勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【231.5話】 村のサービス ※トラナックバース前夜の話し※

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リリア達は日がとっぷり暮れてから村に到着。
夕暮れから風が強くなり一雨来そうになっている。
到着した村は小さな村だ、家から明かりが漏れているが来訪者用の灯りなどはない。

「真っ暗だね、えぇっと… ここは確か宿をやっているのが民家だったかな?宿って言うより家の部屋を貸してもらえる感じだったかな?」
リリア達が馬車で村に入ると人影が窓に見えた。リリア達に気がついているようだ。
「宿屋の可愛い娘と遊ぼうと思ったが、寂しい村だな」ガスコインが言う。
「泊めてもらえるのはどの家だったかな?暗いとわかんないよね」リリア。
「家を間違えて強盗だと思われないようにしないと」サンキャットが笑う。
リリア達が馬車を止めたら近くの家の人が出て来た。
「あんたら旅の人かい。泊まるのならロンさんが面倒みているが遅くなると準備が出来てない場合もある。そこの先に無人教会があるからそこに入っていてくれ。俺がロンさんに声をかけてくるよ」村の人が親切に教えてくれた。
リリア達は馬車を止めてお泊りの荷物を持って小さな教会に入った。

「教会というよりはちょっとした納屋だな」
入ると小さく簡素だが装飾された部屋があり長椅子とテーブルが置かれている。六人で食事して寝るには十分だろう。
「自然と調和の神ね」リリアが壁の像を見て呟く。

「あぁ、宿泊の人達かい。今日は遅いから準備できなくて部屋は貸し出せないけどここに泊まるなら食事を持ってくるよ」
声がするので振り返ると男が戸口に立っている。
「冒険者パーティーリーダーのリリアよ、よろしく。明日ここからトラナックバースに向かう予定。馬も厩に入れてもらいたいのよね」
「馬を馬車から外してくれれば厩に入れるのは問題ない。厩代と6人の宿泊、夕食と朝食つけて150Gだ」男が説明する。
「OKよ、それでちょっとお肉料理と葡萄酒か発泡酒も出してくれたら良いよ」リリアがニコニコ答える。
「ついでに綺麗なお姉ちゃんも二、三人頼むぜ」ガスコインが笑う
「チップ払ってくれるなら声をかけられるよ」
「お風呂は?お風呂入りたいよねぇ」アケミが言う。
「風呂か… この時間… まぁ今夜諦めてくれ。明日以降泊まるなら用意する」男。
男はいくつか説明をして教会から出て行った。
「リリアさん、こんなサービスで高くないですか?寝る場所でさえ教会ですよ」
サンキャットが言うとヒマネコ達も頷く。
「あぁ… あのね、だいたいこういう場所は高いよ。食事もオプション無いし、お客が少ないから割高だよね。でも値切ったりせず払ってるんだよ、持ちつ持たれつっていうか… ちゃんとしていると結構助けてくれることも多いよ」リリアは事もなげだ。
「そういうものでしょうか」サンキャット達はいちおう納得する。
「それにちゃんと必要経費でしょ、えっへっへ」リリアは笑っている。

外は風が強くなり小雨になったようだ。
しばらくすると若い娘が二人で食事を運んできた。
一人はさっきの男の娘、もう一人は友達だという。
食事はパン、鶏肉を野菜で増量した炒め物、ポテトとマメの料理、ポテトとニンジンスープにリンゴ酒。
娘二人がスープを取り分けてくれる。
「リンゴ酒かよ、あの値段で…」コロットが不満をボソボソと口にする。
食事も値段通りとは言い難い。きちんとした宿ならもっと良い食事が出る値段だが仕方がない。しかし、スープは量がありパンも大量に用意してくれた。
娘達も気立てが良い。お客慣れはしているようだ。食事とお酒を注ぎながら相手をしてくれる。
サンキャット達も若い、食事に少々不満があっても娘達と冗談を言いながらわいわい始まる。
ガスコインはさすがに旅慣れている、
「お酒は別料金でいいからもっと持って来てくれ、おもえらも飲んだらいいぞ、面白い話を聞かせてやるぜ」
笑いながらチップを気前よく払うと娘達が友達を数名呼んできた。
小さな礼拝堂はパーティー雰囲気になっている。


リリアは目を覚ました、いつの間にかウトウトしていたようだ。
「リリア、起きたか、寝るならちゃんと寝た方がいいぜ」
抱えていたダカットがリリアに囁く。
リリアが見ると村娘が5人ほどいてパーティーメンバーと盛り上がっている。
サンキャット達と良い雰囲気になっている者もいる。
分かっているのか村の大人達はこんな場合、ノコノコと顔を出さない場合が多い。
村娘達が村以外の人間と交流する唯一の機会であり、ワンチャン玉の輿の機会でもある。
逆にアケミを連れたコロットは少し残念そうに見えなくもない。
雰囲気を察知してかアケミはしっかりガードモード。
「リリア、起きたか?おまえもまだ飲むか?もう寝るならちゃんと寝ろよ」ガスコインがリリアに気がついて声をかけた。
「もう、パンもスープも残って無いのね、リリアは食べずにお酒だけ飲むと悪酔いしちゃうんだよ… もう、寝るから適当によろしく」
リリアは完全にお疲れモード。
リリアは廊下に出てトイレを済ますと礼拝堂の隅に寝床を作った。
別室もあったようだが、サンキャット達が使うかも知れない、リリアは寝れさえすれば不満はない。

リリアは自然と調和の神像にお祈りをして寝に入る。
普段は毎晩お祈りをしているわけではないのだが、ここにこうして自分の信仰の教会に泊まったのだ、ちゃんとお祈りをしておく。
「おまえ、自然と調和の神を信仰してんのか?祈りがそれなりに堂に入っているな」ガスコインが尋ねる。
「リリアはずっと故郷の村で修道女やってたんだよ、こう見えてもそれなりなんだよ」リリアは眠そうに言う。結構酔っているようだ。
「そうか… リリアも孤児だったかな」
ガスコインが呟くのを背中にリリアは寝床に入った。
「おやすみ、リリア」壁に立てかけたダカットが挨拶をする。
「おやすみ… あなたあっちで女の子と騒ぎたいなら誰かに頼んであがるけど…」リリアが呟く。
「な、なんだよ…俺はここでいいよ」ダカットが言う


部屋は賑やかだったがリリアはすぐに寝息をたてはじめた
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