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【64.5話】 ブアマとリリア ※63.5の続き※
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「……ぅう…」
リリアは呻きながら目を覚ました。少しの間、気絶していたようだ。
“あたし、何で外で寝てるの…”少し混乱する。
「ギ!ィ…」全身に痛みが走って記憶が戻ってきた。
“あたし、切られたんだ…”辺りには血溜まりが出来ている。
痛みを堪え、震えながら右手で体力のポーションをベルトポーチから何とか取り出す。左腕は激痛で動かせない。
「…ぅぐ… うぅ…」
脳みそに突き刺さるような痛みに耐え、泣きながらビンの蓋を開けようとするが片手ではどうにも開かない。指先は血でヌルヌルしている。
ポーションのビンを置き、再び右手はベルトポーチへ。左手は痙攣している。
ポーチから取り出したのは幻想薬の小瓶。幻想薬は、はめ込み栓になっているのを思い出したのだ。
“できれば、飲みたくないけど…”ちょっと頭を過るがそんな場合ではない。出血が続き、喉の渇きも覚える。
栓を咥えビンから抜くと、幻想薬を慎重に半分飲み、少し楽な姿勢をとった。
「…………」
少し痛みが和らいだようだ。それでも肩の激痛をなんとかこらえながら、両手でしっかり体力ポーションの蓋を外し、ようやく口に流し込む。
「こ、これでなんとか…」
呟いて、再び楽な姿勢になる。体がジワーっと温かくなり、ポーションが効いてきたのがわかった。まだ、激痛だったが安心したのかリリアは再び気を失った…
「………」
つかの間の失神状態にあったリリアは目を覚ました。
痛みもだいぶひき、まだまだ出血しているが傷も治りかけている。
体力ポーションと気力ポーションをそれぞれ飲み、一定時間回復効果持続のポーションも飲む。持続ポーションは高価だが、今はそれどころではない。
「ブアマ…」
向こうで昏倒しているブアマのもとへ…
傷は治り、体力も回復してきているが、失血のショックがあるせいか、立ち上がるとスーっと目の前が暗くなり失神しかける。
リリアはヨロヨロとブアマのところへ。
「ブアマ… ブアマ…」呻きながら、うつ伏していたブアマを仰向ける。血の池の中。
仰向けたが、生死の判別もつかない。リリアもショック状態で何をしたらよいのかわからず茫然としている。
「…… そうか、脈」
ようやく脈をとるリリア。
「………………………………生きている?」
リリアはブアマを少し起こしてやり、口からポーションを流してみる。
「ブアマ、リリアよ。しっかりして… 起きて…」
呼びかけてみるが反応がない。起きて飲んでもらわないと回復が間に合いそうもない。
「ねぇ… ブアマ… 起きてよ、お願いよ… こんなの嫌よ…ダメよ…」
泣きながら訴えるリリア。口になんとか薬を流すが失神していてはいくらも胃に届かない。
“何でこんな酷い事に… あれっぽっちのお金の為に…人間が一番恐ろしいじゃないか…”ふとリリアの頭を過る。
脈も一段と弱くなってきた。ほとんどわからない…
「ねぇ、ダメよ… こんな最後にしちゃダメよ… ねぇお家に帰りましょう」
リリアは体力、気力、幻想薬、これらを交互に少しずつ口から流す、どれでもよいから効いてくれ。
ブアマが気がつき、少し目を開いた。
「ブアマ!リリアよ!わかる!あなた今、切られて重傷なの!薬飲んで!」
リリアは体力ポーションをブアマの口に運ぶ。もう力が残っていないのか、ショックからかあまり飲んでくれない。咽ない程度に流し込む。
「………」ブアマの口が動いた、何か言っている。
「なに?リリアよ!しっかりして!薬飲んで!」リリアが呼びかける。反応が悪い。
「………」ブアマが何かを言っている。声にならず聞こえない。
「なに?薬で回復するわよ… なに?」
リリアが呼びかけて、口元に耳を寄せる。
「エスタル… 愛してる… 僕の手を…」ブアマが言い、ちょっと手が上がった。
「ブアマ、お願い、生きて。こんな形で逝けないじゃない!お願い生きて!」
リリアは手を取ると必死に呼びかけた。
「エスタル… 僕の手を… 愛してる…」小さく呟く。時がきてしまったよう。
「……… ブアマ… あたしよ…………… エスタルよ… あたしも愛してる… ずっと傍にいるわ…」ボロボロ涙を流して手を握るリリア。
「僕達一緒だ… 怖くない…」ブアマは消え入りそうに呟くと旅立っていった。
リリアはブアマの手をとったまま再び気を失った…
夕刻のゾール村で騒ぎが起きていた。
子供達が農作業をしているところにきて、すぐそこの道で人が倒れていると言うのだ。
「本当だ、人が行き倒れてる」
「男と女だ、血だらけじゃないか!」
「シェリフに知らせてこい」
「酷いけがだ、薬、いや、教会のシスターかプリーストも呼べ」
