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【170.5話】 片隅のダカット ※エリフテン出発前の話し※
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ダカットはバー・ルーダの風の片隅に置かれている。
正に宴もたけなわな時間帯、バーは賑わっている。コトロがリュート演奏してネーコとラビがお酒と料理をサーブする。リリアも今日はバーに出ている。
もっともリリアの意識の中では冒険者活動でギルドに貢献していてバーは本当におまけの手伝いと思っているのか、自由奔放な性格だからなのか手伝うというより、気の向くままに好き勝手参加しているような感じだ。
今は全席埋まっていてお客の中にはペコ、アリスとブラックも来ている。
「………………」
ダカットはバーの隅に置かれてじっとしている。
もっともダカットは自立移動できないのでじっとしているしかオプションがない。
ダカットの隣にはメイシアの魔法のホウキが居る。
冒険者酒場では魔法のホウキだろうが妖精だろうが使い魔だろうが何でもありだ。
ホウキをテーブルの側に置いたり、妖精がテーブルに腰かけていたり、魔法の鏡を相手に食事したりどうぞご自由に。
だが、一般の食事処は空飛ぶ絨毯等を持ち込まれると不衛生だと嫌がられることがある。
そんな場合はマジックアイテムや使い魔専用の場所があるのだ。
パートナーやご主人様がご飯タイムの間、使い魔達はそこで情報交換等している。
バー・ルーダの風は持ち込み自由なのだが、狭いバーなので人が増えると使い魔達は小さなスペースに退避させられる。
ダカットはお客を眺めてじっとしている。もっとも自立して動けない。
リリアは先ほどから常連の相手をしながら頻りにペコ、アリス、ブラックと盛り上がっている。
見ていると仕事を頼むならラビだろう。一番真面目というか、仕事にムラがない。愛想も良いし好感が持たれる。
ネーコは少し気まぐれで気分屋な所があるようだ。気難しいところも少しあるようだが、それがお客の気を引いて人気がある。
コトロは良い意味で目立った部分が無い。ネーコ達に自由にさせてお店が良く回っている。
本人はリュートの演奏をやっていたいようだ。
リリアは…
見ていて飽きない。
良くおしゃべりして良く笑い、たまに結構激しく怒る。リアクションが大きく笑う時は弾ける様に心の底から楽しんでいるのが伝わってくる。見ていて楽しくなる。
サービス業に向いている様には見えないが、人に嫌われない素質みたいな物を感じる。
今も見ているとカウンター裏で葡萄酒を飲みながら男性のようなしぐさで片肘をついてペコ達と夢中でしゃべりしいる。ボブさんがお肉とジャガの鉄板炒めを注文すると「リリアは今盛り上がっているのに…」と口を少し尖らせながら無造作に料理を作り「はい、お肉増量しておいたからしばらく大人しくしてください」とサーブし、また夢中でおしゃべりしている。
「おう、サービスいいな、悪ぃなぁ」と言ったっきりボブさんも相手と話し込んでいる。
ブーツを履いた足がスラリと見え、肘をついてカウンターに体を寄せるとヒップが丸いカーブを描き、胸のボリュームが特に目立つ。たまにポニーテールを直すしぐさも良い。
まぁ、この仕草はあまりバーでやっているとコトロに注意される。
「………………」
ダカットはバーの隅に置かれてじっとしている。
もっともダカットは自立移動できないのでじっとしているしかオプションがない。
ダカットの隣にはメイシアの魔法のホウキが居る。
「ダカット、久しぶりね、調子はどうなの?」
イリオナの契約者、妖精のミンが飛んで来てダカットの柄の先にちょこんと座った。
「普通かなぁ… まぁ、リリアと一緒にいると飽きないな」
見ているとリリアはジョーさんにお酒を注いで出してあげている。お酒を出して帳簿に着けようともしない。これもリリアは気分次第で何回かに一回、こんなことをやる。
コトロが少しリリアに目をやった。あんまりやると裏でコトロに注意されている。
「一緒にいると飽きない?楽しくなるって話でしょ?」メイシアの魔法のホウキが笑う。
「実際どうなの?契約上恋愛できるの?契約じゃなかった?立場上恋愛可能なの?」ミンが聞く。
「… 俺、ホウキだし… そういうのは…」ダカットがボソボソ言う。
「あら!使い魔と結婚する人もいるのよ。結婚したら主従関係がひっくり返ったとか… ねぇ!… 道具だから人間と結婚できないなんておかしいわ、ダカットは宿って何年?… 七十年程度かぁ… まだ人間の常識がある年頃かぁ…」
