勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【62話】 大魔クモ退治

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リリア達は祠のある高台に上がって来た。
メンバーはリリア、オフェリアとオーガ二名、それとリーダーを含むシェリフ3名。
シェリフ達は「安全確認のため」「後学のため」とリリアがどう魔物を退治するのか見学にきた。
バリスタが持ち込めないような急な山道を上がってくると、伐採され平らな土地にでる。その中央に小さな倉庫程度の祠が祭ってあり、その後ろに洞穴がある。ここにクモが隠れているらしい。
洞穴の入り口は結構大きく馬車一台は余裕で通れそう。話を聞くとほぼ真っすぐ30m程の長い洞穴でこの祠とこの穴の奥に魔物除けの魔法石を置かないといけないらしい。

「じゃ、手筈通り準備ね」着くとリリアは指示をだした。
「どうするつもりだ?」リーダーが聞く。
「まだ何も見てないじゃない」リリアは弓を手にスタスタと祠の側まで行って周囲の確認をして戻ってきた。
リリアが戻って来て言う。
「リーダーと見学の人達、準備くらい手伝ってよ、手ぶらでここまで上がって来て」
そして続ける。
「確かにあれは大魔クモの仕業ね。でも、まだ実際に穴にいるとは限らないけどね。もういないかも…まだいるかも。穴の中だけとも言えないから周囲も警戒よ。祠と洞穴の間は誰も行かないでね。パっと出て来てパクっと取られるか、クモの糸でピっと絡め取られるわよ。あたしとオフェリアで祠の屋根に上がるから。古紙と布を巻いて火矢を作ったら松明と油持って屋根に上がる。ロープを屋根にかけるから、力自慢のお二人さんロープで引っ張り上げてね。合図したら地面をでっかいトンカチでガンガンして。そう… やつは振動で獲物を察知よ。居れば出てくるはず。出てきたら最後よ。リリアちゃんの怒りのファイアー・アローを叩き込んでやるわ。矢が当たったら… 当然当たるけどね… 当たったら穴に戻るはず。そしたら祠から下りて適当に追い打ちするわ。明日までには穴で死んでるか弱ってるはずよ。飛び出して来て… 来ないと思うけど… 出てきたら皆さんよろしくね」

準備が出来るとリリアは
「OKね… さてっと… おやつ食べましょう」と言って四人にバナナを配って食べだした。
「え?… リーダー達の分?だって後になってついて来たじゃない、ないよ」と、澄ましてバナナを食べている。


祠の屋根に上がったリリアとオフェリア。
「意外に角度があるわねぇ… 足場も悪いし… あたしってば腕が筋肉痛なのよねぇ…」リリアは独り言を言いながら3射程試し打ちをして
「よし、オフェリア、松明に火をつけて… 矢を油壺に… そうそう… 点火した火矢をリリアが射るから次々と同じ要領で…」
準備と手筈は整った。
因みに屋根に上がる時、ロープをかけてオーガに引き上げてもらっていたら
「バキ」っと屋根の一部が壊れて、リリアはお尻から落下した。
「ぶげっ!」とか少々間抜けな声をあげて痛がっていたがお尻を押さえながら立ち上がりしげしげと屋根を眺めて、おもむろに指を差して
「あれ、はじめっから、ああだったことね」と言うと、再びロープをかけて登った。

とにかく作戦開始。
「さぁ、やるわよ。地面ドンドンやって」リリアは屋根から下を覗きながら言うと、地面ドンドンする係りが地面をドンドンしだした。
「……居れば出てくるはずだけどねぇ…」
ちょっと待機。
「… いるねぇ、いるいる」リリアが呟く。
オフェリアは洞穴を凝視するが、よくわからない。本当にわかるのか?…
「あ!本当、出て来た…」オフェリアが呟いた。
見ると、穴の入り口に薄暗い影が動いている、いくつもの目が鈍く光る。
クモがツツっと前に出る、日差しに足が見えた。ドクドクしくケバケバしい。
「オフェリア、次の矢を用意しておいて」リリアは静かに言うが、まだ構えない。もう少し引き出すのだろう。
またクモがツツっと前に出た。顔がギリギリ日差しに出るか出ないか。
“もう、2メーターくらい前に…”とオフェリアが思った時。
「ドッ」と矢がクモの顔面に刺さった。
「次よ!」リリアが呼ぶ。
オフェリアが慌てて火の点いた矢を渡すと
「ドッ」とあっという間に二本目の矢がクモの顔を捉えていた。
まだ火の点いた矢を刺したままクモは穴の奥へ後退して行く。
「フェリ、次よ次!」
オフェリアが見るとリリアはすでに屋根から下りている。オフェリアは慌てて手にしていた火矢を渡すと、矢筒と松明を屋根から投げ下ろし油壺を手にロープで屋根から下りてリリアを追いかける。

穴に逃げ込んだクモを30射程目くら射ちしたリリア。
「いいんじゃない?あいつ明日には死んでるわよ。オフェリア、弓を貸すから5本くらい練習しないさいよ」とオフェリアに弓を差し出した。


お仕事終了。撤収準備。
「手際は良かったが、クモは死んだのか?」リーダーが聞く。
「見たでしょ。死ぬわよ。今、危険を冒して穴に入る事もないでしょ、それとも自分で確かめる?… でしょ… じゃ、明日、おばばも連れて来たらいいわよ。あ、あたし入らないから。確認と掃除は誰かお願いね。あたし仕事したわ。クモとか蛇とか嫌いだから」マイペースリリア。

準備出来ると一同下山開始。
リリアも荷物を担いで降りていく。
「屋根、最初っからぶっ壊れていたわねぇ」リリアが大きい声で言う。
静かな山中にバフダン岩の破裂する音が響いて来た。
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