勇者の血を継ぐ者

エコマスク

文字の大きさ
401 / 519

【201.5話】 リリアとネーコとネーコのスキルと ※デュラハン退治に出かける前の話し※

しおりを挟む
リリアとネーコは買い物に来ている。
「リリたん、今日は結構いっぱい買い込んでいるニャン」
ネーコのネールサロンの帰りがけに待ち合わせをして一緒にリリアは買い物に来ている。
「今回のクエストはデュラハンって相手で、予告して村人の首を切りに来るんだけどそれが予告の日から一週間くらい前後するんだって。ザシャナトって地域で集落や小さい村で二週間近く過ごすから色々買い込んでおく予定よ。多分何にもない場所だと思うんだよね」リリア。
「よく勇者を続けているニャン、感心するニャン」
リリアとネーコはアイテムショップ“クエストマン”に入っていく。

「シャツをそんなに買うニャン?」ネーコは少しびっくりしている。
「そうだよ、ここは冒険者用のアイテム販売が主流よ、街中で着るシャツよりも厚手で丈夫な物が置いてあるから、ここで買うようにしてるんだよね」リリアは手当たり次第といった風にシャツを手に取っていく。
「可愛くも無いし安くないニャン、それに十着も必要ニャン?」ネーコが一着手に取って眺めながら言う。
「もと冒険者でドワーフのブルケルさん達が仕立てていて物は良いんだよ。鎧を着る人はこんなに買う必要ないけどね… 鎧は重いし音が出てスナイピング向きじゃないからリリアの場合はどうしても皮装備中心になるんだよ」リリアは答える。
「リリアモデルを着ていたら良いニャン、安上がりニャン」ネーコ。
「まぁ、リリアモデルは実際修理も無料なんだけどね… どうしても職業上不便も多いからね」
「リリたん、旅先で洗濯しないニャン?自分で裁縫しないニャン?」
「洗濯はしてるわよ。裁縫も少しはしてるわよ。でも、噛まれたり切られたりされなければ、そんなに破れたりしないんだよね… ほら、丈夫な生地でしょ?ね?」
「だったらこんなに要らないニャン」
「いや、汚れは落ちるけど血が付いたら一発でダメなんだよね」
「… 確かに… リリたんが血に染まった装備でバーに戻って来るとゾっとするニャン」
「でしょ?… 出来るだけ着替えてから街に入るようにはしているんだけどね… 着替えが無かったり、もう本当に一刻も早く休みたい時とかはね… やっぱりあれって見ていて嫌?」リリアは少し苦笑い。
「見ていてこっちまで痛くなるニャン、ラビとか泣いてるニャン」
「… ここの生地は厚めで多少血が出ても表に染みないようになってるけどね… 血が滲んで乾いたらもう着れないよね…」
リリアはシャツを選び終わるとグローブとブーツの革製品を手に取る。
「リリアちゃん、長期で出張かい?随分と買い込むみたいだね」ドワーフのデフデレルさんが挨拶する。
「今回は最調20日くらいになるかも。王様からの直接の依頼なんだよね」リリアは笑う。
「王様から直接?… わっはっはっは!リリアちゃんも王様直々クエストを貰うようになったのか!そうかそうか、わっはっは!これでウチも皇室御用達の店になったな」デフデレルは愉快そうにしている。
「リリアちゃんってばこう見えても本当に本物の勇者だからね」リリアがニコニコ、呟くように言う。
「… えぇ? わっはっはっは」
デフデレルはリリアの言葉を聞き取り損なったようだがとにかく笑い飛ばしている。

「…リリたん、いつまで冒険者続けるニャン?」ネーコがリリアを見る。
血に汚れた装備で街中を歩く兵士や冒険者時々みかける。返り血を浴びたり、自分の血で汚れていたりしている姿。怪我をして抱えられていたり運ばれているならまだ良い。一度大量に血を流した後、治癒魔法等で回復を受け、赤黒く血が乾いた装備そのままでわりと平然と歩いている姿は傷つき呻いている人の姿よりある意味異様だ。
複数名で行動する兵士達はそれでも少しは街に溶け込むが、一人血が付いた装備のままドロップアイテムの換金を行いニコニコしている人を見かけると正気を疑うことがある。

