勇者の血を継ぐ者

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【169話】 二日目のタワー・オブ・エリフテン

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エリフテン塔の二日目
リリア達は今朝からフル回転で働いている。

前衛にはブラック達と接近戦を得意とする連中が4名。リリアとエルフのロメリオが弓で後衛を務める。プラスで荷物係りのラビ。
エリフテン塔自体はかつてルーダリア軍が見張り塔と砦の役目として使用していた。塔自体も軍略としての機能を備えているし、手前にある施設も倉庫、厩、寄宿舎、ギャレー、食堂等の建物がいくつもあり小規模ながら塀に囲まれて防衛機能を備えている。
リリア達からすれば攻略を余儀なくされる。
こういう場所はゾンビ、スケルトン兵団、ロードナイト等それっぽい連中が居座っていることが多い。クリエイトの目的のためか生前の記憶が残っているのか… 不明…
人間ほど知恵が無いにしろリリア達は拠点の攻略をしなければいけない。

コトロ達はイベントギルドのスタッフと馬車を安全な場所に待機させてお留守番。
お留守番部隊はイベントギルドのスタッフ5名、馬車の護衛者3名に責任者役のコトロとネーコがお留守番。ダカットはリリアに背負われている。


今朝、施設周辺の安全な場所でミーティングを行った。
リリアが仕事を引き受けた責任者なので攻撃班はリリアが隊長だ。コトロがお留守番隊長。

「さぁ、皆気合入れていくわよ!その前にこちらもスケルトン兵をクリエイト、動く藁人形をクリエイト、予算を出してもらったの、戦力増強よ」
リリアはスケルトン兵と藁人形を二体ずつクリエイトした。
「では、皆気を付けて命大事にガンガンいくわよ。連絡取りながら無理はしないでね。縦長の通路に誘い込めば弓でぶっ倒せるし、建物の陰と地形を考えていこう。コトロ、何も心配要らないから、馬車でお茶してリュートでも演奏していて。ネーコ、魔物が来たら引っ掻いてやりなさい… ネイルを手入れしたばっかり?… じゃ、ネコパンチね! ラビは最初荷物係り。午後はネーコと交代予定。ポーションと薬草とその他応急処置類と予備矢、それと盾で身を隠してね」リリアが指示を出す。
「リリたん、ちょっと所持品多すぎるピョン… 心配ピョン」ラビが言う。
確かに… 結構な所持品になっている上、身をすっぽりと隠すような盾を持たされている。敏捷性を生かせる格好とは思えない。
「今日はあたし達のさらに後ろで隠れてれば良いわよ。移動倉庫役よ」

「リリア、そのホウキを背負っているのは意味あるのか?」ゴーゾルに聞かれる。
「これ?まぁ、掃討だから掃除道具、なんちゃって、うっふっふ… 後ろ見てくれたり、刷毛で若干怪我防止になったり… まぁ、このスタイルよ」リリアが笑う。
「… そうか… 戦えるなら…」何とも言えない返事。
「施設全体を制圧したらコトロ達は馬車を入れて待機ね。かなり安全になるはずよ。出来ればお昼ご飯は安全な建物でゆっくり食べたいよね。じゃ、スケルトン兵と藁人形を先頭に…  って… えぇぇぇぇぇ!!」
気がついたらリリアのスケルトン立ちはミーティングに飽きたのかリリアの作戦に承服しかねたのか勝手に突撃を開始している。数が違う、いきなり劣勢になっている。
「皆!作戦開始!とりあえずスケルトンを救出よ!大事な戦力よ!あれ高いのよ! 待ってぇぇ!」
突然支離滅裂な攻撃開始となった。
「どんな命令与えたんですか… そもそもクリエイトを救出って本末転倒ですよ…」
コトロは慌てるリリアの後ろ姿を見送る。
「リリたん、良く今まで生き残ってるニャン」
ネーコも見送る。


施設制圧作戦は思ったより順調に進んでいる。
リリアの作戦通り… とは全然違うのだが、前衛の猛者は「ちまちまと仕事するより腕を振るえるぜぇ!」と機を得たりと暴れている。いささか暴走気味だが目覚ましい活躍をしている事には違いない。
施設の塀内に侵入して一部の魔物を倒したらリリアとロメリオは建物の屋根に上がって狙撃開始。前衛が行く先の魔物を狙撃して脅威を排除していく。意図されていない連携だが成果は上がっている。
「OK,兵舎を制圧完了だ」
「了解、こちらは建物の外を狙撃するから」通信のイヤリングで連絡を取る。

