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【74話】 緩衝地帯手前
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旅ルートに復帰したリリア達は国境近くの村に着いていた。
4人でレンタワゴンをしたいのだが、田舎過ぎてそんな物はない。
国境まで徒歩1時間の村だが、一気に戦場感が上がっている。村ではあるが、柵が幾重にも取り囲み、直線的に村には入れないようになっている。櫓も立っているし、馬防柵、馬返しが立てられている。周りも荒涼としていて森や山の恵等と言った物は微塵も感じられない。兵士達も多ければ、村周囲も陣が設けられている。
「村で食事を準備してるのね、それとも兵士達の食事?」リリアが村の中央から煙が立ち上がるのを見つけたが、炊煙ではなく狼煙だそうだ。説明されて見回すと、周囲の峰や丘からも断続的に狼煙が上がっているのが見えた。
村は商人、冒険者、兵士が多く、賑わっているというより騒然として、ピリピリした緊張感に包まれている。リリア達が廃寺院に行った数日間、国境伝いに武力衝突があったらしい。
国境を接しているのはボッドフォートだが、ボッドフォートとルーダリアが直接衝突するとは信じ難い。噂を聞くとボッドフォート軍が緩衝地帯を超えて挑発してきたとか、武装キャラバンを誤認したとか、レジスタンスが国境近くの村に火を放ったのがきっかけだとか、色々騒いでいるが、とにかく、ボッドフォートとルーダリア軍が実際に戦闘したのは確からしい。
どうやら、国境の監視所でも出入国どころではない。リリア達も村に残って他の商人や冒険者達と状況を見守るしかない。
「けっこう派手にやりあったのね…」リリア達が話し合う。
国境線から続々と負傷兵が戻って来て、入れ替わるように陣を払った部隊が士気高く前線に向かって出陣していく。
資材を積んだ工作隊まで移動し始めたようだ。前線に新たに陣を建設するとしたら、かなり本格的。続いて食料荷駄隊が護衛を伴い出発していった。やばいぞ、大丈夫だろうか?
「あ!あれあれ!」リリアが空を指さす。
見上げるとコドモドラゴンが二匹飛び去るところだ。
「ルーダリア空軍の部隊ね」ペコが答える。
「2匹で部隊?」リリアとオフェリアが聞き返す。
「コドモドラゴンとはいえドラゴンよ。凄いじゃない」
そんなもんなのか… イメージと違ったが、初めて人がドラゴンを操るところを見れて少し感動。
夜、リリア達は宿屋の食堂でディナーミーティング中。
足止めされている人間で人は多い。ワイワイしていると言いたいが、少し違った雰囲気。リリア達もテーブルを囲んでまずは明日以降の相談が先決。
「個人の馬車は、ここから森の奥に入ってこっそり向こう側に抜けるみたいよ、一緒にいったらいいじゃない」リリアが商人達から聞いた情報を提供。
「個人商はそれが可能だから。その辺の小さな村で荷物を下ろして直ぐに戻ってくるならいいけど私たちは無理」ペコが答える。
「都まで行くなら、絶対どこかで入国の書類を確認される。ペコと私は魔法を使うし、書類が無かったら大問題よ」アリスが説明する。
「リリアだってルーダリア勇者に認められているんでしょ?国境破ったら外交問題になるんじゃない?」オフェリアも同意する。
「勇者なんて何のメリットも無いのにデメリットだけはちゃんと付いて回るのよね」リリアが牛肉のトマトソース煮を取りながらため息をつく。
食堂には当直終了の兵士達の姿も増えてきたようだ。負傷兵の姿もある。
四人掛けテーブルに座っているリリア達に兵士が声をかけてきたが、「取り込み中」と、ペコがシャットアウトした。リリアは無言でそれを見ている。
「ね、だいたいそんなに身分を確かめるの?」リリアが再び口を開いた。
「自国内ではあまりないけど、やっぱり帝都あたりまで行ったら、話し方、恰好で聞かれるわよ。ギルド証みせたら身元が即バレる。入国証の提示を求められるわよ」アリスが答える。
「非合法に出国したら帰りも非合法に戻るから、想像以上に面倒よ」ペコが付け足した。
「出国業務が進む事を願って緩衝地帯の監視所まで行くしかなわね」オフェリア。
結局は監視所が通常業務に戻ることを祈って、監視所まで行ってみるしかないようだ。恐らく、商人ギルドの馬車を優先的に通すだろうから出来れば、護衛でくっついて行くのが早いらしい。冒険者だけのグループ、個人商の荷馬車でやたらと荷物を積んでいる馬車は検査が厳しい場合があるらしい。
「そうとわかれば、皆で就職活動ね。商人達のテーブルに移動よ」リリアの気合が入りだした。
「また…」ペコに怒られるわよとオフェリアは言おうとしたが、
「よし、女性四人なら、アンニュイに髪をかき上げる昼下がりのバニーちゃん作戦よ」とペコが指令をだした。結構気合が入っている。
「お、おう!」リリアとアリスが答えた。オフェリアには何のことやらわからないが、とりあえず小さくガッツポーズしておいた。返事の仕方を見るとリリアも分かってないようだったが、リリアは生き生きとしている。
「お邪魔します!ご一緒させてね!」リリアがニコニコしながら、商人達のテーブルにさっと椅子を押し込んで座ると、ペコ、アリスもパッと椅子を用意してスペースに収まった。手際よい。オフェリアも慌てて近くの椅子を手に座る。