「いっつもその話題になるよね… ずっとやる気もないけど、今辞める気も無いよ」リリアはニコニコしている。
「もう貯金も十分ニャン、皆でバーガールやるニャン」
「リリアが冒険者辞めたら冒険者酒場登録できなくなるってコトロが怒るよ。それに勇者って結構自腹切ってお金かかってるんだよ。王国は仕事依頼するけど、その後人がどうなるかなんて気にしていないからねぇ。まぁ、それでも村にワイン貯蔵庫と養牛場と石造りの家を建てても余るくらい貯金あるけど。でもリリアが勇者辞めたらリアルゴールドとハンズマンはスポンサー下りるよ」
「… コトたんはあんな風に言っているだけニャン、リリたんが無事な方が良いに決まっているニャン」
リリアの説明によれば、痛すぎるから勇者を一生続ける気はないそうだ、冒険者も一生続ける気はないらしい、いや、一生冒険者を続けられる人間なんてほとんどいない。どこかの時点で引退するべきだ。


「あたし街で暮らすまで勇者の子孫って言われるの嫌いだったんだよ。でも、父さんはずっと我が家が勇者の血筋だっていうの誇っていてね… あたし、勇者になって思ったけど父さんの言っていることを見直したの。世の中勇者をバカにし過ぎだよ。もう少しがんばってみる。父さんに良い報告したいんだよね」
なんで勇者を続けるのかリリアに聞くとこんな答えがたいてい帰ってくる。

「冒険者?家に昔から冒険物と勇者物語の本が多かったんだよね。内容はわかんなかったけど挿し絵とか見ていたら知らない土地にいる気がしてね、お金もらって馬車であっちこっちいって楽しいじゃない。自分の馬車でお金儲けしながら旅行できたら最高だろうね」
リリアに冒険者をする理由を尋ねるとこんな感じの答え。


「ニャン子はバーガールが好きなのニャン?」
「ニャン語相変わらず下手ニャン… ルーダの風でバーやるのが良いニャン。そのうち良い人見つけて結婚したら小さなカフェやりたいニャン」
「カフェ?初耳ね… バーじゃないのね」
「軽食と飲み物だして中休みで昼寝して夜も遅くならず、酔っぱらいの相手しなくてよいお店ニャン」
「ふーん… 酔っぱらい嫌いなんだね、あたしニャンはバーガールが好きだと思ってたよ」
「バーは良いニャン。酔っぱらい好きな人はいないニャン。コトたんは冒険者だからネーコの身元とかうるさくないニャン。他所にいったら身元保証のない猫耳亜人の女性なんてオモチャ程度の認識ニャン。首輪をつけられないだけマシにゃん」ネーコが言う。
「… わかった!リリアが稼いでバー・ルーダの風の真向かいにカフェショップを出してあげる!リリアがオーナー、ネーコが店長、ラビが副店長!コトロのバーのお客を全部いただいてルーダの風を廃業させよう!そしたらコトロは平スタッフとしてカフェで雇ってあげましょう」
リリアがラビに抱き着いて言う。
「リリたん、それなら最初からコトたん雇った方が話早いニャン、無意味な手間が多いニャン」ネーコは苦笑いしている。


リリアはアイテムを選ぶとお会計。
「今日は結構買ったくれたね、修理に便利な皮の紐を多めにおまけしておくよ」デフデレルが言う。
「また、仕事でこれだけ買う事あるニャン、もうちょっとおまけニャン」
ネーコは口元に指を当てるとクリクリとした目でウィンクした


リリアとネーコは買い物を済ませて帰り道。
「ねぇ、ニャンちゃん、さっき感情豊かな瞳と猫なで声のスキル使っておまけさせたでしょう、リリアちゃんには隠せないのよ」リリアが笑う。
「隠すも何もそのまんまニャン、あれだけ買ったから負けるニャン」
「あんまり使うと取り引き中に催眠を施した罪で逮捕よ」リリアは笑っている。
「だけど、助かったわね。お礼にコーヒーとマタタビ風ケーキが美味しいお店でご馳走するよ」
「リリたん赤字ニャン」
リリアとネーコは顔を見合わせて笑った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...