「ピョン子、大丈夫ね?」リリアが建物の下を覗いてラビに声をかける。ラビはリリア達の居る建物の下で藁君と待機中。
「大丈夫ピョン。思ったよりジッとしている時間があるから疲れないピョン。ラビはもっと荷物をもって走り回ると思ったピョン」ラビは盾の陰に隠れている。
藁君も側で待機中。もうすでにボロボロ。
因みに藁人形の一体とスケルトン二体はミーティング後にフルボッコの瞬殺。高級スクロールのクリーチャーがあっという間に消し飛んだ。
生き残った藁人形一体を必死に確保。
ただ、リリアの古代語の発音が悪いのかいまいち挙動不審で言う事を聞いてくれない。妙なタイミングで突撃を開始したり、職場放棄してノコノコ戻って来たり、妙にソワソワして落ち着きがない。
「ごめん… ちょっと…発音はあっているはずだけどなぁ…」リリアが言い訳している。
「使えないなら要らねぇよ、放っておけよ」と言いたいところだけど居たら確実に矢受けや荷物運びとして役に立つのだ、簡単に放棄もできない。
「ブラック、古代語出来るでしょ。なんならロメリオも… ロメリオは精霊語なのか… とにかくブラック何とかヘルプミー… え?藁君の所有権を移譲?… 今はクリエイトしたリリアがオーナー?… モデレーター設定?… えぇっと… あたし物理系だから… ちょっとよくわからないな…」
結局藁君はラビと一緒に後衛の後衛をウロウロしている状態に落ち着いている。


「お昼前に制圧できそうね、すごい!ゆっくり皆でお昼ご飯できそうだよ」リリアが通信する。
「良いペースっすけど、残った場所は劣勢の兵団が押し込まれて数が多いっす」ブラックの報告。
制圧しなればいけない建物は残すところ二棟。そこからは広場になっていて塔側に出る門がある。そこに兵団が集まっている。
ブラック達は建物の陰から突撃タイミングをうかがう。
「了解よ、もっと良い狙撃位置に移動中だから。ちょっと残っている兵力が建物影から出て来たりしてね… 場所確保まで待ってね」リリア達は通路を移動。

リリアとロメリオが建物の角から通路を伺う。
「はっ!」リリアとロメリオの声が同時に響きそれぞれの方向の魔物を射倒した。
「よし、あの建物のまで走ろう」ロメリが言う。
「うん… リリアがまずは走って安全確保する。それからピョン子… ラビと藁君を移動させてロメリオが最後… これでいこうか…」リリアが通りを確認しながら提案する。
建物前まで少し広くなって庭木が生え死角も多そうだ。素早く安全にいきたい。
「そうだな… それが最善か…」ロメリオが頷く。
「ピョン、こっちに来て… 良い?これからリリアがあの建物まで走るから合図したら走るの。矢筒はあたしが持てるだけ持つ。あっちに建物影が多いから盾を… こう持って走るの… そう、そしたらロメリオが後から来るから… OKね?」
リリアが説明するとラビは口を横一文にして何回も頷いた。緊張している。当然だが…

「残りは藁君ね… って!! ぅえ?!」
リリア達が振り返ると藁君は通路の後ろでケルベロス達にガリガリと噛まれながら棒立ちしている。
「さっき一人で歩いてたピョン」ラビが報告する。
「もう、あれはいいんじゃないか?役に立ってないよ…」ロメリオが言う。
「いやぁ…でも… 可哀そうかも… 屋根に上がるのにロープより使えない?…」リリアも少し呆れている。
「しかも結局全部掃除しないといけないわけでしょ…」リリア。
「そうだな… じゃ、やるか…」


ロメリオは渋々だったが一応リリア達は藁君を救出して屋根に上がった。


「お待たせ、狙撃準備できたわよ、倒せる奴から倒すから合図するまでシリトリでもして遊んでて」
屋根にあがったリリアが言う。

屋根の上は空が青くわりと平和だ。
お昼までには何とかなりそう。
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