「気絶しているぞ、担架か、女は教会まで負ぶっていこう」
「こっちの男も… ダメだ… 絶命している…」
リリアは呻きながら目を覚ました。少しの間、気絶していたようだ。
“あたし、何で外で寝てるの…”少し混乱する。
「ギ!ィ…」全身に痛みが走って記憶が戻ってきた。
“あたし、切られたんだ…”辺りには血溜まりが出来ている。
痛みを堪え、震えながら右手で体力のポーションをベルトポーチから何とか取り出す。左腕は激痛で動かせない。
「…ぅぐ… うぅ…」
脳みそに突き刺さるような痛みに耐え、泣きながらビンの蓋を開けようとするが片手ではどうにも開かない。指先は血でヌルヌルしている。
ポーションのビンを置き、再び右手はベルトポーチへ。左手は痙攣している。
ポーチから取り出したのは幻想薬の小瓶。幻想薬は、はめ込み栓になっているのを思い出したのだ。
“できれば、飲みたくないけど…”ちょっと頭を過るがそんな場合ではない。出血が続き、喉の渇きも覚える。
栓を咥えビンから抜くと、幻想薬を慎重に半分飲み、少し楽な姿勢をとった。
「…………」
少し痛みが和らいだようだ。それでも肩の激痛をなんとかこらえながら、両手でしっかり体力ポーションの蓋を外し、ようやく口に流し込む。
「こ、これでなんとか…」
呟いて、再び楽な姿勢になる。体がジワーっと温かくなり、ポーションが効いてきたのがわかった。まだ、激痛だったが安心したのかリリアは再び気を失った…
「………」
つかの間の失神状態にあったリリアは目を覚ました。
痛みもだいぶひき、まだまだ出血しているが傷も治りかけている。
体力ポーションと気力ポーションをそれぞれ飲み、一定時間回復効果持続のポーションも飲む。持続ポーションは高価だが、今はそれどころではない。
「ブアマ…」
向こうで昏倒しているブアマのもとへ…
傷は治り、体力も回復してきているが、失血のショックがあるせいか、立ち上がるとスーっと目の前が暗くなり失神しかける。
リリアはヨロヨロとブアマのところへ。
「ブアマ… ブアマ…」呻きながら、うつ伏していたブアマを仰向ける。血の池の中。
仰向けたが、生死の判別もつかない。リリアもショック状態で何をしたらよいのかわからず茫然としている。
「…… そうか、脈」
ようやく脈をとるリリア。
「………………………………生きている?」
リリアはブアマを少し起こしてやり、口からポーションを流してみる。
「ブアマ、リリアよ。しっかりして… 起きて…」
呼びかけてみるが反応がない。起きて飲んでもらわないと回復が間に合いそうもない。
「ねぇ… ブアマ… 起きてよ、お願いよ… こんなの嫌よ…ダメよ…」
泣きながら訴えるリリア。口になんとか薬を流すが失神していてはいくらも胃に届かない。
“何でこんな酷い事に… あれっぽっちのお金の為に…人間が一番恐ろしいじゃないか…”ふとリリアの頭を過る。
脈も一段と弱くなってきた。ほとんどわからない…
「ねぇ、ダメよ… こんな最後にしちゃダメよ… ねぇお家に帰りましょう」
リリアは体力、気力、幻想薬、これらを交互に少しずつ口から流す、どれでもよいから効いてくれ。
ブアマが気がつき、少し目を開いた。
「ブアマ!リリアよ!わかる!あなた今、切られて重傷なの!薬飲んで!」
リリアは体力ポーションをブアマの口に運ぶ。もう力が残っていないのか、ショックからかあまり飲んでくれない。咽ない程度に流し込む。
「………」ブアマの口が動いた、何か言っている。
「なに?リリアよ!しっかりして!薬飲んで!」リリアが呼びかける。反応が悪い。
「………」ブアマが何かを言っている。声にならず聞こえない。
「なに?薬で回復するわよ… なに?」
リリアが呼びかけて、口元に耳を寄せる。
「エスタル… 愛してる… 僕の手を…」ブアマが言い、ちょっと手が上がった。
「ブアマ、お願い、生きて。こんな形で逝けないじゃない!お願い生きて!」
リリアは手を取ると必死に呼びかけた。
「エスタル… 僕の手を… 愛してる…」小さく呟く。時がきてしまったよう。
「……… ブアマ… あたしよ…………… エスタルよ… あたしも愛してる… ずっと傍にいるわ…」ボロボロ涙を流して手を握るリリア。
「僕達一緒だ… 怖くない…」ブアマは消え入りそうに呟くと旅立っていった。
リリアはブアマの手をとったまま再び気を失った…
夕刻のゾール村で騒ぎが起きていた。
子供達が農作業をしているところにきて、すぐそこの道で人が倒れていると言うのだ。
「本当だ、人が行き倒れてる」
「男と女だ、血だらけじゃないか!」
「シェリフに知らせてこい」
「酷いけがだ、薬、いや、教会のシスターかプリーストも呼べ」
「気絶しているぞ、担架か、女は教会まで負ぶっていこう」
「こっちの男も… ダメだ… 絶命している…」
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