勇者の血を継ぐ者

エコマスク

文字の大きさ
65 / 519

【33話】 ストーンヘンジ

しおりを挟む
「わあぁ! あれね!あれがストーンヘンジね!」丘の上から見下ろしながらリリアが声をあげる。
眼下の草原の中に巨大な岩が規則的に並び立ち、中央に人の顔を模したような岩がそびえる。数組の冒険者パーティーが遺跡見学をしている。
ルーダ・コートから1週間の旅、色々あったがついにたどり着いた。訓練を受けながら、実戦をかいくぐりながらたどり着き、生れて始めてみる遺跡… アリスが言っていたとおり、村や街では味わえない感動だ。久しぶり嬉しくて涙がでる。
「ちょっとリリア泣いてるの、まだ行程半分よ、帰りがあるのよ」ペコは笑うが、リリアの気持ちは理解できる。
「全てをかける達成感あるでしょ?」アリスも笑っている。
最寄りの村に馬車を置いて、徒歩でここまで登ってきた。
「さ、行きましょう」水筒の水を一口飲むと誰からともなく言った。


快晴、そよ風が心地よく、草原の風を送ってくれる。
“すごい、何のためにこんな遺跡を造り上げたのかしら?”巨大な岩が規則的に並ぶ。先ほど屋台で買ったストーンヘンジ饅頭を食べながらリリアは感動。
「本当に絵でみた通りね」中央の巨大な人の顔の像、目を閉じ口を閉じ、静かに何かを待っている表情。
「リリア!本日のメインインベントよ!こっちよこっち!」ペコとアリスに呼ばれた。

1m四方の石畳がある。先ほどの顔の像から少し離れた場所。ここに立ってストーンヘンジ遺跡を見ると、顔の像を中心にバランス良く巨石がそびえる。
「せっかくだからリリアが栄えある一番手いきないさいよ」ペコが言ってくれたが、リリアは何と言って良いか決めかねる。途中で散々考えてきたが、色々経験するたびに考えが変わってしまって良い考えがまとまらない。
「まだ考え中なのよね、ペコとアリスとお先にどうぞ」リリアがゆずる。
「じゃ、お先にね」ペコが笑いながら石畳の中央に立つ。スゥっと大きく息を吸うと、
「ペコ、4回目ストーンヘンジ来ましたーーーーーー」大声で叫ぶ。
「はーーーーーーい!」ストーンヘンジが返事した。本当に返事するんだ、リリアは本で読んでいたが実際に巨石が返事するのを聞くと感動する。見かけのわりに結構声が高いのね。
次はアリスの番。
「アリスの好みはロンバルディ第二継承順位王子―――――――」
「はーーーーーーい!」リリアと三人は顔を見合わせて笑う。リリアはフレルディオ王子派。
リリアの番、石畳に立つ。よし、今回の旅で結構自信を持てたことがある、それでいこう…

「リリアはーーーーー、立派なーーーーー、勇者――――――」
「……………」  …あれ?ストーンヘンジの返事がない…
「リリア凄い!ストーンヘンジを困らせた人初めて見た!」
「立派かどうか… 石造が返事に困ってる」
ペコとアリスは大爆笑している。
「何でも返事するんじゃないの?」リリアは真っ赤になっている。
「知らないわよ!返事してもらえない人初めて見た」
「立派って言い切るからじゃない?ストーンヘンジって正直者なのね」
二人は笑い転げている。
「ちょっと、笑い過ぎでしょ!」
リリアが顔の石造を見ると確かに困ったような顔をしてたたずんでいた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...