の力をかけたら破壊的な音がして上蓋がパッカリと跳ね上がり、リリアにぶち当たった。
そのままミミックは上蓋を全開にしたまま、ピクピクしている。
「ちょ… ガス… 力入れ過ぎだよ… ミックの顎外れちゃったみたいだよ…」
自分が散々けしかけておいてリリアが非難するような声をあげている。
「俺か?俺のせいか? おまえが思い切ってやれって…」ガスもドン引き。
「… どうするんですか… たぶんすぐ死にますよ…」コトロは飽きれている。
「えぇ… ま、まずい… かな?… まずいよ… ね…」リリア。
さっきまで「ミック、ミック」と世話してもらっていたミックは上蓋をおっぴろげ、中身を晒してブルブルしている。
「準備はどうだい?リリアちゃん」フユネコが様子を見に来た。
「え?あ!準備はメッチャ順調よ!ありえないぐらい完璧!完璧すぎて顎が外れるくらいだよ!お客さん待ってるよ!千客万来!フユネコグッズ万歳!こっちはリリアに任せて!泥船に乗った気で放っておいて!」
フユネコを電撃で倉庫から追い返したリリア。
「えぇっと… まぁ、なんとか… そ、そうね… とりあえず景品押し込んでごまかそう」
リリアはブルブルしているミミックに剥製の頭を詰め込んで蓋をしてロープで縛ってしまった。
おかげで半開きのミミックからアンテロープが角を出し、顔を覗かせて、その上から上蓋と一緒にボディを縛り上げているという不気味な景品ができあがってしまった。
ミミックの開いた蓋からアンテロープこっちを伺っているようで、正直気味が悪い。
「すげぇアンバラスだぞ… これでいいのか?リリア」ガスコインが言う。
「うーん… ま、景品を用意したのはフユネコさんだからね… いいよ、大丈夫だよ、時間無いから次いこう。進む勇気も必要だよね」
一瞬戸惑っていたけどリリアはすぐに立ち直ったようだ。なんだか勇者の意味を取り違えたことを言っている。
「あの… 私は表を手伝っていますから… 二人で…がんばってください」
コトロはその場を逃げ出した…
「今回、ミニミミックくじに協力してくれたのはギルド・ルーダの風の冒険者リリアさんと…」
華やかに飾られたステージには布に覆われた景品が三つ並びリリアとガスコインが紹介される。
「コトロ!コトロもステージにあがりなよ!マスターでしょ!コトロ!」リリアは呼びかけながら、どうもどうもといった風に手を振っている。
コトロはギルドの名前を紹介されるのが恥ずかしくって人垣の後ろで小さくなっている。
アナウンスが続く。
「さぁ、当選した三組のご家族は紅白のウォーハンマーを持ってこちらのステージへ… それでは今回の景品の発表です!」
合図と同時に景品の布が外された。
「ぉぉー…」
何とも言えない、ざわつくような、妙な歓声があがる。
ミックは蓋の下から鹿の顔を覗かせ、ミミは誰かの像を咥えて縛られている。
一番小さいが、蓋を閉じて鎮座する三等賞のミクが一番まともな見かけだ。
ステージ周囲集まった人垣から何とも言えない雰囲気のざわめきが沸き上がる。
「… あの… フ、フユネコグッズからの豪華賞品よ!豪華絢爛過ぎて箱に収まりきらないの!…夢溢れんばかりとは正にこのことよね!… よ!フユネコさん!器も大きい!ついでにお腹も!… この子はミク、一番小さいけど、中身はちゃんと豪華賞品」
ざわつく会場に動揺したのかリリアは何故だか勝手にスピーチを始め出した。
「ゴボルェ!」
リリアが説明するそばからミクは、酷い音をだして何かを吐き始めた。
「グエ!オゥエ!」何度もえづいて赤い液体をまき散らしている。
「あ… これね… ちょっとワインが割れて、酔っぱらったみたいね… 血じゃないのよ! えぇ… 今後もフユネコグッズと商店街、ギルド・ルーダの風をごひいきに!」
リリアは雑にまとめるとガスコインの手を引いてさっさと引っ込んでしまった。
「ぅわ… なんでギルドの宣伝を… もう二度とリリアの手伝いをしません」コトロは真っ赤になってうつ向いている。
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