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【102話】 見えるネーコと見えたリリアと
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リリアとネーコを乗せたロバ車は日差しの中の草原をゆっくり進む。
少し暖かくなってきて草原の香りも強くなってきた感じがする。
車手はリリア、一緒についてきたネーコは空になった荷台の上で寝っ転がっている。
「思ったより遅くなったニャン!」リリアがニャン語で話す。
「リリたん、何度も言うけどニャンの使い方間違ってるニャン。ニャン、ニヤン、ニァン、ンニャン、ニャァン、ニャーン、それぞれ使い方が違うニャン。この場合はニャン、ニャン」ネーコは寝っ転がって空を見ながら指導する。
「… 難しいわねぇ…遅くなったニャアン」
「違うニャン、ニャン、ニャン」
「遅くなったニャン、ニャーン、に… ニャァン」違いが良くわからないリリア。
「リリたん、センスないニャン」
ロバ二頭立ての馬車は草原を進む。
国の仕事から戻って来たリリアは次の日さっそく街の仕事に呼ばれた。
マチャネコさんがリリアに急ぎで配達を頼んできたのだ。
少し前、賊にキャラバンを壊滅させられてから、まだ人手が足りていないらしい。
ルーダ・コート近くの集落に麦芽と肥料の配達を頼まれた。
「人が本当にいなくてねぇ、リリアちゃんが運んでくれよ、一人護衛を誰か連れてっていいから。もちろんその分はお駄賃だすよ」
護衛ではなくてリリアが車手をして良いそうだ。たまには違ったことも気分転換になって良い。
その話をしたら
「ネーコ行くニャン。近くて安全、夜までに帰れそうだし、のんびりドライブ楽しそうニャン」
ネーコが珍しく付き合ってくれるらしい。
「たまにはネーコも城外活動が良いかもですね。別にバーの事は気にせず行ってきたら良いですよ」コトロも許可。
で、リリアとネーコは二人で出かけてきている。
ネーコにはリリアモデルの鎧を貸している。ネーコには多少大きいが問題ない。
もともと、ファッション重視で露出が多い鎧なのでネーコが装備しても結構良い具合。それに皮の盾を準備した。何かあったらネーコは戦わせず逃げ回っていればよい。もっとも、行く先は安全な地域だ。
リリアは一つ不満がある。
「馬車手が出来るかと思って楽しみにしていたのにロバ車じゃない… マチャネコさんって良い人だけど、時々こんな感じなのよねぇ」
ぱっと往復して終わりと思っていたが、ロバでは予想より2倍近い時間がかかりそう。
「坂道全然登れないし」
荷物の量とロバ力が合わず、急坂は見るからにロバがアップアップしている。
リリアは苦笑いしながら車を下りて歩く。
「リリたんは大きなオッパイとお尻分重いニャン、ネーコは軽いニャン」
ネーコは歩く気サラサラ無し。
「やっとテトリ湖の付近まで戻って来たか」
集落に配達が終わって帰り道。
太陽はお昼と日の入りの中間まで傾いた。
ネーコは麻袋の余りをお腹に抱え荷台で昼寝している。リリアモデルの鎧も脱いでいる。
「…… ん?… まさかね…」
リリアはロバ車を停めて右手の通り過ぎたテトリ湖側に向かう小道の方を振り返った。身を乗り出して振り返るが、木々と茂みが邪魔で小道の先がここからでは見えない。
ネーコを寝かせたまま降車して少し道を戻る。
「…… どうして… こんな所に…」
リリアは思わず呟いた。
道を少し戻って、テトリ湖への小道を確認に戻ったリリア。
消えかかった小道の奥の林の中に人影が二つある。通りすがりに見た人影は見間違いでは無かったようだ。
10歳くらいの男の子とはやりそれくらいの女の子が小道に立っている。兄妹だろうか?
