勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【232話】 ジャイアントモール

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ジャイアントモールがあらわれた

陰の中からモールの頭がゆっくりと出て来た。
思ったより大きい。鼻を細かひくつかせながらリリアを伺っているようだ。
リリアは空中で揺れながら息を殺してじっとしている。
まるで蛇に似られた蛙だ。
まぁ、モグラなので睨めないが…

とにかくモールは様子を見ている
リリアもブラブラしながら様子を見ている
ガスも様子を見ている… はず…


モールはますます頭を出すと鼻をスンスンさせている。
「ダカット、声出さないでよ… 匂いも出しちゃだめよ」
リリアが難しいことを言っている。

リリアはゆっくりと弓を出し… たいところだが弓を構えるとダカットが落ちそうなので弓とダカットを背中から下ろした。
弓とホウキを抱えた状態。
「矢がほとんど残ってないぞ」ダカットが注意する。
「しっ!黙って!」リリアが言う。

モールの鼻先はすぐそこでスンスンしている。

モールは様子を見ている
リリアもブラブラしながら様子を見ている

「な、なぁ、弓より剣だろ」ダカットが囁く。
「わかってるわよ、でも出せないよ、あの長い呪文も唱えられないし、持ちきれないよ」リリアも囁く。

モールは様子を見ている
リリアもブラブラしながら様子を見ている

「じゃ、じゃぁ、せ、せめてダガーを…」ダカット。
「そ、そっか、その手があったね」
リリアは片手でゆっくりとダガーに手を伸ばす。

“ツル!”
「わっ!リターン・トゥ・マイハンド!!」
慣れない体勢からダガーを出したら手を滑らせて落としかけた。
慌ててリターンを掛けたら空中を遡って手に戻ってきた。

が、
「リ、リリア!」ダカット
「ぉわぉ!」リリア
二人が同時に叫んだ。
ダガーを握ったとたん大声をたてたせいかモールが襲って来た。ギリギリで避けたがリリアはモールの眉間に弾き飛ばされた。
「おわぁあぁぁ! やだ!助けてー!」
リリアは宙ぶらりんでフラフラしながらグルグルしている。
モールはリリアの声を頼りに捕まえようとするが不規則に動くのでお手玉している。
「リリア!落ち着け!」ダカット。
「いやぁ!危ない!助けて!目がまわるぅ!」
リリアはブラブラ、グルグル、フラフラしながらダガーを振り回している。
モールがおぼつかない手つきで弾き飛ばすので結構ブラブラしている。
「ガス!上げて!引っ張って!お願い!上げてあげてぇぇ!」
リリアは大騒ぎしている。
「上げるんだな?いいんだな!上げるぞ!」イヤリングから通信が入る。
「早く!何でも良いから上げて!助けてぇぇ!早く!」リリア。
「慎重にやらないと危ないだろ!」ガス。
「食べられて死ぬのも、落っこちて死ぬのも、埋もれて死ぬもの一緒だよ!引き上げて!早くううぅぅ!」リリアは大騒ぎ。
「わ、わかった。待ってろ」
ガスがいっきに引き上げにかかる。

「ぼっふぇ!」
勢いよく引き上げられかけた途端モグラに捕まった。
上半身を捕まえられ、下半身をロープで引き上げられ…
体がちょん切れそう!!
「いだい!痛ああああいいいぃぃ!体が裂ける!下ろして!下ろしてぇぇ!」リリアは絶叫中。
釣り針の先につけられた餌とはこんな気持ちなのだろうか…
とんでもない試練だ!
「痛い!痛いよ!放して!下ろして! って違う!ガスは上げて!早く!引っ張って!痛あぁぁいぃ!やっぱり下ろして!体が千切れちゃう!痛いぃぃ!」
リリアは絶叫中。
ダカットも何か叫んでいるようだがダカットの内容とかどうでもよい!とにかく痛い!
しっかりとモグラに握られグイグイと引きずり込まれるようだ。
「父さん、母さん、あたしもうだめ… 背骨が伸びきっちゃう…」
リリアが覚悟を決めた時だった…

“ガラガラ!!”
大きな音を立てて地下室の天井が崩壊した。
「ひびゅ!!」
リリアは石の天井と共床に叩きつけられた。
落雷の様な音をたてて土石が頭から降ってくる。
「父さん、母さん」
リリアはホウキと弓を必死に抱え、ダガーを手に頭を抱えて丸まっていた。


「リリア、リリア!」
声がする。
「… ぅぅ… うん…」
リリアが目を覚ますと目の前にガスコインが立っていた。
「良かったな、直撃はしなかったみたいだぞ。どこか痛いか?」ガスコインが聞く。
「… だ、大丈夫… 痛っ!腰が痛いけど… 少し回復する程度」
リリアは確認しながらゆっくりと身を起こした。口の中がじゃりじゃりする。
「急いでロープで下りてきた。天井が崩れた勢いて床に落ちたようだが、無事みていだな、モールは穴の中に逃げたぞ」ガスコインが状況を説明してくれた。

リリアは体中に引っ掻き傷が出来ている。まぁこれもポーションですぐ治せる。
矢は全部落としたようだが弓、ダカット、ダガーは落とさず済んだようだ。
「回復しながら休め」ガスコインが言う。
リリアは水筒で口を漱ぐとポーションを少し飲んだ。
「釣りの餌にされるミミズの気持ちがわかったよ…」リリアが呟く。
「あぁ?… …っは、わっはっはっは、水の中に放り込まれなかっただけましだろう」ガスは大笑いしている。

「すげえなぁ… 良く落とさず守ってくれたよな…」ダカットが感心している。


リリアが寝ながら天を仰ぐと穴から雲が見えた。
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