商人達は少し驚いた様だが、愛想の良い女性チームの出現に気を良くしたようだった。
食堂も昼間の出来事を忘れだんだん活気に満ちてきていた。
4人でレンタワゴンをしたいのだが、田舎過ぎてそんな物はない。
国境まで徒歩1時間の村だが、一気に戦場感が上がっている。村ではあるが、柵が幾重にも取り囲み、直線的に村には入れないようになっている。櫓も立っているし、馬防柵、馬返しが立てられている。周りも荒涼としていて森や山の恵等と言った物は微塵も感じられない。兵士達も多ければ、村周囲も陣が設けられている。
「村で食事を準備してるのね、それとも兵士達の食事?」リリアが村の中央から煙が立ち上がるのを見つけたが、炊煙ではなく狼煙だそうだ。説明されて見回すと、周囲の峰や丘からも断続的に狼煙が上がっているのが見えた。
村は商人、冒険者、兵士が多く、賑わっているというより騒然として、ピリピリした緊張感に包まれている。リリア達が廃寺院に行った数日間、国境伝いに武力衝突があったらしい。
国境を接しているのはボッドフォートだが、ボッドフォートとルーダリアが直接衝突するとは信じ難い。噂を聞くとボッドフォート軍が緩衝地帯を超えて挑発してきたとか、武装キャラバンを誤認したとか、レジスタンスが国境近くの村に火を放ったのがきっかけだとか、色々騒いでいるが、とにかく、ボッドフォートとルーダリア軍が実際に戦闘したのは確からしい。
どうやら、国境の監視所でも出入国どころではない。リリア達も村に残って他の商人や冒険者達と状況を見守るしかない。
「けっこう派手にやりあったのね…」リリア達が話し合う。
国境線から続々と負傷兵が戻って来て、入れ替わるように陣を払った部隊が士気高く前線に向かって出陣していく。
資材を積んだ工作隊まで移動し始めたようだ。前線に新たに陣を建設するとしたら、かなり本格的。続いて食料荷駄隊が護衛を伴い出発していった。やばいぞ、大丈夫だろうか?
「あ!あれあれ!」リリアが空を指さす。
見上げるとコドモドラゴンが二匹飛び去るところだ。
「ルーダリア空軍の部隊ね」ペコが答える。
「2匹で部隊?」リリアとオフェリアが聞き返す。
「コドモドラゴンとはいえドラゴンよ。凄いじゃない」
そんなもんなのか… イメージと違ったが、初めて人がドラゴンを操るところを見れて少し感動。
夜、リリア達は宿屋の食堂でディナーミーティング中。
足止めされている人間で人は多い。ワイワイしていると言いたいが、少し違った雰囲気。リリア達もテーブルを囲んでまずは明日以降の相談が先決。
「個人の馬車は、ここから森の奥に入ってこっそり向こう側に抜けるみたいよ、一緒にいったらいいじゃない」リリアが商人達から聞いた情報を提供。
「個人商はそれが可能だから。その辺の小さな村で荷物を下ろして直ぐに戻ってくるならいいけど私たちは無理」ペコが答える。
「都まで行くなら、絶対どこかで入国の書類を確認される。ペコと私は魔法を使うし、書類が無かったら大問題よ」アリスが説明する。
「リリアだってルーダリア勇者に認められているんでしょ?国境破ったら外交問題になるんじゃない?」オフェリアも同意する。
「勇者なんて何のメリットも無いのにデメリットだけはちゃんと付いて回るのよね」リリアが牛肉のトマトソース煮を取りながらため息をつく。
食堂には当直終了の兵士達の姿も増えてきたようだ。負傷兵の姿もある。
四人掛けテーブルに座っているリリア達に兵士が声をかけてきたが、「取り込み中」と、ペコがシャットアウトした。リリアは無言でそれを見ている。
「ね、だいたいそんなに身分を確かめるの?」リリアが再び口を開いた。
「自国内ではあまりないけど、やっぱり帝都あたりまで行ったら、話し方、恰好で聞かれるわよ。ギルド証みせたら身元が即バレる。入国証の提示を求められるわよ」アリスが答える。
「非合法に出国したら帰りも非合法に戻るから、想像以上に面倒よ」ペコが付け足した。
「出国業務が進む事を願って緩衝地帯の監視所まで行くしかなわね」オフェリア。
結局は監視所が通常業務に戻ることを祈って、監視所まで行ってみるしかないようだ。恐らく、商人ギルドの馬車を優先的に通すだろうから出来れば、護衛でくっついて行くのが早いらしい。冒険者だけのグループ、個人商の荷馬車でやたらと荷物を積んでいる馬車は検査が厳しい場合があるらしい。
「そうとわかれば、皆で就職活動ね。商人達のテーブルに移動よ」リリアの気合が入りだした。
「また…」ペコに怒られるわよとオフェリアは言おうとしたが、
「よし、女性四人なら、アンニュイに髪をかき上げる昼下がりのバニーちゃん作戦よ」とペコが指令をだした。結構気合が入っている。
「お、おう!」リリアとアリスが答えた。オフェリアには何のことやらわからないが、とりあえず小さくガッツポーズしておいた。返事の仕方を見るとリリアも分かってないようだったが、リリアは生き生きとしている。
「お邪魔します!ご一緒させてね!」リリアがニコニコしながら、商人達のテーブルにさっと椅子を押し込んで座ると、ペコ、アリスもパッと椅子を用意してスペースに収まった。手際よい。オフェリアも慌てて近くの椅子を手に座る。
商人達は少し驚いた様だが、愛想の良い女性チームの出現に気を良くしたようだった。
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