「実際は好きなんでしょ?いいじゃない、良さそうな娘じゃない」
「… それが… 好きだけど… 恋愛感情かどうかわからないんだ。見ていて好きなんだろうけどなぁ… だけど、そこまで感情が膨らまないと言うか… こうして見ていても、リリアとブラックが仲良くしているけど… あまり何も感じないし、リリアはたまに男と遊ぶけどちょっと嫌な気持ちがあるだけで嫉妬したりとかは感じないんだ。 …俺、ホウキになって何か欠落したんだろうか?」
「欠落かな?先に進んだのかな? 感情は肉体から来る部分も多いからねぇ。脳が反応したり汗をかいたり、性器が動いたり、血が巡ったりすることで感情は起伏するから精神だけの今はそうかもね」
「やっぱりそうなのか… 何となく感じるけど、湧き上がるような感情ってないんだなぁ… だから気に入っている感じだけど、それ以上の感情ってあんまりないんだよ」ダカットは言う。
「ふーん… ま、七十年ってそんな年頃かもね」
「………」ダカットはリリアを見ている。
「トージさん、ラビは今忙しいからあんまり引き止めないで。それよりコトロの演奏でも聞いて和んでよ… ニャン、今度ラドフさんにお尻触られたらネコパンチかましていいからね… 無料でお尻触ろうだなんて虫が良過ぎよ、リリアに話を通しなさい」
リリアはマイペースだ。計算しているかどうかわからないが場をコントロールもしているようだ。恐らく素だろう…
「この前マリノアの所で食べた鶏料理美味しかったのよねぇ… 作ってみようかな… こんな感じ… 見えた目は似ている!… あれ?全然味が違う… ペコ、アリス、この料理どう?」
リリアは自由人。
「うーん、お金はもらえないかなぁ…」ペコ達が言う。
「俺は好きっす、勢いで食べる料理っす」必ず褒める奴。
「あの… リリア… 今日はサービスし過ぎです… もう今日はあんまりサービスしないでください」とうとうコトロに注意されている。
「ボブさん良かったね、さっきのサービスはバレてないみたいだよ。結構コトロは見ていてちゃんと付けさせられたりするのよねぇ… まぁ、リリアちゃんの俊敏性の勝利ね」リリは悪戯っぽく笑っている。
「………………」
ダカットはバーの隅に置かれてじっとしている。
もっともダカットは自立移動できないのでじっとしているしかオプションがない。
ダカットの隣にはメイシアの魔法のホウキが居る。
柄の上ではミンが足をブラブラさせて座っている。
正に宴もたけなわな時間帯、バーは賑わっている。コトロがリュート演奏してネーコとラビがお酒と料理をサーブする。リリアも今日はバーに出ている。
もっともリリアの意識の中では冒険者活動でギルドに貢献していてバーは本当におまけの手伝いと思っているのか、自由奔放な性格だからなのか手伝うというより、気の向くままに好き勝手参加しているような感じだ。
今は全席埋まっていてお客の中にはペコ、アリスとブラックも来ている。
「………………」
ダカットはバーの隅に置かれてじっとしている。
もっともダカットは自立移動できないのでじっとしているしかオプションがない。
ダカットの隣にはメイシアの魔法のホウキが居る。
冒険者酒場では魔法のホウキだろうが妖精だろうが使い魔だろうが何でもありだ。
ホウキをテーブルの側に置いたり、妖精がテーブルに腰かけていたり、魔法の鏡を相手に食事したりどうぞご自由に。
だが、一般の食事処は空飛ぶ絨毯等を持ち込まれると不衛生だと嫌がられることがある。
そんな場合はマジックアイテムや使い魔専用の場所があるのだ。
パートナーやご主人様がご飯タイムの間、使い魔達はそこで情報交換等している。
バー・ルーダの風は持ち込み自由なのだが、狭いバーなので人が増えると使い魔達は小さなスペースに退避させられる。
ダカットはお客を眺めてじっとしている。もっとも自立して動けない。
リリアは先ほどから常連の相手をしながら頻りにペコ、アリス、ブラックと盛り上がっている。
見ていると仕事を頼むならラビだろう。一番真面目というか、仕事にムラがない。愛想も良いし好感が持たれる。
ネーコは少し気まぐれで気分屋な所があるようだ。気難しいところも少しあるようだが、それがお客の気を引いて人気がある。
コトロは良い意味で目立った部分が無い。ネーコ達に自由にさせてお店が良く回っている。
本人はリュートの演奏をやっていたいようだ。
リリアは…
見ていて飽きない。
良くおしゃべりして良く笑い、たまに結構激しく怒る。リアクションが大きく笑う時は弾ける様に心の底から楽しんでいるのが伝わってくる。見ていて楽しくなる。
