JK LOOPER

猫乃麗雅

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3rd STAGE/海を越えねばならぬのです。

181.兵庫にて・ぜんぺん

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[大阪城公園駅前駐車場]に移動した我々は、マイクロバスへと乗り込んだのです。

それぞれが左側の窓を開けたところ、

「今度は、ゆっくり遊びにおいでや。」
「皆で、美味いメシでも食いに行こう。」
「ボスを倒してくれた礼に奢ったるわ。」

金髪リーゼントさんと、

「うむ。」
「その時は、よろしく頼むとしよう。」

アケミさんとが、挨拶を交わしました。

発車するなか、〝またなぁ〟〝バイバーイ〟といった感じで、暴走族の方々と私達が手を振ります。

マイクロバスが公道に出たあたりで、

「何処に向かってるの?」

【機工士】たるユウジさんに尋ねられ、

「これといって決めちゃいないが…、とりあえず、兵庫県だな。」

運転中のサトシさんが答えました。

「ん、分かった。」
「じゃあ、宿泊できそうな所を検索してみるよ。」

そう伝えたユウジさんが、ご自身のスマホで検索していきます。

時刻はPM15:10になろうとしている頃です……。


およそ50分が経過し、やって来たるは、[阪神甲子園球場]です。

甲子園は、てっきり大阪に在るものだとばかり思っていましたが、実際は“兵庫県西宮市”でした。

いやぁー、勉強になります☆

とにもかくにも、PM16:00となったので、降車して、エネミーたちと戦っていったのです。

なお、私は、【刺突しとつ】というスキルを覚えています。

名称が示すように、“突き”に特化した技であり、私が京都で見たものでした。

なんでも、〝ヒットした相手に通常攻撃よりも高いダメージを与える〟のだそうです。

ちなみに、“ボス仏”とのバトルによって、[勇者さんパーティー]の戦闘職とユニーク職は、全員がLV.20を超えており、なかには新たな能力を収得した方々もおりました。

ま、これに関する話しは、いつかまた、機会があったときにしましょう。


ひと段落したあたりで、マイクロバスの右側の窓から、黒髪ロングの【錬金術師】であるマリナさんが、

「球場に入っていく人が結構いたけど、試合やってるのかな??」

そのような疑問を投げかけました。

「まさか。」
「流石に無理だろう。」

こう返したのは【侍】たるジュンヤさんです。

「誰かに聞いてみる?」

そう提案したハルカさんが、

「すみませーん。」
「甲子園って、何かやっているんですか??」

近くに居た人達に、自ら訊ねます。

「ん?」
「なんや??」
「地元ちゃうんかい?」

50代前半くらいの男性が反応し、

「甲子園球場は、ドームとちごぉうて、“結界”が張れんのよ。」
「客席の一部にしか屋根があれへんから。」

このように教えてくれました。

「あー、つまり、〝球場内にも人外が現れる〟ということですか??」

丸メガネの【裁縫師】であるミオさんが、車窓から質問したところ、

「そやねん。」
「だから、こうして、外側と内側を日替わりで担当しとるっちゅう訳や。」

先程の男性が説明してくださったのです。

〝そういう事もあるのか〟と納得した我々は、この人たちとお別れして、ジュンヤさんが導きだしていた場所を目指しました…。


約40分で到着できる距離が、エネミーを倒しながらだったので1時間は掛かった模様です。

結果、PM17:10を過ぎております。

マイクロバスは、某ホテルの駐車場に停まりました。

「チェックインしたら、少し早いけど、ご飯にしよう。」

ユウジさんに促されて、私達はロビーへと赴いたのです。


その後に訪れたのは、居酒屋でした。

黒毛和牛のステーキに串焼きなどをシェアしつつ、各自、お酒やソフトドリンクを口に運びます。

90分ほどが経ち、表に出たところ、すっかり日が暮れていました。

「せっかくだから、少し歩かない?」

【調理士】たるユミさんの提案に、

「そうだな。」
「あまり飲んではいないが、風呂に入る前に酔いを覚ましておきたいし。」

【武闘家】のサトシさんが賛成したのです。

これによって、我々は、[有馬温泉街]を散歩することになりました。


地域は全体的に風情ふぜいがあるものの、建物の灯りは殆ど点いておりません。

「六割ぐらいは閉まっているみたいだね。」

壱紀かずきくんが呟き、

「人外の影響だろうな。」
「平和を取り戻せる日が来ればいいんだが……。」
「いや、そうなるように、ボクらも力を尽くそう!」

アケミさんが意志を告げます。

どこか寂しい街並みのなかで、私は、熱い気持ちが湧き上がってきました。

親族以外とはあまり接しようとせず、ほぼ“ボッチ”だった自分にはもともと無かった〝世のため人のため〟といった感情です。

そのような心境を、悪くない変化だなと、くすぐったくもポジティブに捉える事が出来た私でした―。
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