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【118話】 捕縛なリリア
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山道いっぱいに立ち込めたスモークに向けてブリザが何発かブリザードの呪文を唱える。
男の上げる声と馬の悲鳴が響き、スモークが渦を巻く。
高所から道に下りて来たリリアは弓を構えながら距離を取って逃げる影がないか慎重に援護する。
「一気にいくわよ」短くブリザの通信がイヤリングから聞こえたと同時につむじ風が巻き起こりスモークが大気に散る。
視界の良くなった一瞬を突きフラジュとブリザが男を抑えた!
「一人捕まえた!もう一人!」声が響いてくる。
練習の成果、さすが!
と、リリアが思った瞬間、混乱していた馬の一頭が走り始めた。リリアの方に向かってくる。
「馬が逃げてくる!誰か引きずられてるよ!」リリアの通信。
馬が驚いて落馬した拍子に手綱が体に絡まったようだ。ダッシュで逃げる馬に人が引きずられている。
「ゴーレム!逃がさないで!」耳元から聞こえる。もとより逃がすつもりはない。
“馬を射るか!… いや、何とか止められるだろう。リリアは勇者の子よ!父ガウムドご自慢の娘。全然世の中に相手にされていない勇者だけど、勇者発祥の国、フリートではそれなりに働いて、それなりに認められて、最近はルーダリアでも王に勇者としての仕事を頼まれるご身分よ!成長しているの! あたしってば大器晩成型かしら?ここから目覚ましい成長を遂げて、すごい魔法とか使えるようになっちゃって、メッチャ恐ろしい魔物とか倒しちゃって、心の底から感謝されるルーダリアの大賢者勇者と呼ばれ、王子様と結婚して生きる伝説、ライブレジェンドとしてシンデレラストーリーよろしくな人生のレッドカーペットが待っているかも知れない人生。そしたらニャンとピョンは専属召使として宮中に置いてあげるの!コトロはマイ・ミュージックボックス。アリスはマイ・ドクター。オフェリアは近衛兵隊長ね。ペコも生意気だけどキッチンワーカーとお風呂焚き係で置いてあげる。リリアは優しいの! あ!ディルは生意気過ぎてどっかに左遷。左遷だけよ、リリアちゃんは慈悲深くもあるのよ!… で、なんだっけ?… そうそう、リリアにも勇者の血が流れているの。魔法にはまだ覚醒していないけど、魔物使いの血が目覚めているかも! 魔物は言い過ぎかも… でも、馬ぐらいは射らずに止めてみせる!これでもウッソ村では鶏と豚の餌係してた経験があるのよ!!”
「そこの馬! ドゥドゥ!ドゥドゥドゥ! ドゥドゥ… ドワッ!!」
リリアが手を広げて道に立ち塞がり暴走馬を制すが全く相手にされていない。眼中に無し、爆走を続ける馬。魔物どころか家畜もならせない!
国民的エア勇者!馬にとってもエア勇者リリア!
全然勇者の血が目覚めていないリリア。自分の無能さに目が覚める思い!
「いだいだいだいだいだいだいだいだい!!!」
とっさに男が絡まっている手綱に捉まって引きずられるリリア。
“足でも良いから射れば良かった!”後悔しながら男と一緒に引きずられる。
砂埃にまみれ石に襲われる中、リリアは夢中で男にしがみついて絡まっている手綱をダガーで切る。男はとっくに白目を剝いている。
リリアは道草の窪みでひっくり返っている。
手綱を切った勢いで投げ出されたのだ。
「痛い… 痛すぎる…」
ポーションどころではない!全身激痛!
男が路上に転がっているのが見える。恐らく失神中だろう。
馬は数メートルの所で立ち止まった。
“止まるなら最初から止まれよ、馬面野郎”リリアは静かに怒る。
「ゴーレム!リリア!しっかり、ヨークマーは捕まえた!リリアの男もフラジュが取り押さえた。残念ながら無名の小物ね。お金にならなかったけど小さな悪が一つ滅びたと思えば慰めにもなるわ。ゴーレムの怪我が無意味だけどお疲れ様。無駄な努力とは言い切れないけど、今度からはリスクと報酬をしっかり天秤にかけて行動してね。はい、回復のポーションよ」
ブリザがボロボロのリリアを抱き起す。言いたいこと言ってくれている。血だらけの全身に本音が突き刺さる。
「リ、リリアの… ポニーテール、擦り切れてない?…」
リリアは呟いてポーションに手を伸ばしたまま気を失った…
作戦「待ち合わせの日」は成功
お尋ね者ヨークマー“ザ・シャドウ”、ラノス“ビッグマウス”、フラビノ“ザ・シャター”
この三人の捕縛(dead or alive)は全員aliveで捕縛。
ルーダ・コートの街の保安部に引き渡された。後日司法局から報酬が出るそうだ。
リリアはお試し参戦でもあり、最後を手伝っただけなので、分け前とは言わないがそれなりに良いバイト料をもらえる。
「人違いの可能性がある中、冷静に動いてくれた、初めてにしては上出来」
大きな椅子に深く座ったビケットは満足そうだった。
リリアはここからルーダリアの保安部に通報して、ヨークマー達のアジトに向かる。
賞金稼ぎのビケットの邪魔はしないが、子分が無名だからといって見逃せない立場のリリアだ。
今まではバイト、ここからはマイ・ジョブ。
稼ぎにならない仕事はしないがビケットとブリザも悪を憎む心は同じだ。リリアに色々情報提供で協力してくれた。
リリアは捕まえた子分の自供を元に素早く準備を整えてルーダリアの保安部と一緒にアジト壊滅に向かう。
男の上げる声と馬の悲鳴が響き、スモークが渦を巻く。
高所から道に下りて来たリリアは弓を構えながら距離を取って逃げる影がないか慎重に援護する。
「一気にいくわよ」短くブリザの通信がイヤリングから聞こえたと同時につむじ風が巻き起こりスモークが大気に散る。
視界の良くなった一瞬を突きフラジュとブリザが男を抑えた!
