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【51.5話】 セールスガール・リリア
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リリアはルーダ・コートの街にあるリアルゴールドとハンズマンが仲良く並ぶ店頭先でリアルゴールドの店長と立ち話中。律儀に街中でリリアは極力リリアモデルセットを着て出歩くことにしている。今日は先ほどまで城外で別ギルドの知り合いと剣盾の練習をしての帰りである。店の前にはリリアモデルのセットがディスプレイされ、リリアのポスターも張ってある。
最近ではリアルゴールドやハンズマンのお店に立ち寄りスタッフとおしゃべりをする。
待遇も良いし、良い情報交換にもなる有意義な時間潰し。リリアも少しでも宣伝活動になればといったところ。
因みにリリア本人が店先に立っているが、行きかう人ほとんど誰にも気にされていない。
「けっこう、リリアモデル売れてるんだよ」店長がにこやかにリリアに話す。
剣、盾等、性別を選ばない装備はちょこちょこ売れているようだ。
「剣はどうみても男性用だものねぇ」と店長。
「そうよ、リリアには重すぎるわよ。この剣を女性モデルにするには無理がある」愚痴… リリアの忌憚のない意見。
店長の情報はルーダ・コートのお店に限りだが、鎧セット含むフルセットも男性と女性に1セットづつ売れたとのこと。
店頭で足を止めてリリアモデルを見ていた冒険者らしきカップルがリリアの姿に気づき、チラチラと振り返ってくる。
「男が買って行ったの?」とリリアが不思議がると
「あぁ、何でもかなり気に入っていたみたいで、飾っとくらしい」との事。
「飾る?使わない目的でお金出す人いるのね…」必要に応じて買うか買うために稼ぐリリアにとっては斬新なアイディア。
「ルーダ港の方はどうかわからんが、こっちではレプリカは4セット売れてるよ、男性客だけどね」
「レプリカ?… あぁ、安いやつねぇ。あれは胸とお尻のサイズはリリアサイズで材質も装備としては使えないんでしょ?」
安いとはいえ、結構な値段だ、装備として使えない装備を買う人がいるのかと思っていたが、実際に買う人がいるとは…
「貴族とかお金持っている人は、変わった物を鑑賞目的で購入するからね。良くも悪くも話題性に富んだ試合をリリアがしてくれるお陰だ」
店長は笑うが、リリアにとって試合自体は恥ずかしくてしょうがない内容、リリアは聞きながら苦笑い…
「ちょっと失礼」店長が呼ばれて店に入って行った。
「あのぅ… ちょっと良いですか?…」
先ほどからリリアモデルとリリアを交互に見ていた若いカップルだ。冒険者カップル。
“ルーダ港ならいざ知らず、ルーダ・コートでもリリアちゃんってば、少し有名人になってきたのね。リリアモデルは値が張るから、若いカップルに買えるかしら?だけど、リリアはお客を大切にするのよ。そもそもリリアの評判は国の評判!笑顔よ笑顔!”
