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1巻オマケ
勇者
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カランカランとドアベルが鈍い音を響かせた。
疲れた顔をして現れた幼馴染に、「よお」とジグは片手を上げる。
今日は珍しく神官の正装姿の彼は、マスターに「ターク」と頼むと、ジグの隣に座り込む。
「勇者様、登場らしいな」
軽い口調でそう言ってはみたが、内実、それは非常に良くないことだった。
「きちんと、各国には通達していた筈なのに……」
「まあ、我慢ならなかったんだろうな」
自国が魔物に食い荒らされる様を我慢できない気持ちは、ジグにも分からなくはない。
だが、それが異世界の人間を呼び寄せる理由には決してならない。
今回はまだ素直な少年だったから良かったものを、これがすぐさま発狂するような輩であったならばどうなったことか──と他国のことながら肝が冷えた。
「できれば、……ない」
ポソリと呟いた声は、どこか弱弱しく、だけど、強い意志が込められていて、
珍しく鬼気迫る幼馴染の様子に、ジグも何も言えない。
「なあんで、出逢っちまうかなあ……」
会わなければ何とかなったものを──と思いながら、ジグも麦芽酒を飲み干したが、今日の酒はちっとも酔える酒ではなかった。
三十路幼馴染の恋は、果たしてどこへ行くのだろうか。
疲れた顔をして現れた幼馴染に、「よお」とジグは片手を上げる。
今日は珍しく神官の正装姿の彼は、マスターに「ターク」と頼むと、ジグの隣に座り込む。
「勇者様、登場らしいな」
軽い口調でそう言ってはみたが、内実、それは非常に良くないことだった。
「きちんと、各国には通達していた筈なのに……」
「まあ、我慢ならなかったんだろうな」
自国が魔物に食い荒らされる様を我慢できない気持ちは、ジグにも分からなくはない。
だが、それが異世界の人間を呼び寄せる理由には決してならない。
今回はまだ素直な少年だったから良かったものを、これがすぐさま発狂するような輩であったならばどうなったことか──と他国のことながら肝が冷えた。
「できれば、……ない」
ポソリと呟いた声は、どこか弱弱しく、だけど、強い意志が込められていて、
珍しく鬼気迫る幼馴染の様子に、ジグも何も言えない。
「なあんで、出逢っちまうかなあ……」
会わなければ何とかなったものを──と思いながら、ジグも麦芽酒を飲み干したが、今日の酒はちっとも酔える酒ではなかった。
三十路幼馴染の恋は、果たしてどこへ行くのだろうか。
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