勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【19.5話】 大陸の子供達

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この大陸でリリアが村の子供に歳を聞いたとする、幼いとほとんどの場合は
「お母さん!」と確認に家に戻るだろう。いや、親も子供の歳等あまり気にしていない。教会があるならプリースト、あるいは村長に聞いた方が正確かも知れない。村では大人さえ自称であり、実際とは3歳前後違う事は稀ではない。識字率が低い平民の間では暦の意識も無ければ、歳もあまり関係ないものだ。
「〇歳」子共でも歳がちょっといけばと答える可能性はあがる。ただし側に誰かがいると高確率で会議が始まる。話を聞いていると、
「マーリンの娘が生まれた次の年に弟のテムが生まれ、川の氾濫で農作物が全滅した次の年に生まれているはずだから、だれそれは〇歳だよ」とか
「テムが生まれた年にシーラ生まれているはずだから、だれそれは〇歳だ」等と会議のタネは尽きない。家庭によっては
「ウチのチビ助は本当は〇歳なんだろうけど、家に居られても面倒見切れないから6歳ってことにして教会で習い事させ始めたよ」てな感じだ。こんな場合、子供はある朝突然
「お前、今日から6歳だと名乗って教会に行ってきな」と命令が下るのである。親の言うことは絶対だ、いきなり2歳くらい歳をとって教会デビューになる。教会だって、そうなった以上は「お前は6歳じゃないから、帰りなさい」とは言わない。
結局うやむやな感じから、そのうち自称が定着する。リリアの友達も都合により、リリアと同い年だったり、年上だったり年下だったり、しょっちゅう入れ替わる子もザラだ。
この大陸では、貴族以上の生まれ、商家の生まれ、上級兵士、公務員、聖職者、学者あたりにならないと年齢等ほぼ意味がない。
これに至っても兵学校、魔法試験、その他あらゆる試験の設定年齢があれば、勝手に歳を名乗って受験し、合格したらそこからその年齢として国に登録されて生きていくだけだ。
国側も“いや年齢全然違うだろ”と思いつつ、その実力が実証されていれば、問題無し程度で気にもしていない。


リリアの17歳はかなり信憑性が高い。ガウは勇者の子孫として学があった事と、同じ理由で生まれにこだわりを持っていた。メルもプリーストとして教養があった。ガウとメルが亡き後もファーザー・ゼフが教会でリリアを引き取り、修道女として神歴学の勉強をさせている。暦にも数字にも高い意識を持っている。
もっともリリアは弓を手に野山を駆け回り、男の子相手に大喧嘩する滅多に教会にいない不思議な修道女ではあったが…


リリア曰く
「あたしはブレない17歳」らしい…
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