「応援ありがとう、あたし頑張るわ!」笑顔でカップルの手を握って握手をするリリア。
「…… はぁ… あの、この装備セット…」女性が指を差す。
「はいはい、リリアモデルの勇者装備セットね。商人ギルド・リアルゴールドと工芸ギルド・ハンズマンが最先端技術を結晶させて作った、機能性、デザイン性を兼ね備えた逸品よ!ありがとうリアルゴールド、ハンズマン」
インタビュー用に叩き込まれた紋切り型の挨拶を流れるようにしゃべるリリア。
「… 私、この…」
「試着?… 遠慮しないで!あたしはお姉さんより… その…… 何て言うのかしらねぇ… 胸とお尻の… 主張が強いけど、販売品は一般サイズに作られていて、お姉さんの… 控えめタイプって言うのかしら?… 大人しめ… 遠慮深い感じでもフィットするデザインよ。 いやいや、遠慮がちが悪いとかって話ではないのよ、大勢にチヤホヤされなくても素敵な彼氏さんいるじゃない、相手の欠点も盲目にしてくれる本当の愛!」リリアは渾身のセールストークを展開する、勇者は商売に向かないって言葉があるが… 確かに…
「………… いや、あの…」困惑気味のカップル。いや、怒り出さないだけ胸はどうだか知らないが、人間としてリリアより大きいかも知れない。
リリアは笑みを湛えリリアなりのセールストークを続ける。
「あ、でもねぇ、一つだけ気になるのよねぇ… ここ、これよこれ。これで今日から貴女も勇者!ってこの文句?実際、勇者になってみて思ったけど、人が考えるほど勇者って簡単じゃないのよね、この装備を着けただけで勇者と同じ働きが出来るなんて、あたしとしては簡単に考えて欲しくないって言うのかな?何か軽々しく勇者を語って欲しくないっていうの?誰かしらねこんな販売文句を考えた人… ほんっと、一言文句言ってやりたわよ」
「いや… 剣を見せていただきたくて…」女性が言う。
「あ! はいはい、剣ね!あれね、例のやつね、了解了解、ルーダ港だとけっこうリクエストされるけど、ルーダ・コートでは初めてね、サービスして張り切るわ…
勇者リリア参上!商人ギルド・リアルゴールと工芸ギルド・ハンズマンの共同開発と無償サポートにより授かった勇者リリアモデル(女性版)のこの剣で成敗してくれる」
そして剣をキラーンと抜いて見せる。カップルは無反応… というか迷惑そう…
“…… 何よ、結構冷めてるわねこのカップル、せっかくの大サービスなのに…”リリアは不満。
「毎度ありがとうございます、6ヶ月点検は無料研磨付きです」とリリアモデルの剣を買ったカップルをにこやかに送るリアルゴールドの店員さん。
カップルは
「あの女店員、なりきり過ぎだろう、全然話が進まなかった」
「剣を売ってくれれば、誰だか知った事かっての」
と、リリアを店頭販売員としか思っていない。
そのリリアは、商談中に剣を振り上げたのを巡回兵に見られた事により、威力押し売り罪の疑いで衛兵達と揉めている最中。
カップルがリリアを振り返ると
「だから、あたし売り子じゃないわよ!だから名前はリリア!本物の国公認の勇者リリアなんだから!これを見なさいよ!」っと衛兵にギルド証をぶん投げているところだった。
まもなく、街でも収穫祭の時期。
最近ではリアルゴールドやハンズマンのお店に立ち寄りスタッフとおしゃべりをする。
待遇も良いし、良い情報交換にもなる有意義な時間潰し。リリアも少しでも宣伝活動になればといったところ。
因みにリリア本人が店先に立っているが、行きかう人ほとんど誰にも気にされていない。
「けっこう、リリアモデル売れてるんだよ」店長がにこやかにリリアに話す。
剣、盾等、性別を選ばない装備はちょこちょこ売れているようだ。
「剣はどうみても男性用だものねぇ」と店長。
「そうよ、リリアには重すぎるわよ。この剣を女性モデルにするには無理がある」愚痴… リリアの忌憚のない意見。
店長の情報はルーダ・コートのお店に限りだが、鎧セット含むフルセットも男性と女性に1セットづつ売れたとのこと。
店頭で足を止めてリリアモデルを見ていた冒険者らしきカップルがリリアの姿に気づき、チラチラと振り返ってくる。
「男が買って行ったの?」とリリアが不思議がると
「あぁ、何でもかなり気に入っていたみたいで、飾っとくらしい」との事。
「飾る?使わない目的でお金出す人いるのね…」必要に応じて買うか買うために稼ぐリリアにとっては斬新なアイディア。
「ルーダ港の方はどうかわからんが、こっちではレプリカは4セット売れてるよ、男性客だけどね」
「レプリカ?… あぁ、安いやつねぇ。あれは胸とお尻のサイズはリリアサイズで材質も装備としては使えないんでしょ?」
安いとはいえ、結構な値段だ、装備として使えない装備を買う人がいるのかと思っていたが、実際に買う人がいるとは…
「貴族とかお金持っている人は、変わった物を鑑賞目的で購入するからね。良くも悪くも話題性に富んだ試合をリリアがしてくれるお陰だ」
店長は笑うが、リリアにとって試合自体は恥ずかしくてしょうがない内容、リリアは聞きながら苦笑い…
「ちょっと失礼」店長が呼ばれて店に入って行った。
「あのぅ… ちょっと良いですか?…」
先ほどからリリアモデルとリリアを交互に見ていた若いカップルだ。冒険者カップル。
“ルーダ港ならいざ知らず、ルーダ・コートでもリリアちゃんってば、少し有名人になってきたのね。リリアモデルは値が張るから、若いカップルに買えるかしら?だけど、リリアはお客を大切にするのよ。そもそもリリアの評判は国の評判!笑顔よ笑顔!”
