勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【42.5話】 最近のリリアの知名度

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ルーダ・コートの街、冒険者ギルドのメンバーにおいてリリアは少しだけ知名度が上がっている。
他の冒険者ギルドの経営する酒場、冒険者の酒場等にいけば、声をかけれる。
「よう!リリア、こっち席空いてるぞ」
「リリア、今、護衛からの帰りね?どっち方面行ってたの?」
「リリアさん、お化けキノコ採取とハンティングの仕事入ってますよ、引き受けます?」

バー・ルーダの風では
「リリア、おかえりなさい、トラネコが来て、明日空いているならダニヤ方面まで荷馬車護衛を頼んで帰っていきましたよ。引き受けるならちょっとその旨を伝えてきください」
「リリたんが居ない間に勇者リリアを名乗る女冒険者がバーに来たニャン。本物はもっと胸も態度も大きいって叱ってやったニャン」
「市場でローガンさんがリリアにお礼言ってたピョン。また仕事よろしくって」

仕事はギルドに依頼が入って来る中からコトロがリリア向きそうなのを選ぶこともあれば、自分で依頼を引き受ける事もある。
今はイルミネーションマッチの契約があるので時間が読みやすい仕事中心。
もっぱら、乗車お出かけ好きなリリアは往復で時間が読みやすい馬車護衛の仕事が好み。


この日は、ルーダ・コートからルーダ港行のキャラバンの護衛を務めるべく、夜明け前からルーダ・コートの南門に来た。
日の出寸前の一番暗い時間帯だが、門前は巡回に出る衛兵。キャラバンと護衛、仕事に出る者達のランタンの灯りが右往左往し、騒然としている。
リリアは弓を手に護衛の席が空いていそうな荷馬車の主と交渉中。

「… そうかぁ、まぁ… 熱意は伝わるし自信はあるんだろうけど、ギルド・ルーダリアの旋風?… あぁ、ルーダの風?… 聞いたことないし、お嬢ちゃん若いし、いや、見かけじゃないのは知ってるよ、だけど、武芸者の体型に見えないしな。お客として乗っけてあげたいけど、席が護衛の分しかないから今回は他所を当たってくれよ。夜お嬢ちゃんに乗車できるって言うなら、ちょっと荷物動かして席を作るけどね、あっはっはっは!」
相変わらずな反応される。
“まったく、荷馬車主と来たら馬車に乗るか女に乗っかる事しか頭にないんだから…”リリアは口を尖らせて聞いている。
が、その時背後で聞き覚えがある声がした。
「リリア!リリアじゃないか!よかった、一人達者なのが欲しかったんだ。ルーダ港とその先の村に行くけど、最近危ない噂が多くてな、リリアならルーダ港まで片道60、村までならプラス40でどうだ!話が面白ければ昼飯つけるぜ」
リリアが振り返ると、宅急便ギルド・苦労猫のマルネコが立っている。
「マルネコ、気前がいいじゃない?それだけ貰えれば、乗車中、リリアの楽しいフルタイムトーク付きよ」リリアが笑顔で答える。
リリアが荷馬車主の男に笑顔で言う
「あたし向こうに決めるわ。次回はご縁があったら初回サービスするから、ルーダ港まで59Gでよろしくね。あなたに神のご加護がありますように」


リリアは弓をかかえ馬車に揺られる。石畳みの道が途切れ始め、馬車の揺れがゴツゴツと突き上げる感じになった。
最近また、西の国境で戦争が再燃してきているが、今はそんな不穏な空気は全然感じられない。空にはトンビ達が青いキャンバスに円を描いている。
「フルーツジュースご馳走さま」リリアがいただいたカップを置いてお礼を言う。
「リリアは勇者の子孫で、国の認定勇者なんだろ?ランカシム砦を勝利に導いた勇者と同じ人間だって噂を聞いたことあるけど、あれは本当なのか?」マルネコが尋ねれる。
「… さぁねぇ、リリアにはよくわかんないよ。ルーダリア王国勇者管理室に問い合わせてみてちょうだい」ニヤニヤしながらリリアは答える。
「… 知ったら、護衛料が高くなりそうだから止めておくわぃ」マルネコは大笑い。

平和にキャラバンの列が進んでいく。
リリアは巡回兵の列を通りすがりながら馬車の上から眺めていた。
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