JK LOOPER

猫乃麗雅

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3rd STAGE/海を越えねばならぬのです。

212.プラン

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「じゃあねぇー!!」

「バイバーイ!」

琴音ことね月媛ひかりちゃんを軸に、皆が手を振り合うなか、マイクロバスが離れていきます。

その車内には、アケミさん達が見受けられたのです。

「え?!」

驚いた私が、周囲を〝キョロキョロ〟と確認してみたら、ここ・・は大分県の“別府大学駅”でした。

「どうしたの?? コトハ姉ちゃん。」

首を傾げる陽斗はるとくんに、

「……、ループしたみたい。」

そう告げたところ、すぐ側に居る壱紀かずきくんが、

「あー、なんか、そんな気がした。」

妙に納得したのです。

彼も今や〝慣れたるもの〟であります。

「とりあえず…、一回お家に帰ろう。」

このように提案した私は、出現させた[転移の宝玉]を使ったのでした……。


「たっだいまぁー!」

琴音を筆頭に、玄関から上がっていく我々です。

勿論、靴を脱いで☆

こういった流れにて、“畳敷きの広間”へと足を運んだところ、

「おー。」
「戻って来たって事は…、また時間がさかのぼったという訳ぇ?」

作業を中断した葵月はづきちゃんが、何気なく尋ねてきたので、

「うん、そうなんだよねー。」
「なので。」
「誰がジョブを受け継いだのか、調べていこうと思う。」

そのように伝えた私であります。

時刻はPM13:40を過ぎたあたりでした……。


およそ5分後に入室してきたのは、次男さんファミリーです。

聡真そうまが継承したらしい。」

叔父さんに教えられ、

「そうなの??」

私が視線を送ったら、本人は軽く〝ん〟と頷きました。

ちなみに、13歳の聡真くんは、背丈が160㎝くらいで、やや長めの黒髪であり、細めの体型をしています。

「やっぱり。」
「ソウくんだったかぁ。」

こう述べたのは、いつの間にか訪れていた我が弟の利勇りおでした。

「どういうこと?」

私が訊いてみたところ、

「いや、まぁ、“機工士”の時点でさ、〝サバゲ―やガンシューティングが好きなソウくんに譲渡されるだろうな〟って、そんな予感がしてたんだよ。」

どこか悟ったかのように利勇が答えたのです。

「それで??」
「今回は、なんでタイムループしたの?」

聡真くんの姉たる咲凛えみりちゃんに問われ、

「あぁー、それね。」
「実は…。」

宮崎県での経緯を語っていく私でした。


「……、全滅したのか。」

ふと呟いた父親に、

「面目ない。」

正座して頭を下げる私であります。

壱紀くんが自身の腕を組んで、

「ボスキャラが強いうえに、兵隊の数が多いとなると、再挑戦したところで勝てる可能性は低いかもね。」
「“勇者さんパーティー”と別れて、戦力がダウンしているし…。」

難しそうな表情になりました。

「それでも倒さないといけないんでしょ??」

そう窺ってきたのは、壱紀くんの妹にして、月媛ちゃんの姉である、葵月ちゃんです。

「んー。」
「ま、“謎の手紙”によれば、そうするべきなんだろうけど……。」
「どう攻略したものやら?」

〝ムムムムッ〟と考え込む私に、

「“遠隔タイプ”を増やすのが良いかもね。」

聡真くんが声をかけてきました。

「ふむ??」

私が反応したら、

琴晴ことはちゃんの話しからして、邪魔なのは雑兵ども・・・・でしょ。」
「であれば、そこら辺を“長距離メンバー”が牽制して、ボスには“接近戦タイプ”に当たってもらうのが良いんじゃないかな?」

このように分析してくれたのです。

「なるほどぉー。」

理解を示した私ではありましたが、

「でも。」
「あのボスキャラ、攻撃力が半端なかったんだよねぇ。」
「あと、防御力も高い印象だった。」
「セカンドステージまでに比べて。」

そう説明したのでした。

これに、

「なんとかなるかもしれねぇぞ。」

陽斗くんの兄である暁斗あきとくんが、

「錬金術師と裁縫師は、レベルが10になったときに、新たなスキルを取得している。」
「これによって、錬金術師は、“はがねの防具”を生産できるようになり、武器の改良も可能となった。」
「裁縫師は“鉄糸てつし”で服を作れるらしい。」
「それらを用いれば、勝機があるかもな。」

そのように語ったのです。

「ホントに!?」

私が瞳を大きくしたところ、

「ああ。」
「ただし。」
「〝戦闘職の武器しか強化できない〟といった縛りがある。」
「つまり…、〝ユニーク職は不可能〟という事だ。」

父が捕捉しました。

「そうなの??」

〝キョトン〟とする私を、

「まぁ、構わないよ。」
「それよりも……。」
「琴晴ちゃん、職種を選んで。」

聡真くんが誘導します。

「了解。」

簡潔に返した私の脳裏には、リョウさんが浮かびました。

このため、【弓使い】をチョイスしたのです。

我が眼前の宙に現れたるは、和弓わきゅう洋弓ようきゅう・クロスボウの三つであります。

〝どれにしたものかしらん?〟と少なからず悩んだものの、[クロスボウ]を掴んだ私です。

余談かもしれませんが、聡真くんによれば〝ボウガンと呼ばれていたりもするけど、それは日本の輸入会社の名称だよ〟との豆知識でした。

とにもかくにも。

「じゃあ、聡真以外は、武器を渡してくれ。」

暁斗くんに促され、

「どれくらいの時間が必要なの??」

私は、そういった疑問を投げかけたのです。

「一個につき10分あたりだろうな。」
「ま、叔父さんと分担するから、割と早く済むだろう。」

こう告げた暁斗くんに続き、

「防具は一時間ぐらい必要だな。」
「とは言え。」
「“弓使い”とやらを除いた物は、既に完成させてある。」
「お前たちが帰ってきたときにプレゼントしてあげようと思って…。」
「だが、“機工士”は、聡真に合わせて作り直さないとな。」

そのように喋った父が、

「……、30分あれば、いけるか?」

母に視線を送ります。

「ええ、大丈夫よ。」

私などの母親が微笑んだら、

「よぉーし。」
「4時までには仕上げよう!!」

葵月ちゃんが意気込んだのでした―。
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