「一人捕まえた!もう一人!」声が響いてくる。
練習の成果、さすが!
と、リリアが思った瞬間、混乱していた馬の一頭が走り始めた。リリアの方に向かってくる。
「馬が逃げてくる!誰か引きずられてるよ!」リリアの通信。
馬が驚いて落馬した拍子に手綱が体に絡まったようだ。ダッシュで逃げる馬に人が引きずられている。
「ゴーレム!逃がさないで!」耳元から聞こえる。もとより逃がすつもりはない。
“馬を射るか!… いや、何とか止められるだろう。リリアは勇者の子よ!父ガウムドご自慢の娘。全然世の中に相手にされていない勇者だけど、勇者発祥の国、フリートではそれなりに働いて、それなりに認められて、最近はルーダリアでも王に勇者としての仕事を頼まれるご身分よ!成長しているの! あたしってば大器晩成型かしら?ここから目覚ましい成長を遂げて、すごい魔法とか使えるようになっちゃって、メッチャ恐ろしい魔物とか倒しちゃって、心の底から感謝されるルーダリアの大賢者勇者と呼ばれ、王子様と結婚して生きる伝説、ライブレジェンドとしてシンデレラストーリーよろしくな人生のレッドカーペットが待っているかも知れない人生。そしたらニャンとピョンは専属召使として宮中に置いてあげるの!コトロはマイ・ミュージックボックス。アリスはマイ・ドクター。オフェリアは近衛兵隊長ね。ペコも生意気だけどキッチンワーカーとお風呂焚き係で置いてあげる。リリアは優しいの! あ!ディルは生意気過ぎてどっかに左遷。左遷だけよ、リリアちゃんは慈悲深くもあるのよ!… で、なんだっけ?… そうそう、リリアにも勇者の血が流れているの。魔法にはまだ覚醒していないけど、魔物使いの血が目覚めているかも! 魔物は言い過ぎかも… でも、馬ぐらいは射らずに止めてみせる!これでもウッソ村では鶏と豚の餌係してた経験があるのよ!!”
「そこの馬! ドゥドゥ!ドゥドゥドゥ! ドゥドゥ… ドワッ!!」
リリアが手を広げて道に立ち塞がり暴走馬を制すが全く相手にされていない。眼中に無し、爆走を続ける馬。魔物どころか家畜もならせない!
国民的エア勇者!馬にとってもエア勇者リリア!
全然勇者の血が目覚めていないリリア。自分の無能さに目が覚める思い!
「いだいだいだいだいだいだいだいだい!!!」
とっさに男が絡まっている手綱に捉まって引きずられるリリア。
“足でも良いから射れば良かった!”後悔しながら男と一緒に引きずられる。
砂埃にまみれ石に襲われる中、リリアは夢中で男にしがみついて絡まっている手綱をダガーで切る。男はとっくに白目を剝いている。
リリアは道草の窪みでひっくり返っている。
手綱を切った勢いで投げ出されたのだ。
「痛い… 痛すぎる…」
ポーションどころではない!全身激痛!
男が路上に転がっているのが見える。恐らく失神中だろう。
馬は数メートルの所で立ち止まった。
“止まるなら最初から止まれよ、馬面野郎”リリアは静かに怒る。
「ゴーレム!リリア!しっかり、ヨークマーは捕まえた!リリアの男もフラジュが取り押さえた。残念ながら無名の小物ね。お金にならなかったけど小さな悪が一つ滅びたと思えば慰めにもなるわ。ゴーレムの怪我が無意味だけどお疲れ様。無駄な努力とは言い切れないけど、今度からはリスクと報酬をしっかり天秤にかけて行動してね。はい、回復のポーションよ」
ブリザがボロボロのリリアを抱き起す。言いたいこと言ってくれている。血だらけの全身に本音が突き刺さる。
「リ、リリアの… ポニーテール、擦り切れてない?…」
リリアは呟いてポーションに手を伸ばしたまま気を失った…
作戦「待ち合わせの日」は成功
お尋ね者ヨークマー“ザ・シャドウ”、ラノス“ビッグマウス”、フラビノ“ザ・シャター”
この三人の捕縛(dead or alive)は全員aliveで捕縛。
ルーダ・コートの街の保安部に引き渡された。後日司法局から報酬が出るそうだ。
リリアはお試し参戦でもあり、最後を手伝っただけなので、分け前とは言わないがそれなりに良いバイト料をもらえる。
「人違いの可能性がある中、冷静に動いてくれた、初めてにしては上出来」
大きな椅子に深く座ったビケットは満足そうだった。
リリアはここからルーダリアの保安部に通報して、ヨークマー達のアジトに向かる。
賞金稼ぎのビケットの邪魔はしないが、子分が無名だからといって見逃せない立場のリリアだ。
今まではバイト、ここからはマイ・ジョブ。
稼ぎにならない仕事はしないがビケットとブリザも悪を憎む心は同じだ。リリアに色々情報提供で協力してくれた。
リリアは捕まえた子分の自供を元に素早く準備を整えてルーダリアの保安部と一緒にアジト壊滅に向かう。
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