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【187話】 ウェン墳墓とリリア
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リリア達はウェン・ザ・シャーマンの間に立ち入った。
ここにはウェン、本人が永眠している。
ゴージャスな部屋… というわけではない。
大きさはちょっとした食事処程度だろうか?しかし、壁はもちろん天井や床は丁寧に造られているのが一目でわかる。石は規則的に組まれ、凸凹がないよう丁寧に面取りをしてある。
石の棺が中央に置かれ埋葬品が並べられる棚が部屋中に巡らされている。
「ここがウェンの間です。かつては調度品や埋葬品が置かれてありましたが大半は持ち去られてしまいました。現在ルーダ・コートの街の博物館に展示されているものはかつての盗品を回収してきたとされる者からの申し出を国が買い取った品々です。壁、棺、あらゆる場所に金品と宝石で装飾がしてありましたがそれらも持ち去られて、残った物は博物館か博物館の宝物室に保管してあります」館長が説明してくれる。
部屋は石ばかりで殺風景だが、床の仕上げ等をみると通路等とは明らかに造り込みがちがうのがリリアにも理解できた。
「ね、盗難品高値で買い取りますって謳って実際持ってきた人間を盗賊扱いして有無を言わさず縛り首にしたって噂されるあれだよね」ペコがアリスにヒソヒソ言う。
「凄いですね、調査に参加した甲斐がありました。あの壁画は学校で習ったものですね。ピクトグラフですがこの部屋に侵入した物には呪いと災いが襲い掛かるとか… 確かそのような内容でしたね」アリスが聞く。
「はい、こちらが有名なウェンの呪いの壁絵です。学校なら教科書に必ず載っておりましょう。これが実際の壁です。魔法使い殿は王立の魔法学校ご出身でございましたな。勇者殿は… 地元の村の教会で学習を?… 村はちゃんと王国の登録村で王国のバナーを飾るのを許されている村… ですな… はい…はい… 国からの助成金で建てた教会なので王立の教会と言えなくはない… さようですな… 勉学の師はもともとも王国の教会で仕事されいて… 王立魔法学校の課程修業者と同じレベルの学力と言っても過言ではない?… さようですな… 全くごもっとも…」
リリアは何だか最終学歴でペコ達に負けたくないようだ。しきりと王立魔法学校と張り合おうとがんばっている。
「ぅわ… コンプレックス?恥ずかしい… 知らない顔しとこ…」ペコは離れて立っている。
「…コホン… せっかくですので実際の壁画について説明をさせていただきます。ウェンの時代にはまだこの地方に文字らしい文字はなかったので、このように独自の絵文字を使い… これがウェン本人を現わし… 神の存在を… 犠牲者達…… それにより解読された文章はウェンとその周りの者の生活とウェンの墓に関わる者達への災いを記したものと解釈されております」館長は丁寧にリリア達に教えてくれた。
リリアは結構真剣に聞いていた。もともと書物を読むのは好きな方で非常に感心しながら聞いているようだ。
「… すごいねぇ… 絵で物を伝えるってこの頃からあったんだねぇ… 王立の学校ではこういうの習うのかぁ… あ、でもリリアは王立学校出身じゃないけど手紙の最後に ^_^ とか書くよ。元気にしてますよって意味でね。あれって絵文字だよね。リリアは学校いってないけど同レベルの知識って事だよね。 それと情報紙の4コマ漫画ってあたし楽しみに見てるけど… あれってこれの簡略化版だったんだねぇ」
しきりに感心してリリアは頷いている。
「理解してるのか、してないのか… あの発想… 天才なの?… アホなの?」ペコが頭を抱える。
「両方よ、紙一重よ」アリスが微笑む。
館長が色々説明している間にロッチが棺周りのトラップを解除した。
「では、棺の中のウェンの状態を確認して戻りましょう」
関係者が数名で棺を開けて中を確認する。
リリアはちょっと離れて棺の中にはシワシワなウェンが寝ているのを見ていた。
