勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【165.5話】 全裸勇者vs下着のネーコとラビと魔物と

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リリア達は馬車から離れキャンプサイトの端にいくと体中の泥を落とし始めた。
「さすがに一日中の雨にうたれていたら体も冷えるわね」
「リリたんは全裸ニャン?」ネーコが驚いた声を出す。
「そうだよ、泥が下着の間に入って面倒じゃない。暗がりで見えないし… って、ニャンにはばっちり見えてるの?」リリアが聞き返す。
「ネコ耳には見えるニャン、きっとラビにも見えているニャン」ネーコが言う。
「ばっちりじゃないけど、見えるピョン。リリたん大胆ピョン」ラビが笑う。
「男達からは見えないよ。人がいるなぁ?程度でしょ。 あぁ、でもウルフマンのタイランドは見えるのかな?… まぁ、見られたって減るものじゃないし、リリアのご自慢のプロポーションならむしろ見せたいくらいだよ。リリアはこう見ても見られて萌えるタイプだからね」リリアはポニーテールをほどいてうっふっふと笑う。
「まぁ、確かに下着の下を流しなおすから全裸の方が効率的は効率的ピョン」
「そんなに見られたいなら、わざわざ陰に隠れる必要無いニャン。全裸でコトたんをてつだったら良いニャン」
「いくらナイスバディでも、見せびらかされるとうんざりするものよ。隠れているくらいが見たくなるものよね」
「言っている事矛盾しているニャン」
「もうそろそろいいかな?… お!… 気配がするよ、誰か覗きに来てるかも、うっふっふ」
「いやニャン」「だめピョン」
リリア達が笑いながら体を流していると近くにはっきりと気配を感じた。しかも複数…
「誰よ!失礼でしょ!」
リリアが声を上げて振り向いた時だった。
“メシャ!!”何かが肩の辺りを叩いた。
「ぬべ!」リリアは変な声を上げて泥の中に転倒。
「わ!マッドマンが生えて来てるニャン!」
「数も多いピョン!」
ネーコとラビが声を上げて助けを呼ぼうとする。
「助けてニャ… うぐ…」
「魔物が沸いているピョ… むぅ…」
リリアが慌てて二人の口を押えた。
「わぁ!待ってまって、あたし全裸なの!人を呼ばないで!」
「知らないニャン!危険ニャン!人呼ばないとダメにゃん!」
「リリたん!相手が多いピョン!ほら攻撃されるピョン!」
「痛い!いたぁぃ!ちょっと待って!二人はせめて下着でしょ?リリアは全裸よ!呼ばないで!」
リリアはネーコとラビと押し問答をしながらマッドマンにガスガスと殴られ、マッドハンドに足まで掴まれている。全裸勇者対、下着のネーコ、ラビとマッドマン。
「リリたん、さっき立派なバディを見られたいって言ってたニャン!全裸を見られて萌えるタイプだって言ったニャン!今更言ってる事違うニャン」
「言ったけど違うの!こういう事じゃないの!あたしが何とかするから待って」
「素手じゃ危険ピョン!リリたん、悪いけど人呼ぶピョン!」
「いやぁ!全裸とかで絶対いや!リリアが退治するから待って!」
「じゃ、早くリリたんが戦うニャン!ネーコ達と戦ってる場合じゃないニャン!」
リリアがネーコ達ともめている間にマッドマンに囲まれて攻撃されだした。どこから湧いたかスライムも足元に忍んできている。
「いや!…ぅわ!… この!…」
リリアは囲まれながら懸命にパンチとキックを繰り出す。ズシャズシャと泥が弾けてマッドマンの動きは落ちるが、素手の格闘では非効率だ。
3人ともすっかり囲まれてしまった。
全裸勇者と下着のネーコ、ラビ対魔物と正しい構図になったが初動でつまづいたことも響きかなり劣勢。
「わ!足元にスライム!」
リリアがスライムを踏んで転倒、マッドハンドにつかまれマッドマン達にボコられ始めた。
「もうだめニャン!リリたん覚悟ニャン!人呼ぶニャン!」
「誰か助けてピョン!魔物ピョン!助けて!」
ネーコとラビが大声で助けを求め始めた


リリア達は馬車から設営した軒したで火を焚き食事をしている。
全員リリア以外は大爆笑中。リリアの機嫌は良くない。
「皆そんなに笑う事ないでしょ、結構危なかったんだから」
「おまえあの格好を見て笑わない奴がいるかよ」
「リリアらしいぜ!」
「まぁ、でもよく素手であれだけ耐えたな」
食事とお酒をしながらゲラゲラと笑っている。捧腹絶倒。

ネーコ達の声を聞いてコトロやブラック達が駆け付けた時にはリリア達は泥だらけでレスリング中だった。ランプの灯り程度では誰が人かマッドマンか全然見分けがつかない。
「誰が誰だ!」「全然わからん!」「気を付けろ、武器や魔法は使うな!素手て押さえつけろ」
「いやぁ!来ないで!… いやでも助けて!… 痛い!間違えないでよ!誰か私を殴ったわよ!ランプの火は消して!あ!でもやっぱり見えない!火を点けて!」
とにかくつじつまの合わないことを叫びながら、泥にまみれとんでもない姿で格闘していたリリア。
リリア達は乱闘の輪から連れ出され、残りはようやく武器と魔法で一気にお掃除された。

「大丈夫っすか先輩!」ブラックが声をかける。
「あぁ…もう… 後は女性陣でやっておくから、男性陣は解散かいさん!… ラビは汚れたタオルで良いから持って来て。全裸で何をやっているんですか」コトロがリリアの姿を見て呆れている。
「ごめん、こんなところで魔物が沸くと思っていなくて… 全裸で雨浴び中だったんだよ… あの… ランプを消してくれる?見えちゃうよ」リリアは今更恥ずかしがっている。
「とりあえず隠してください、今タオルを持ってきます。私は料理の支度していて後で丁寧に泥を落とす予定でしたけど皆せっっかく泥を落として着替えたところだったんですよ、気を抜きすぎですよ」コトロ。
「ネーコも言ったニャン、でもリリたんがナイスバディだから恥ずかしくないとか見られて興奮するタイプだから大丈夫とか言ってたニャン」
「リリたんとりあえずタオル持ってきたピョン。これで隠すピョン」
何とか騒ぎが収まる。


「まぁ、全裸で死ななくてよかったんじゃないか?」
コトロの作った煮込みを食べながら皆にいじられる、当分言われそうだ。
「それより誰かどさくさに紛れてリリアの胸をモミモミした奴がいたのよ、信じられないでしょ!」リリアが言う。
「誰がマッドマンだか見分けつかなかったから押さえつけんですよ、気のせいですよ」コトロ。
「いや、あれは絶対リリアの胸目的よ、確信犯よセクハラよ。どさくさに紛れた火事場泥棒。卑劣な犯行よ!」リリアが主張する。

「リリアは脳みそまで泥が詰まっちゃったみたいですね。大怪我しなかっただけ儲けもんですよ」
コトロは澄まして言うとリュートの準備をしだした。
「いいねぇ!このまま寝ようかと思ったけど、少し酒と歌を楽しむか」
誰からともなく声があがった。
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