JK LOOPER

猫乃麗雅

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3rd STAGE/海を越えねばならぬのです。

186.宮島口にて

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現在、マイクロバスは、目的地へと走っております。

黒髪サラサラショートかつインテリメガネの男性は、“リョウ”という名前で、二十歳ハタチの大学生とのことでした。

ちなみに、丸眼鏡のミオさんも20歳の大学生であります。

さて。

「近所の人が“巫女”になったとかで、家に結界を張ってもらえて、親戚は全員が無事らしいんだけど…。」
「本土との往来が断たれている島では、いろいろと限られてしまってるから、あと何日もつのか分からない。」
「それに、今のところは厳島いつくしま神社から動いていないボスキャラ達が、いつ敷地の外に出るか不明なため、これも不安要素になっているみたいなんだ。」

そう語るのは、リョウさんです。

「宮島の方々は、誰もボスに挑んでいないのでしょうか?」

カズヒコさんの質問に、

「いえ、数日前に戦った人たちがいたけど、返り討ちにあって、殆どが亡くなってしまったそうです。」
「僕の親戚によれば、〝それ以来、島民は様子を見ている〟との話しでした。」

リョウさんが答えます。

車内が静寂に包まれたところで、

「とにもかくにも、ボスキャラどもを成敗して、島の人々を少しでも安心させてあげよう!!」

元気よく告げる勇者さんでした。


 [宮島口旅客みやじまぐちりょかくフェリーターミナル]の付近では、交通誘導が行われています。

この人達によると、「今回は、カーフェリーは運航しないので、駐車場に停めてください」とのことです。

それに従うサトシさんでした。


私達が徒歩でターミナル内に入ったら、

「厳島神社での戦闘にご協力くださる方々は、10時45分までにフェリーへとお進みください。」
「そうでない方はご乗船できませんので、ご理解の程よろしくお願いします。」

係員であろう30代半ばくらいの女性が案内していました。

〝ふむ〟と頷いたアケミさんが、

「ここで、一旦、お別れだな。」

[一般職]のメンバーに視線を送ります。

「そうみたいね。」
「……、ま、こっちは、テキトーに過ごすから、気にしないで。」

マリナさんが述べた事によって、我々は別行動となったのです。

時刻はAM10:35あたりでした…。


フェリーは“三階建て”であります。

なんでも、【結界】が施されているそうです。

討伐に参加する人たちは、一ヵ所に集められています。

総勢は150名といったところでしょう。

AM10:45となり、役所から赴いたという数名が、大きめの地図を壁に貼って、“奪還戦”についての説明を始めたのです。

これによれば、世界の変化に伴い、宮島方面でも四割ほどが命を落とされているとのことでした。

ただし、島の警察にも犠牲者が出ており、人手不足のため、確かな情報は掴めていないそうです。

なお、ボスを消滅できたなら、一人につき5万円の報酬となります。

また、駐車場とフェリーの代金も行政が支払ってくれるみたいです。

そこからは、MAPをもとに、ボスキャラ関連の詳細を伝えられました。

厳島神社を拠点としているエネミーらは“サハギン”との事です。

日本では“半魚人”と呼ばれています。

セカンドステージになった二日目に、宮島の“戦闘職”と“ユニーク職”が80名ぐらいで勝負を挑み、配下の半数を倒したそうです。

しかし、人間側にも犠牲が生じてしまい、撤退を余儀なくされたので、〝雑兵は480体くらいになっているだろう〟との予測でした。

つまりは、敵の方が多勢ということです。

次第に悪化していく天候が未来を占っているかのようで、私は不安に駆られていきます。

私の心境を余所よそに、早い段階で飽きていたらしい琴音ことね月媛ひかりちゃんは、どちらかが自宅から持ってきていたのであろう“あやとり”を楽しんでいました―。
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