あまり見ていて気持ちの良いものでは無い。
棺の中の確認中、リリアは壁画を見ながらペコ達とおしゃべりする。
「今回はリリアに感謝ね。なかなか見られない場所を見学できた」ペコ。
「どう?ダンジョン冒険は?」アリスに聞かれる。
「これは冒険じゃないよね… でも良い勉強にはなったよ。真っ暗な中自分でここまで辿り着くのは無理かなぁ… ってか無理だね、やる気もしないし」リリアが言う。
「でしょ? まぁ、ここは墳墓だから極端な例だけど、たぶんこの部屋にたどり着くまでに相当な人が命を落としてるよ。今王国内にあるダンジョンなんて危険を冒して入っても何にもないよ。別に危険な場所だからって定期的に宝が生えてくるものじゃないからね」ペコが言う。
リリアが改めて部屋を見渡すと石ばかりで殺風景な部屋だ。
「頭脳と才能を使ってお宝にたどり着く… というよりは挑戦した者がトラップにかかっていった結果、幸運な何人目かが来れましたってところでしょうね」アリス。
「変な冒険心は出さずに山ガールは野山で活動することね」ペコ。
リリアはコクコクと頷いた。確かに道中の事を考えると命がいくつあっても足りそうにない。
「別に最近はダンジョンに行きたいとは思ってなかったよ。ヒュードー洞窟に行ってみてメッチャやばいなと思ったし、最初は冒険者や勇者ってダンジョンに行くものだと思ってたけどね…」
「そうそう、勇ましくなくても勇者は出来るからね。無駄なリスクを背負う必要ないって」
「良い勉強になったわ。私達、ウェン墳墓のダンジョンはクリアよね」
ペコとアリスが笑う。
「… 確かに… 全部見て出てきたら達成か…」リリアも頷く。
「ダンジョンインして仕事達成して無事生還して、割高のバイト料ゲット!… ウェン墳墓はクリアよ」アリスも笑う。
「… そっか… こういうクリアもあるのか…」
リリアも笑って納得。
「ここは政策で一般公開していないから我々は希少な達成者になったのよ。勇者リリアのお陰ね」
アリスが笑うとリリアもペコも顔を見合わせて笑った。
ちょうど棺調査も終わり蓋が閉じられるところだった。
ここにはウェン、本人が永眠している。
ゴージャスな部屋… というわけではない。
大きさはちょっとした食事処程度だろうか?しかし、壁はもちろん天井や床は丁寧に造られているのが一目でわかる。石は規則的に組まれ、凸凹がないよう丁寧に面取りをしてある。
石の棺が中央に置かれ埋葬品が並べられる棚が部屋中に巡らされている。
「ここがウェンの間です。かつては調度品や埋葬品が置かれてありましたが大半は持ち去られてしまいました。現在ルーダ・コートの街の博物館に展示されているものはかつての盗品を回収してきたとされる者からの申し出を国が買い取った品々です。壁、棺、あらゆる場所に金品と宝石で装飾がしてありましたがそれらも持ち去られて、残った物は博物館か博物館の宝物室に保管してあります」館長が説明してくれる。
部屋は石ばかりで殺風景だが、床の仕上げ等をみると通路等とは明らかに造り込みがちがうのがリリアにも理解できた。
「ね、盗難品高値で買い取りますって謳って実際持ってきた人間を盗賊扱いして有無を言わさず縛り首にしたって噂されるあれだよね」ペコがアリスにヒソヒソ言う。
「凄いですね、調査に参加した甲斐がありました。あの壁画は学校で習ったものですね。ピクトグラフですがこの部屋に侵入した物には呪いと災いが襲い掛かるとか… 確かそのような内容でしたね」アリスが聞く。
「はい、こちらが有名なウェンの呪いの壁絵です。学校なら教科書に必ず載っておりましょう。これが実際の壁です。魔法使い殿は王立の魔法学校ご出身でございましたな。勇者殿は… 地元の村の教会で学習を?… 村はちゃんと王国の登録村で王国のバナーを飾るのを許されている村… ですな… はい…はい… 国からの助成金で建てた教会なので王立の教会と言えなくはない… さようですな… 勉学の師はもともとも王国の教会で仕事されいて… 王立魔法学校の課程修業者と同じレベルの学力と言っても過言ではない?… さようですな… 全くごもっとも…」
