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【12話】 リリアはXL
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リリアは宮中の勇者管理室にいる。目の前では例の室長が注意とも説教とも愚痴ともつかない話が延々と続けている。
リリアは朝、宿屋を出て官舎に挨拶に行くまでは想像もしてなかった日程をこなしている。
官舎でリリアが自分の名前を告げると、怒られたり、お払い箱にされるどころか、待ってましたとばかりに人々が寄ってたかって世話を焼き始め、王宮に連れて来られたのだ。
数日いない間に空気感が全く変わっている、王宮内で何革命が起きているのだろうかと思っているリリア。
どうやら、署名した日にリリアの胸を穴が開かんばかりに眺めていた国王代理と監査人がリリアの容姿を褒め称えていたらしい。それが国王の耳に届くと、それほどの容姿であれば国の良い宣伝になるとばかりに急遽、式典を行う事になったのだ。
“男って単純な生き物ねぇ”呆れるが、最近はその単純さのお陰で酒場ではお酒をご馳走してもらえる機会が増えた。害ばかりではない。
十日後に式典があり、それに向けて大慌てで準備が進められているらしいが、このままリリアが戻って来なかったどうしていたのだろうか?見切り発車にも程がある。
その前に王族と一度ご対面しておきたいが、それが今日しかチャンスがないという事で半ば拉致されるように宮中に連れて来られ、矢継ぎ早に国王をはじめ、一族とその他偉い人と挨拶を終えてきたのだ。
とにかく大勢の偉そうな人が続々と挨拶に来る。肩書は長いし、貴族の名前は長いし、リリアには誰が誰だか全然覚えていない。まさしく初見殺し。とにかく髭面の国王だけは覚えておいた。数日前のどうでも良い感はすっかり消えている。国王が認めたとなったらすごい態度の変わりようだ、それがまた腹立たしい。
リリアは礼服を着せられ、紋切り型の挨拶をひたすら連発していた。
そんな窮屈な時間が終わり、いつもの装備に着替え終わると、最後に勇者管理室に出頭してくれと言われた。嫌な予感しかしないが仕方ない。リリアは管理室の部屋をノックした。
で、現在である。
リリアは席も進められもせず、直立不動のままお説教を聞かされている。室長は相変わらず神経質そうに、手を机の上で組み合わせて、しきりにリリアの態度の悪さ、態度の尊大さを叱っている。態度?行方不明事件はあまり関係ないらしい。
腹立たしいが皆、手のひらを返したような人間ばかりなのに、ブレないこの人は素晴らしい。リリアはある意味感心している。
かなり頻繁に
「リリア殿のその尊大な態度はどうしものか?」と問い正してくるのだ。
リリアは“…ソンダイ?”と、しばらく分からなかったが、どうやら態度がXLサイズという事らしい。
「………」リリアは黙って聞いている。別に偉そうにしているわけではないので、理由を聞かれても答えられるはずがない。
だがやがて、室長の叱りペースが落ちてきた。締めくくりに入り感が漂う。よしよし、この激痛の時間も終わるらしい。
「と、言うことでリリア殿には今後一層態度を改めるように…」
「…はい、自重いたします…」慇懃に答えてさっと退出に限る、っと思って挨拶した途端に、監査人が口をはさんだ。
「室長、胸の大きさは決してその人の態度の大きさを表したものではござらんぞ」
“…… あぁ、この人余計なこと言っちゃったよ”リリアは思った。
「ぅり・り・や・ど・のおおぉぉぉぉぉ!!」室長は叫びながら椅子から立ち上がると、再び大声叱咤デスマッチのゴングが鳴らされた。
“男って、ほんっとバカなんだからぁ”リリアは呆れながら直立不動で聞いていた。
もう、部屋の窓からは夕暮れの日が差し込んでいた。
リリアは朝、宿屋を出て官舎に挨拶に行くまでは想像もしてなかった日程をこなしている。
官舎でリリアが自分の名前を告げると、怒られたり、お払い箱にされるどころか、待ってましたとばかりに人々が寄ってたかって世話を焼き始め、王宮に連れて来られたのだ。
数日いない間に空気感が全く変わっている、王宮内で何革命が起きているのだろうかと思っているリリア。
どうやら、署名した日にリリアの胸を穴が開かんばかりに眺めていた国王代理と監査人がリリアの容姿を褒め称えていたらしい。それが国王の耳に届くと、それほどの容姿であれば国の良い宣伝になるとばかりに急遽、式典を行う事になったのだ。
“男って単純な生き物ねぇ”呆れるが、最近はその単純さのお陰で酒場ではお酒をご馳走してもらえる機会が増えた。害ばかりではない。
十日後に式典があり、それに向けて大慌てで準備が進められているらしいが、このままリリアが戻って来なかったどうしていたのだろうか?見切り発車にも程がある。
その前に王族と一度ご対面しておきたいが、それが今日しかチャンスがないという事で半ば拉致されるように宮中に連れて来られ、矢継ぎ早に国王をはじめ、一族とその他偉い人と挨拶を終えてきたのだ。
とにかく大勢の偉そうな人が続々と挨拶に来る。肩書は長いし、貴族の名前は長いし、リリアには誰が誰だか全然覚えていない。まさしく初見殺し。とにかく髭面の国王だけは覚えておいた。数日前のどうでも良い感はすっかり消えている。国王が認めたとなったらすごい態度の変わりようだ、それがまた腹立たしい。
リリアは礼服を着せられ、紋切り型の挨拶をひたすら連発していた。
そんな窮屈な時間が終わり、いつもの装備に着替え終わると、最後に勇者管理室に出頭してくれと言われた。嫌な予感しかしないが仕方ない。リリアは管理室の部屋をノックした。
で、現在である。
リリアは席も進められもせず、直立不動のままお説教を聞かされている。室長は相変わらず神経質そうに、手を机の上で組み合わせて、しきりにリリアの態度の悪さ、態度の尊大さを叱っている。態度?行方不明事件はあまり関係ないらしい。
腹立たしいが皆、手のひらを返したような人間ばかりなのに、ブレないこの人は素晴らしい。リリアはある意味感心している。
かなり頻繁に
「リリア殿のその尊大な態度はどうしものか?」と問い正してくるのだ。
リリアは“…ソンダイ?”と、しばらく分からなかったが、どうやら態度がXLサイズという事らしい。
「………」リリアは黙って聞いている。別に偉そうにしているわけではないので、理由を聞かれても答えられるはずがない。
だがやがて、室長の叱りペースが落ちてきた。締めくくりに入り感が漂う。よしよし、この激痛の時間も終わるらしい。
「と、言うことでリリア殿には今後一層態度を改めるように…」
「…はい、自重いたします…」慇懃に答えてさっと退出に限る、っと思って挨拶した途端に、監査人が口をはさんだ。
「室長、胸の大きさは決してその人の態度の大きさを表したものではござらんぞ」
“…… あぁ、この人余計なこと言っちゃったよ”リリアは思った。
「ぅり・り・や・ど・のおおぉぉぉぉぉ!!」室長は叫びながら椅子から立ち上がると、再び大声叱咤デスマッチのゴングが鳴らされた。
“男って、ほんっとバカなんだからぁ”リリアは呆れながら直立不動で聞いていた。
もう、部屋の窓からは夕暮れの日が差し込んでいた。
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