異世界コンビニ

榎木ユウ

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2巻オマケ

彼女の覚悟

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「これでも君は、この世界と日本の狭間で、巫女をしていけるか?
 このコンビニに居続ける覚悟があるか?」

 容赦ないスズカの言葉に、息を飲んだのはソラちゃんだけじゃない。

 俺だって息を飲んだ。

(君を追い詰めたくはないのに──)

 そう思う俺を、スズカは「甘い」と叱責したことがある。
 巫女にも、巫女としての責任以外に、この世界にいる危険性をもっと自覚させろ、と。

 分かってはいたし、分かっているつもりでいた。

 だけど、この世界は、あまりにも日本人に対して酷いから、どうしても躊躇う気持ちの方が大きくなる。

 彼女がこの世界を嫌ったら。
 彼女がこの世界から離れてしまったら。

 俺と彼女を繋げる繋がりは、いつだって彼女にリスクを背負わせ続ける。

 真綿の世界で彼女を包みたいのに、現実がそれを許さない。
 苦しみも悲しみも、彼女の見えないところにしまっておきたいのに──



 それでも、もし、彼女が覚悟を決めて、それでもそこにいることを、俺の側にあることを選んでくれたのならば……とほの暗い感情が、俺の胸の奥にはある。

 世界を捨てても構わない程、俺は彼女を愛している。

 彼女にも、俺と同じ位の愛情があったのならば──


 どうしよう。彼女が苦しい選択を強いられても、その選択が俺の側で苦しむことであるならば、嬉しくて仕方ない自分がいる。
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