リリアは何だか最終学歴でペコ達に負けたくないようだ。しきりと王立魔法学校と張り合おうとがんばっている。
「ぅわ… コンプレックス?恥ずかしい… 知らない顔しとこ…」ペコは離れて立っている。
「…コホン… せっかくですので実際の壁画について説明をさせていただきます。ウェンの時代にはまだこの地方に文字らしい文字はなかったので、このように独自の絵文字を使い… これがウェン本人を現わし… 神の存在を… 犠牲者達…… それにより解読された文章はウェンとその周りの者の生活とウェンの墓に関わる者達への災いを記したものと解釈されております」館長は丁寧にリリア達に教えてくれた。
リリアは結構真剣に聞いていた。もともと書物を読むのは好きな方で非常に感心しながら聞いているようだ。
「… すごいねぇ… 絵で物を伝えるってこの頃からあったんだねぇ… 王立の学校ではこういうの習うのかぁ… あ、でもリリアは王立学校出身じゃないけど手紙の最後に ^_^ とか書くよ。元気にしてますよって意味でね。あれって絵文字だよね。リリアは学校いってないけど同レベルの知識って事だよね。 それと情報紙の4コマ漫画ってあたし楽しみに見てるけど… あれってこれの簡略化版だったんだねぇ」
しきりに感心してリリアは頷いている。
「理解してるのか、してないのか… あの発想… 天才なの?… アホなの?」ペコが頭を抱える。
「両方よ、紙一重よ」アリスが微笑む。
館長が色々説明している間にロッチが棺周りのトラップを解除した。
「では、棺の中のウェンの状態を確認して戻りましょう」
関係者が数名で棺を開けて中を確認する。
リリアはちょっと離れて棺の中にはシワシワなウェンが寝ているのを見ていた。
あまり見ていて気持ちの良いものでは無い。
棺の中の確認中、リリアは壁画を見ながらペコ達とおしゃべりする。
「今回はリリアに感謝ね。なかなか見られない場所を見学できた」ペコ。
「どう?ダンジョン冒険は?」アリスに聞かれる。
「これは冒険じゃないよね… でも良い勉強にはなったよ。真っ暗な中自分でここまで辿り着くのは無理かなぁ… ってか無理だね、やる気もしないし」リリアが言う。
「でしょ? まぁ、ここは墳墓だから極端な例だけど、たぶんこの部屋にたどり着くまでに相当な人が命を落としてるよ。今王国内にあるダンジョンなんて危険を冒して入っても何にもないよ。別に危険な場所だからって定期的に宝が生えてくるものじゃないからね」ペコが言う。
リリアが改めて部屋を見渡すと石ばかりで殺風景な部屋だ。
「頭脳と才能を使ってお宝にたどり着く… というよりは挑戦した者がトラップにかかっていった結果、幸運な何人目かが来れましたってところでしょうね」アリス。
「変な冒険心は出さずに山ガールは野山で活動することね」ペコ。
リリアはコクコクと頷いた。確かに道中の事を考えると命がいくつあっても足りそうにない。
「別に最近はダンジョンに行きたいとは思ってなかったよ。ヒュードー洞窟に行ってみてメッチャやばいなと思ったし、最初は冒険者や勇者ってダンジョンに行くものだと思ってたけどね…」
「そうそう、勇ましくなくても勇者は出来るからね。無駄なリスクを背負う必要ないって」
「良い勉強になったわ。私達、ウェン墳墓のダンジョンはクリアよね」
ペコとアリスが笑う。
「… 確かに… 全部見て出てきたら達成か…」リリアも頷く。
「ダンジョンインして仕事達成して無事生還して、割高のバイト料ゲット!… ウェン墳墓はクリアよ」アリスも笑う。
「… そっか… こういうクリアもあるのか…」
リリアも笑って納得。
「ここは政策で一般公開していないから我々は希少な達成者になったのよ。勇者リリアのお陰ね」
アリスが笑うとリリアもペコも顔を見合わせて笑った。
ちょうど棺調査も終わり蓋が閉じられるところだった。
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