家で過ごす普段着でまだ明るい時間なのに男の子はランタンを灯し手にしている。
ちょっと異様な雰囲気だ…
「ねぇ!どこの子?名前は?家は?お父さんとお母さんは?」リリアが呼びかける。
「…………」二人共答えず、身動ぎもしない。
「……… 二人共、お姉ちゃん、馬車を繋いだら戻ってくるからそこで待ってるのよ」
リリアは声をかけると馬車を木に繋ぎとめに戻った。
「君たち迷子?」
リリアが戻って来ると子供達は同じ場所に同じ格好で待っていた。
何も答えずじっと立っている。顔を上げ見上げているが、リリアを見ているといった感じでもない。
子供達は室内普段着でランタンを持っている以外に外見上変わったところはない。ただ…
「… お父さんとお母さんは?」この世の子ではないのだろうか?リリアは聞く。
子供達は振り返ると、小道を林の奥に歩き始めた。
「…… これって、ついて行くべきなのか…」
子供達は振り返ることなくスタスタと奥に歩いて行く。
「リリたん、ついて行く事無いニャン」突然ネーコに呼び止められた。
「びっくりしたぁ!! 喉から心臓が飛び出るかと思ったよ!」リリアが目を丸くしてネーコを振り返る。
ネーコは馬車が停車してあるので不思議に思って下りてきたようだ。
「あの子達は魂だけニャン、追いかける必要はないニャン。… 魂が残っている理由?… わからないニャン、わからない方が良いニャン。ネーコにはけっこう見えるニャン、いちいち気に留めていたらきりがないニャン。多分ラビたんもネーコ程ではないけど見えてるニャン。きり無いニャン」
「でも、何かあるわけでしょう…」
「あってもリリたんとネーコには力になれないニャン」
リリアはネーコに手を引かれて退散する。ネーコにしては珍しく気難しい顔をしていた。
再びロバ車は草原を進む。丘を越えたらルーダ・コートの城壁が見えてくる。
「リリたんまだこだわってるニャン?」隣に座ったネーコが聞く。
「… まぁ、子供がね… 今度行くだけ行ってみるよ」
「普段見えないリリたんに見えたなら、よっぽどかもニャン。行くなら腕利きプリースト、ファーザー、シャーマン、鎮魂士、連れてくニャン」
「ニャン子は何もできないの?」
「見えるだけニャン。わざわざ関わらないニャン」
「見えても何とも思わないの?」
「リリたんにしたら、道歩いている人間全員の問題を解決してまわるようなものニャン。無理ニャン。」
「……… そうかニャン、自分でやるよニャン」
「物好きニャン… 文法も発音も間違っているニャン」
「間違ってないなニャン」
「センスないニャン」
丘の上からルーダ・コートが見えてきた。
少し暖かくなってきて草原の香りも強くなってきた感じがする。
車手はリリア、一緒についてきたネーコは空になった荷台の上で寝っ転がっている。
「思ったより遅くなったニャン!」リリアがニャン語で話す。
「リリたん、何度も言うけどニャンの使い方間違ってるニャン。ニャン、ニヤン、ニァン、ンニャン、ニャァン、ニャーン、それぞれ使い方が違うニャン。この場合はニャン、ニャン」ネーコは寝っ転がって空を見ながら指導する。
「… 難しいわねぇ…遅くなったニャアン」
「違うニャン、ニャン、ニャン」
「遅くなったニャン、ニャーン、に… ニャァン」違いが良くわからないリリア。
「リリたん、センスないニャン」
ロバ二頭立ての馬車は草原を進む。
国の仕事から戻って来たリリアは次の日さっそく街の仕事に呼ばれた。
マチャネコさんがリリアに急ぎで配達を頼んできたのだ。
少し前、賊にキャラバンを壊滅させられてから、まだ人手が足りていないらしい。
ルーダ・コート近くの集落に麦芽と肥料の配達を頼まれた。
「人が本当にいなくてねぇ、リリアちゃんが運んでくれよ、一人護衛を誰か連れてっていいから。もちろんその分はお駄賃だすよ」
護衛ではなくてリリアが車手をして良いそうだ。たまには違ったことも気分転換になって良い。
その話をしたら
「ネーコ行くニャン。近くて安全、夜までに帰れそうだし、のんびりドライブ楽しそうニャン」
ネーコが珍しく付き合ってくれるらしい。
「たまにはネーコも城外活動が良いかもですね。別にバーの事は気にせず行ってきたら良いですよ」コトロも許可。
で、リリアとネーコは二人で出かけてきている。
ネーコにはリリアモデルの鎧を貸している。ネーコには多少大きいが問題ない。
