JK LOOPER

猫乃麗雅

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2nd STAGE/ループには別の種類があるみたいです。

144.急転

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私の左隣に居る妹に気付いた穂乃歌ほのかさんが、

琴音ことねちゃんも、ありがとねー。」

抱きしめると同時に〝うりゃ、うりゃ~〟と頬ずりします。

妹は〝うきゃー♪〟と喜びました。

穂乃歌さんが〝スッ〟と上体を起こして、

壱紀かずきくんと、団長も、ありがとう。」

会釈します。

これに対して、

「いや、俺たちは…、なぁ? 青年。」

「はい。」
「試合に負けてしまいましたからね。」
「お礼してもらえるほどの事は出来ていません。」

光沖みつおきさんと壱紀くんが少なからず落ち込んだのです。

「それでも、私のために戦ってくれたんだから、ありがと、だよ。」

微笑んだ穂乃歌さんが、

「あと……、横浜中華街の皆さんに、勇者さん達や、蘇生術士さんも、ありがとうございました!」

深々と頭を下げます。

「俺たちは、地元の仲間の為に共闘したにすぎない。」

「ボクらは人として当然のことをしたまでさ。」

「私は、そういうジョブやさかい、お気になさらず。」

それぞれが、にこやかに返したところで、[清水の舞台]に〝シュンッ!!〟とミサさん&カナさんが現れました。

「たっだいまぁーッ!」

ミサさんが右手を振ったタイミングで、

「お待たせ。」

ハルカさんも戻ってきたのです。

お三方とも、両目と鼻頭はながしらが赤くなっているので、嬉し泣きしていたに違いありません。

「ほな、ホテルに移動しましょか。」
「こっからやと歩きで5分…、まぁ、10分以内には到着しますよって、今日は、そこで、ゆるりとお過ごしください。」

あやさんに促された我々は、お宿に向かう事になりました。

なお、[護衛隊]の半数は後片付けのため、ここに残るみたいです……。


先頭を行くは蘇生術士さんであります。

二列目は護衛隊の5人で、この後ろが私達です。

一同が、雑談しながら、[仁王門]を通過したあたりで、

「お姉さん、蘇生術士??」

とある少年が、正面から尋ねてきました。

身長は155㎝といったところでしょうか。

紺色のキャップ帽を、深めに被っています。

どうやら、中学生みたいです。

「そやけど?」

彩さんが答えたところ、

「やっぱり、そうか。」

〝ニィ~ッ〟と口元を緩めた少年が、

「来い、“乱世の武士ぶし”。」

と、発しました。

これによって、彼の眼前に〝フッ〟と“鎧兜に仮面の侍”が現れたのです。

それ・・は、全体的に半透明の薄青色で、足が無く、宙に浮いています。

「お、おお、お、お化け?!」

声を震わせたのは、ミサさんです。

私たちは、ビックリして、硬直してしまいました。

幽霊を見たのは初めてなので。

誰もがフリーズしている間に、

「恨みはないんやけど、邪魔なんで、退場してもらうわ。」
「この世から。」

少年が告げるなり、

れッ!!」

[乱世の武士]とやらに命令したのです。

〝ギュン!〟と詰めてきた霊が、予め右手に持っていた刀で、蘇生術士さんの喉元を〝シュパッ!!〟と斬ったではありませんか。

〝ブシャアー!〟と血を噴射しながら、

「かはッ。」

咳き込んだ彩さんが、崩れ落ちてゆきます。

真後ろにいた“オシャレ坊主”さんが両手で受け止めつつ、膝を地に着きました。

「ツボイ、体力を回復させるポーションを!!」

オシャレ坊主さんの指示で、

「は、はい!」

すぐ側に居た人が〝チョコン〟と正座します。

身長は160㎝ぐらいで、背中あたりまでの黒髪を三つ編みにしており、レンズが大きめなメガネの、女性です。

この人が自身の[アイテムBOX]から“ポーション”を出現させるなか、

「じゃあねぇ~。」

〝ヘラヘラ〟した少年が、ダッシュで逃げていきます。

お化けは、私達の方を向いたまま、彼に付いていきました。

「こんガキャあ…、許さへん!!」

ベリーショートで黒髪の男性が怒りを露わにし、黒髪ボブの女性や、茶髪ロングの女性と一緒に、追いかけます。

我に返ったアケミさんが、

「サトシくん、ジュンヤくん、ボクらも行こう!」

お仲間と飛び出しました。

更に、

「皆は、ここで待機していてくれ。」
「他にも伏兵がいるかもしれねぇから、念のため。」

団長さんも続いたのです。

そこへ、少年と交代するかのように、一人の少女が徒歩で〝スタスタ〟と近づいてきました。

背丈は150㎝程でしょう。

ウィッグなのか、染めているのか、肩あたりまでの長さがある髪は銀色で、“ゆるふわパーマ”です。

右のてのひらを〝スゥー〟と突き出し、

「ホール。」

こう唱えた彼女によって、道に穴が生じ、

「ぬおッ!?」

「きゃあッ!!」

といった具合に、護衛隊の三人が落下してしまいました。

勇者さん達&光沖さんは、

「うおっと!」

ギリギリで止まったようです。

〝くるッ〟と“回れ右”した少女が、小走りで、少年ともども遠ざかっていきます。

私たちが呆然とするなか、

「あかん。」
「事切れはった。」

オシャレ坊主さんが呟きました。

それは、蘇生術士さんのを意味していたのです―。
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