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1巻オマケ
攫いたかった
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カランカランとサクラ亭のドアベルが鳴る。
ジグはカウンターで静かに飲む男を見て、声をかける。
「決定らしいな」
何のことかはわかったらしい。
アレイはくしゃりと顔を歪めて、ターク酒を飲み干す。
最後まで足掻いたのは、この男だけだったと聞く。
他の神官は、皆、新しい異世界人を探す方へと決議をとったとも。
「俺が浅はかだったのかなぁ?」
「浅はかだったんだろうさ」
惚れるくらいなら、連れてこなければよかったんだ。
若しくは有無を言わせず、選べない状況にしてこちらに引きずりこんでしまえばよかったのに。
それでもこの幼馴染はそんなことをしなくて、結局帰す方を選んだ。
「いっそのこと、攫っちまえよ」
出来ないと分かっていても、そう言わずにはいられない。
そしてその答えも知っている。
「攫いたかったなぁ……」
過去形なのは、そうしない証明だ。
今日ほど、酒がまずい日はなかった。
ジグはカウンターで静かに飲む男を見て、声をかける。
「決定らしいな」
何のことかはわかったらしい。
アレイはくしゃりと顔を歪めて、ターク酒を飲み干す。
最後まで足掻いたのは、この男だけだったと聞く。
他の神官は、皆、新しい異世界人を探す方へと決議をとったとも。
「俺が浅はかだったのかなぁ?」
「浅はかだったんだろうさ」
惚れるくらいなら、連れてこなければよかったんだ。
若しくは有無を言わせず、選べない状況にしてこちらに引きずりこんでしまえばよかったのに。
それでもこの幼馴染はそんなことをしなくて、結局帰す方を選んだ。
「いっそのこと、攫っちまえよ」
出来ないと分かっていても、そう言わずにはいられない。
そしてその答えも知っている。
「攫いたかったなぁ……」
過去形なのは、そうしない証明だ。
今日ほど、酒がまずい日はなかった。
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