異世界コンビニ

榎木ユウ

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3巻オマケ

愚者か賢者か

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「ラフレ姫に結婚の話が決まったそうです」

 ナシカの言葉に、一瞬、彼の主であるハクサ殿下は返す言葉を失ったようだった。
 だがすぐに立ちあがると、出かける支度を始める。

「どちらへ?」
「コンビニだ。ラフレ姫に求婚する」
 堂々とそんなことを言うハクサに対し、ナシカは何も言わない。
 入口のところで黙って見ているであろうジーストもだ。

 きっと、自分たちでなければ止めに入るだろうことは分かっている。

 既に破談になっている結婚相手に、求婚したところで意味はない。

 そして今の時期に名を名乗ったところで、春祭り開催中は求婚にならない。
 この期間の【名乗り】は、最終日のダンスパートナーの申し出として取られるからだ。

 それを分かっているだろうに、敢えて【求婚】だと言うハクサは、
 本当にただの馬鹿なのか――
 それとも――……

 ハクサの後を付き従いながらチラリとジーストを見れば、彼は真っ直ぐにハクサの背中を見ていた。

 自分たちの主君は国中から笑われる【愚か者】だ。
 


「ラフレ姫……私の名前はナニーエ・ファ・キザク・ハクサです。どうか私に舞踏会で共に踊る許可を与えてください」
 コンビニの店内で、自分の主は、求婚と言っていたはずなのに、迷うことなくダンスパートナーの申し込みを、彼の意中の相手でもあるラフレに申し込んでいた。

(我が主は、本当に愚者なのか……)
 ジーストは相変わらずハクサの背中見ている。
 その目は常に真っ直ぐだ。
 自分の主が愚者か賢者かなど、見極める気はないのか。
 いや、どちらであっても、彼は自分の主であるハクサを好ましく思っているのだから、例えどんなことになってもついていくのだろう。

(さて、私はどうすべきですかねぇ……)
 ジーストのようにナシカには立ちまわれないが、それでも薄らと何かの気配をナシカは感じ取っていた。

 自分の主は愚者か、賢者か。

 その見極めの時を、自分は決して間違えてはならない――
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