勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【230話】 リリアは「っぴゃあぁぁ!」

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リリアとガスコインはとりあえず宝物庫跡を探ってみた。
っと言ってもそれ程時間はかからない。それほど大きくない建物。壁や天井が崩れて魔物より崩壊の方が危険な状態。
「全然いないわね」
二人で宝物庫跡に立ち入ったが思ったより広くない、瓦礫を避けつつちょっと調べたらすぐ終わり。
「ミミックって宝物庫とかに居る印象があるけど、さっぱりね。一の殿に入ろうか」リリア。
「あんまり期待出来そうにないな、ここが空ぶったらどうすんだよ」ガスコイン。
「そしたら砦跡地でも行ってみようか、それでダメならあたしミミックの着ぐるみ着てやるわよ」
リリアはメッチャ適当。

二人で一の殿の中を探索。
ここも半分崩壊して瓦礫の中に大柱石が立っているが儀式の間、控えの間等部屋がいくつか残っている。
「これが森の向こうから頭を出していた大柱石だね。立派で凄いけど…これで周りが湖とかだったら観光地としてもう少し流行っていたかもね」
リリアは感想を述べながら一の殿の中を探索。
適当に魔物がいて期待できたがミミックは見つからず。
「地下1階に行ってみようか」
一の殿からの地下階段を見つけたが少し先で通路が陥没で埋もれている。
一度地上に出て陥没から通路に下りた。

「スライムやローパーみたいなヌルヌル系が多いけど危険はなさそうね」
リリアが見ると地下通路にはヌル系がウロウロしている。
昔の通路の形を保っている部分は暗いが、陥没が結構起きている、通路を移動するにはほぼ灯りはいらない状況であり、通路内から見通すと光と影が独特な雰囲気を作っている。
大柱石よりもここの雰囲気を味わう価値はあるかも知れない。
「通路はリリアの得意分野だよ」
リリアは弓で次々と魔物を倒していく。
まだ形を保っているような部屋があるが松明を用意して覗いてみる。
地下一階通路は建物それぞれの地下に繋がっているらしくいくつか部屋が存在している。用心しながら調べていく。
居心地が良いのか結構魔物がいるようだ。
「強くはない魔物だけど面倒だね、通路に下りる前に地上から掃除しておけば良かったかも」リリアが言う。
「そうか?俺は暴れに来たようなもんだから良いんじゃねぇか?リリアも良い練習になるだろう」ガスコインは笑う。

「よし、地下二階はやめよう。ここより先にさっきの入り口が塞がっていた大部屋の地上が陥没していたからあそこを調べてみよう」
リリアは地下二階に下りる階段をさっさと引き返して来た。
地下二階は陥没がほぼなくガチの地下通路となっている。リリアはビビッているようだ。
「あぁ?ここに入るのが目的じゃないのか?ここに入らないと意味ねぇだろう。ここまでは観光気分で入れる場所だぜ、収穫があるわけないだろ」ガスコインが眉を顰める。
「真っ暗じゃない、危険だよ、と、とにかく勇者リリアは無駄に危険を冒さないの、出来れば低リスクハイリターン派、虎穴に入らずんば虎子を得ず、君子危うきに近寄らず、国民の命を最優先よ」リリアが言う。
「国民って俺しかいないが…俺の事かぁ?バカにしてんのか? 地下だから暗いさ、当たり前だろ。暗くたって資料もあるし情報も持ってるしここにビビッて入れなかったら遺跡や洞窟探検なんて無理だろ。何のため冒険者の資料持って来たんだよ」ガスコインが苦笑い。
「とにかく、ここより先にさっきの崩れた大部屋だよ。リリアはビビッてなんかいません!勇者はビビらないの、なんたって勇者よ」
リリアはやたら自分が勇者であることを主張しながらガスコインの手を引き地上に戻る。
ガスコインが「おまえ今までどんな活動してたんだよ」と聞くと、
「リリアの勇者スタイルは明るい日差しの下で透明感ある活動をモットーとしてるの、今までの勇者の廃墟を徘徊するハイリスクな仕事と言われていた勇者3Hと呼ばれる要素を取り払った命大事にモードの明るい職場、プライベート充実ライフスタイルに雰囲気を一新してやるのよ」
ポニーテールを振り振りしながら手を引いて歩いていく。
「…おまえんとこはそれで仕事になるのかよ… コトロも甘いぜ」ガスコインは呆れている。


で、リリアとガスコインは地上を大部屋の位置まで移動。ちょっとした穴が空いている。
「崩れたというか、大モグラが顔でも出すような穴だよな」
穴を見てガスコインが呟く。
若干風の動きも感じられる、部屋自体どこに穴が貫通しているのかもしれない。
リリア達は付近の木にロープを結んで準備する。
「ロープよしっと… じゃ、松明でリリアが覗いてみるからガスはロープを持っておいてね」
「おう、穴の淵は脆くなっているだろうから気をつけろよ」
リリアはロープを体に結び穴の淵に静かに寝転び松明で中を照らしてみた。
「………」
リリアが見た所、特に中に変わった事も無いようだ。
というか、差し込む日差しが強いせいか光の当たる部分以外はほとんど見えない。
ぐるっと首を動かすが今まで見たどの部屋よりも大きく天井が高くなっているような印象があるだけで内部はよくわからない。
自分が覗いているちょうど真下は同じようなサイズの穴が空いている、大モグラか何かによって開いている穴のようだ。部屋の中はローパーのような魔物がいるようだがよくわからない。
「… ちょっとよくわかんないけど危険はないみたいだよ。下りてみるしかないわね。気配からすると下等な魔物が少しウロウロしているみたいだよ」
リリアは言いながら体を起こして正座した。
「そうか、なら俺が先にロープで下りた方が良いかな。俺が先に下りて安全確認、リリアがカバーだ」ガスが言う。
「それが妥当かな?」
リリアはゆっくりと立膝になった。
「ガラ!」
リリアの足元の地面が音を立てた。少し陥没したようだ。
“やっば!”
リリアは直感的に思った。
「おい、今足元が崩れたろ、動くな!もう一回伏せてなおしたら俺がロープでひっぱる」ガスが叫ぶ。

「ま、待ってね、まだ引っ張らないでね、今リリアが寝なおすよ。結構沈んだよ、合図するまで待ってよ」
リリアが努めて冷静な声を出しているのがわかる。
「おう、こっちも引きずられない場所に着くから慎重にな」
ガスもロープを持ち、自らの体重を支えられる木の陰に移動。
さすがアーマー&ローブの冒険者だ、頼りになるぜ。

「よし、リリアは準備はいいか?おまえに合わせてこっちも引っ張るぞ」ガスが声をかける。
「わ、わかった。もう完全に地面が沈んでここからだとガスの足元は目線が切れてるよ。お腹のしたの土が抜け落ちているみたいだよ」
リリアが慎重に匍匐前進を始めた時だった。

「っぴゃあぁぁ!」

リリアの周囲が突然抜け落ちる様に陥没しリリアは変な声を上げて落下していた。
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