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3巻オマケ
最後の巫女
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「恐らく、彼女が最後の巫女となるのでしょう」
神殿の頂点に立つ人が、静かにそう言った。
滅多に口を開かないその人がそう言ったのだから、それは覆しようもない決定事項だ。
「アレイ1号神官を0号神官とし、終生、巫女の側に在ることを命ずる」
レンの乾いた声に頭を垂れ、粛々と役職を頂戴する。
断ることなど出来ない。
だけど、いっそのこと逃げ出してしまいたかった。
どうして、彼女なのだろう。
どうして、自分は彼女を選んでしまったのだろう。
すべてが世界樹によって仕組まれたことだとは思わないし、全てがなにがしかの運命というシナリオ通りに進んだとも思わない。
神の手が自分たちをそうさせたとも思わない。
ただ、起きてしまったことは変わりようもなく──。
「どうして気付くかなあ……」
世界樹の写し絵を見ただけで、敏い巫女は己の起こした出来事の結果を知る。
君のせいじゃない。
君だったからそうなったわけじゃない。
言葉は慰めにもならず、彼女の小さな体が小刻みに震える。
何も知らず、何も分からないまま、彼女が彼女のままであればよかったのに。
それでも「知ろうとする」こと。それが彼女の最大の長所なのだから仕方がない。
「俺とソラちゃんがこうして一緒に生きていけるんだ」
だから、俺は君に理由をあげよう。
ここに君が生きている理由を。
それはとても頼りないものではあるけれど、俺だから与えられるただ一つのものだと信じている。
君の人生が、終生、穏やかである様に。
俺は、俺の一生をかけて、君を幸せにするから──。
神殿の頂点に立つ人が、静かにそう言った。
滅多に口を開かないその人がそう言ったのだから、それは覆しようもない決定事項だ。
「アレイ1号神官を0号神官とし、終生、巫女の側に在ることを命ずる」
レンの乾いた声に頭を垂れ、粛々と役職を頂戴する。
断ることなど出来ない。
だけど、いっそのこと逃げ出してしまいたかった。
どうして、彼女なのだろう。
どうして、自分は彼女を選んでしまったのだろう。
すべてが世界樹によって仕組まれたことだとは思わないし、全てがなにがしかの運命というシナリオ通りに進んだとも思わない。
神の手が自分たちをそうさせたとも思わない。
ただ、起きてしまったことは変わりようもなく──。
「どうして気付くかなあ……」
世界樹の写し絵を見ただけで、敏い巫女は己の起こした出来事の結果を知る。
君のせいじゃない。
君だったからそうなったわけじゃない。
言葉は慰めにもならず、彼女の小さな体が小刻みに震える。
何も知らず、何も分からないまま、彼女が彼女のままであればよかったのに。
それでも「知ろうとする」こと。それが彼女の最大の長所なのだから仕方がない。
「俺とソラちゃんがこうして一緒に生きていけるんだ」
だから、俺は君に理由をあげよう。
ここに君が生きている理由を。
それはとても頼りないものではあるけれど、俺だから与えられるただ一つのものだと信じている。
君の人生が、終生、穏やかである様に。
俺は、俺の一生をかけて、君を幸せにするから──。
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