JK LOOPER

猫乃麗雅

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2nd STAGE/ループには別の種類があるみたいです。

139.決勝戦です・トロワ

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我々の所に帰ってきた壱紀かずきくんが、

「ごめん。」
「僕の所為で、今後の余裕がなくなってしまって…。」

項垂うなだれつつ、両手をそれぞれに〝ギュッ!〟と握って拳を作り、悔しがります。

「よっしゃあーッ!!」
「あと一つでボクらの優勝だ!」
「次で決めてしまおう!!」

あちらから聞こえてくる勇者さんの声が耳に障るなか、

「大丈夫だよ、カズくん。」
「なんとかなるはずだから、前向きにいこう、ね?」

自責の念に駆られている従兄妹を心配する私です。

団長さんが、

「そうだぞ、青年。」
「この敗北をバネにすればいいだけの話しだから、クヨクヨすんな。」
「それに、収穫があっただろ。」
「むこうのあんちゃんに闘い方を教えてもらって。」
「……、本当は、俺あたりがアドバイスするべきだったんだが…、すまんな、そこまで気が回んねぇで。」
「ただ。」
「どのジャンルでも一流っていうのは、たとえ敵からであっても学べるものは貪欲に吸収していくもんだ。」
「二度と自分の事を不甲斐なく思いたくないんだったら、そうやって腕を磨いていけばいい。」
「ま、対戦者に礼が出来るぐらいだから、大丈夫だろう。」
「そういう人間は強く逞しくなっていくもんだからな。」
「青年には素質がある。」
「だから、自信もてよ、な!」

このように持論を展開しました。

顔を上げて、

「……、はいッ!!」

と応じた壱紀くんの目には力が戻っています。

私が〝ほっ〟としたタイミングで、

「ぼちぼち中堅戦を行いまーす!」

“黒髪ボブの審判さん”が伝えてきたのです。

「俺の出番だな。」

[木短剣]を手にした穂積ほづみさんが、舞台の中央へと足を運びます。

「私まで繋げてよ。」

「頑張って。」

紗凪さなさん&真守まもるさん姉弟に、

「おう。」
穂乃歌ほのかの復活が懸かってんだ…、必ず勝つ!!」

背中で返す穂積さんでした。


相手は【武闘家】のサトシさんです。

右手には[木製のヌンチャク]を握っています。

ルールの説明を終えた審判さんが、

「始めぇッ!」

と、告げました。

せんを取ったサトシさんが、

「うぉりゃッ!」

武器を左から右へと払います。

穂積さんは、顔面に迫るヌンチャクを、後方へのスウェーで逃れました。

サトシさんが縦横無尽に振るう武器を、穂積さんが避けまくるなか、

「確かに素早いわね、アサシン。」

カナさんが〝へぇー〟と感心しています。

「でも……、このままいけるのかな??」
「そのうちバテちゃって、倒されたりしない?」

不安がるミサさんに、

「“武闘家”も割とスピードあるほうだけど…、あの二人のレベルに大きな差がないのであれば、アサシンを捕まえるのは無理よ。」

紗凪さんが説明しました。

その間にも攻撃し続けているサトシさんが、

「ぬぅッ!」
「結構な速度だな。」
「……、こっちが疲れるのを待っているんだろうが、そうはいかんぞッ!!」
「数分後に立っているのは、俺の方だ!」

〝作戦はお見通し〟とばかりに宣言したのです。

これに対して、

「いや、いつまでも守勢に回っているつもりはない。」
「だいたいのパターンは読んだから、詰んでやるよ。」

そう述べた穂積さんが、右手の短剣を、腹部めがけて繰り出します。

武闘家/アサシン/シーフ盗賊/巫女/神官/クレリック/剣士/弓使い/魔法使い等は、鎧ではなく[胸当て]なので、お腹はガラ空きになっているのです。

まぁ、衣服は着ていますが。

なにはともあれ。

無防備になっている箇所を、正面から〝ドンッ!!〟と突かれたサトシさんが、

「ぐふッ!」

よろめくも、

「むんッ!!」

踏ん張って耐えました。

この隙に、穂積さんが、懐へ飛びみ込もうとします。

「させるか!」

サトシさんが牽制を兼ねて右から左へと払った[木製のヌンチャク]を、身を低くして躱した穂積さんが、

「もらった。」

アッパーカットによる[木短剣]を、顎に〝ガツンッ!!〟とヒットさせたのです。

「がッ?!」

天井を仰いだサトシさんが、膝から崩れ落ちました。

「ありゃ脳が揺れたな。」

そのような見解を示したのは光沖みつおきさんです。

「勝者、穂積選手!!」

これ以上は危険と判断したらしい黒髪ボブさんが、試合を終わらせます。

左のてのひらを額に当て、〝ふぅ――ッ〟と息を吐いたサトシさんに、

「無事か??」

穂積さんが確認しました。

「ああ。」
「軽く意識を失ったが、問題はない。」

そう答えたサトシさんが、

「念のために“体力回復ポーション”を飲んでもいいか?」
「後遺症が出ないように用心しときたいからな。」

審判さんに尋ねたのです。

これを受けて、

「ええ。」
「そないしとくんが宜しいでしょう。」

頷きながら許可する黒髪ボブさんでした―。
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