もともと、ファッション重視で露出が多い鎧なのでネーコが装備しても結構良い具合。それに皮の盾を準備した。何かあったらネーコは戦わせず逃げ回っていればよい。もっとも、行く先は安全な地域だ。
リリアは一つ不満がある。
「馬車手が出来るかと思って楽しみにしていたのにロバ車じゃない… マチャネコさんって良い人だけど、時々こんな感じなのよねぇ」
ぱっと往復して終わりと思っていたが、ロバでは予想より2倍近い時間がかかりそう。
「坂道全然登れないし」
荷物の量とロバ力が合わず、急坂は見るからにロバがアップアップしている。
リリアは苦笑いしながら車を下りて歩く。
「リリたんは大きなオッパイとお尻分重いニャン、ネーコは軽いニャン」
ネーコは歩く気サラサラ無し。
「やっとテトリ湖の付近まで戻って来たか」
集落に配達が終わって帰り道。
太陽はお昼と日の入りの中間まで傾いた。
ネーコは麻袋の余りをお腹に抱え荷台で昼寝している。リリアモデルの鎧も脱いでいる。
「…… ん?… まさかね…」
リリアはロバ車を停めて右手の通り過ぎたテトリ湖側に向かう小道の方を振り返った。身を乗り出して振り返るが、木々と茂みが邪魔で小道の先がここからでは見えない。
ネーコを寝かせたまま降車して少し道を戻る。
「…… どうして… こんな所に…」
リリアは思わず呟いた。
道を少し戻って、テトリ湖への小道を確認に戻ったリリア。
消えかかった小道の奥の林の中に人影が二つある。通りすがりに見た人影は見間違いでは無かったようだ。
10歳くらいの男の子とはやりそれくらいの女の子が小道に立っている。兄妹だろうか?
家で過ごす普段着でまだ明るい時間なのに男の子はランタンを灯し手にしている。
ちょっと異様な雰囲気だ…
「ねぇ!どこの子?名前は?家は?お父さんとお母さんは?」リリアが呼びかける。
「…………」二人共答えず、身動ぎもしない。
「……… 二人共、お姉ちゃん、馬車を繋いだら戻ってくるからそこで待ってるのよ」
リリアは声をかけると馬車を木に繋ぎとめに戻った。
「君たち迷子?」
リリアが戻って来ると子供達は同じ場所に同じ格好で待っていた。
何も答えずじっと立っている。顔を上げ見上げているが、リリアを見ているといった感じでもない。
子供達は室内普段着でランタンを持っている以外に外見上変わったところはない。ただ…
「… お父さんとお母さんは?」この世の子ではないのだろうか?リリアは聞く。
子供達は振り返ると、小道を林の奥に歩き始めた。
「…… これって、ついて行くべきなのか…」
子供達は振り返ることなくスタスタと奥に歩いて行く。
「リリたん、ついて行く事無いニャン」突然ネーコに呼び止められた。
「びっくりしたぁ!! 喉から心臓が飛び出るかと思ったよ!」リリアが目を丸くしてネーコを振り返る。
ネーコは馬車が停車してあるので不思議に思って下りてきたようだ。
「あの子達は魂だけニャン、追いかける必要はないニャン。… 魂が残っている理由?… わからないニャン、わからない方が良いニャン。ネーコにはけっこう見えるニャン、いちいち気に留めていたらきりがないニャン。多分ラビたんもネーコ程ではないけど見えてるニャン。きり無いニャン」
「でも、何かあるわけでしょう…」
「あってもリリたんとネーコには力になれないニャン」
リリアはネーコに手を引かれて退散する。ネーコにしては珍しく気難しい顔をしていた。
再びロバ車は草原を進む。丘を越えたらルーダ・コートの城壁が見えてくる。
「リリたんまだこだわってるニャン?」隣に座ったネーコが聞く。
「… まぁ、子供がね… 今度行くだけ行ってみるよ」
「普段見えないリリたんに見えたなら、よっぽどかもニャン。行くなら腕利きプリースト、ファーザー、シャーマン、鎮魂士、連れてくニャン」
「ニャン子は何もできないの?」
「見えるだけニャン。わざわざ関わらないニャン」
「見えても何とも思わないの?」
「リリたんにしたら、道歩いている人間全員の問題を解決してまわるようなものニャン。無理ニャン。」
「……… そうかニャン、自分でやるよニャン」
「物好きニャン… 文法も発音も間違っているニャン」
「間違ってないなニャン」
「センスないニャン」
丘の上からルーダ・コートが見えてきた。
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