「応援ありがとう、あたし頑張るわ!」笑顔でカップルの手を握って握手をするリリア。
「…… はぁ… あの、この装備セット…」女性が指を差す。
「はいはい、リリアモデルの勇者装備セットね。商人ギルド・リアルゴールドと工芸ギルド・ハンズマンが最先端技術を結晶させて作った、機能性、デザイン性を兼ね備えた逸品よ!ありがとうリアルゴールド、ハンズマン」
インタビュー用に叩き込まれた紋切り型の挨拶を流れるようにしゃべるリリア。
「… 私、この…」
「試着?… 遠慮しないで!あたしはお姉さんより… その…… 何て言うのかしらねぇ… 胸とお尻の… 主張が強いけど、販売品は一般サイズに作られていて、お姉さんの… 控えめタイプって言うのかしら?… 大人しめ… 遠慮深い感じでもフィットするデザインよ。 いやいや、遠慮がちが悪いとかって話ではないのよ、大勢にチヤホヤされなくても素敵な彼氏さんいるじゃない、相手の欠点も盲目にしてくれる本当の愛!」リリアは渾身のセールストークを展開する、勇者は商売に向かないって言葉があるが… 確かに…
「………… いや、あの…」困惑気味のカップル。いや、怒り出さないだけ胸はどうだか知らないが、人間としてリリアより大きいかも知れない。
リリアは笑みを湛えリリアなりのセールストークを続ける。
「あ、でもねぇ、一つだけ気になるのよねぇ… ここ、これよこれ。これで今日から貴女も勇者!ってこの文句?実際、勇者になってみて思ったけど、人が考えるほど勇者って簡単じゃないのよね、この装備を着けただけで勇者と同じ働きが出来るなんて、あたしとしては簡単に考えて欲しくないって言うのかな?何か軽々しく勇者を語って欲しくないっていうの?誰かしらねこんな販売文句を考えた人… ほんっと、一言文句言ってやりたわよ」
「いや… 剣を見せていただきたくて…」女性が言う。
「あ! はいはい、剣ね!あれね、例のやつね、了解了解、ルーダ港だとけっこうリクエストされるけど、ルーダ・コートでは初めてね、サービスして張り切るわ…
勇者リリア参上!商人ギルド・リアルゴールと工芸ギルド・ハンズマンの共同開発と無償サポートにより授かった勇者リリアモデル(女性版)のこの剣で成敗してくれる」
そして剣をキラーンと抜いて見せる。カップルは無反応… というか迷惑そう…
“…… 何よ、結構冷めてるわねこのカップル、せっかくの大サービスなのに…”リリアは不満。
「毎度ありがとうございます、6ヶ月点検は無料研磨付きです」とリリアモデルの剣を買ったカップルをにこやかに送るリアルゴールドの店員さん。
カップルは
「あの女店員、なりきり過ぎだろう、全然話が進まなかった」
「剣を売ってくれれば、誰だか知った事かっての」
と、リリアを店頭販売員としか思っていない。
そのリリアは、商談中に剣を振り上げたのを巡回兵に見られた事により、威力押し売り罪の疑いで衛兵達と揉めている最中。
カップルがリリアを振り返ると
「だから、あたし売り子じゃないわよ!だから名前はリリア!本物の国公認の勇者リリアなんだから!これを見なさいよ!」っと衛兵にギルド証をぶん投げているところだった。
まもなく、街でも収穫祭の時期。
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