サービス業に向いている様には見えないが、人に嫌われない素質みたいな物を感じる。
今も見ているとカウンター裏で葡萄酒を飲みながら男性のようなしぐさで片肘をついてペコ達と夢中でしゃべりしいる。ボブさんがお肉とジャガの鉄板炒めを注文すると「リリアは今盛り上がっているのに…」と口を少し尖らせながら無造作に料理を作り「はい、お肉増量しておいたからしばらく大人しくしてください」とサーブし、また夢中でおしゃべりしている。
「おう、サービスいいな、悪ぃなぁ」と言ったっきりボブさんも相手と話し込んでいる。
ブーツを履いた足がスラリと見え、肘をついてカウンターに体を寄せるとヒップが丸いカーブを描き、胸のボリュームが特に目立つ。たまにポニーテールを直すしぐさも良い。
まぁ、この仕草はあまりバーでやっているとコトロに注意される。
「………………」
ダカットはバーの隅に置かれてじっとしている。
もっともダカットは自立移動できないのでじっとしているしかオプションがない。
ダカットの隣にはメイシアの魔法のホウキが居る。
「ダカット、久しぶりね、調子はどうなの?」
イリオナの契約者、妖精のミンが飛んで来てダカットの柄の先にちょこんと座った。
「普通かなぁ… まぁ、リリアと一緒にいると飽きないな」
見ているとリリアはジョーさんにお酒を注いで出してあげている。お酒を出して帳簿に着けようともしない。これもリリアは気分次第で何回かに一回、こんなことをやる。
コトロが少しリリアに目をやった。あんまりやると裏でコトロに注意されている。
「一緒にいると飽きない?楽しくなるって話でしょ?」メイシアの魔法のホウキが笑う。
「実際どうなの?契約上恋愛できるの?契約じゃなかった?立場上恋愛可能なの?」ミンが聞く。
「… 俺、ホウキだし… そういうのは…」ダカットがボソボソ言う。
「あら!使い魔と結婚する人もいるのよ。結婚したら主従関係がひっくり返ったとか… ねぇ!… 道具だから人間と結婚できないなんておかしいわ、ダカットは宿って何年?… 七十年程度かぁ… まだ人間の常識がある年頃かぁ…」
「実際は好きなんでしょ?いいじゃない、良さそうな娘じゃない」
「… それが… 好きだけど… 恋愛感情かどうかわからないんだ。見ていて好きなんだろうけどなぁ… だけど、そこまで感情が膨らまないと言うか… こうして見ていても、リリアとブラックが仲良くしているけど… あまり何も感じないし、リリアはたまに男と遊ぶけどちょっと嫌な気持ちがあるだけで嫉妬したりとかは感じないんだ。 …俺、ホウキになって何か欠落したんだろうか?」
「欠落かな?先に進んだのかな? 感情は肉体から来る部分も多いからねぇ。脳が反応したり汗をかいたり、性器が動いたり、血が巡ったりすることで感情は起伏するから精神だけの今はそうかもね」
「やっぱりそうなのか… 何となく感じるけど、湧き上がるような感情ってないんだなぁ… だから気に入っている感じだけど、それ以上の感情ってあんまりないんだよ」ダカットは言う。
「ふーん… ま、七十年ってそんな年頃かもね」
「………」ダカットはリリアを見ている。
「トージさん、ラビは今忙しいからあんまり引き止めないで。それよりコトロの演奏でも聞いて和んでよ… ニャン、今度ラドフさんにお尻触られたらネコパンチかましていいからね… 無料でお尻触ろうだなんて虫が良過ぎよ、リリアに話を通しなさい」
リリアはマイペースだ。計算しているかどうかわからないが場をコントロールもしているようだ。恐らく素だろう…
「この前マリノアの所で食べた鶏料理美味しかったのよねぇ… 作ってみようかな… こんな感じ… 見えた目は似ている!… あれ?全然味が違う… ペコ、アリス、この料理どう?」
リリアは自由人。
「うーん、お金はもらえないかなぁ…」ペコ達が言う。
「俺は好きっす、勢いで食べる料理っす」必ず褒める奴。
「あの… リリア… 今日はサービスし過ぎです… もう今日はあんまりサービスしないでください」とうとうコトロに注意されている。
「ボブさん良かったね、さっきのサービスはバレてないみたいだよ。結構コトロは見ていてちゃんと付けさせられたりするのよねぇ… まぁ、リリアちゃんの俊敏性の勝利ね」リリは悪戯っぽく笑っている。
「………………」
ダカットはバーの隅に置かれてじっとしている。
もっともダカットは自立移動できないのでじっとしているしかオプションがない。
ダカットの隣にはメイシアの魔法のホウキが居る。
柄の上ではミンが足をブラブラさせて座っている。
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