JK LOOPER

ネコのうた

文字の大きさ
上 下
33 / 291
1st STAGE/ループには回数制限があるようです。

33.現状③

しおりを挟む
「お姉ちゃん、やっつけた!?」

玄関で尋ねてきた妹の琴音ことねに、

「バッチリ!」

私は笑顔で答えます。

靴を脱いで上がったところ、妹の近くに居た咲凛えみりちゃん&葵月はづきちゃんが、

「なんか、琴晴ことはちゃんばかり戦わせて、ごめん。」

「いつも、ありがとね。」

と、代わる代わる述べました。

「いいよ、いいよ、全然。」
「それよりも、着替えて来るね。」

そう答えた私は、階段へと向かいます。

台所では母と叔母さんたちが朝食の支度をしているようで、お味噌汁や卵焼きなどの美味しそうな匂いが漂っていました。


パジャマから私服にチェンジして、広間へと足を運んだところ、父や叔父さんらに重たい空気が流れていました。

「どうしたの?」

出入り口付近に座っていた壱紀かずきくんに、そっと聞いてみます。

壱紀くんは、葵月ちゃんのお兄さんで、身長は168㎝ぐらいです。

高1から高2になる途中の16歳である彼は、中学まで柔道部でした。

辞めた今でも筋トレは欠かしていないようで、割と体格が良いです。

スポーツ刈りでしたっけ? そういう髪型をしております。

「ああ、琴晴ちゃん、おはよう。」

穏やかというか、少し気弱な性格である壱紀くんの挨拶に、

「おはよう。」
「それで?」

と返したところ、

「ああ、うん。」
「うちの父親や、叔父さんたち、それぞれの会社から連絡があって…、どこも社員の3~4割が亡くなってしまったとかで、世の中、危険な状況だから、暫くは自宅待機になったらしいんだ。」
「いつまで続くのかは分からないけど。」

との事でした。

おそらく、同僚が命を落とした悲しみに打ちひしがれていたり、仕事がストップして収入を得られなくなったことに頭を悩ませているのでしょう。

声を掛けづらい雰囲気のなか、私に気付いた聡真そうまくんが、

「あ、おはよう、琴晴ちゃん。」
「出来たよ。」

と、出現させたアイテムを、座卓の上に並べていきます。

その間に、他の人たちが、

「おはよう。」

「外の連中を倒してくれた、という事か。」

「頼りっきりで、すまない。」

「ありがとな。」

といった具合に、口を開いたのです。

〝どうも、どうも〟みたいな感じで、皆に会釈して、長方形のローテーブルに視線を送ったら、体力系と魔力系のポーション/解毒剤/転移の宝玉が、3個ずつ置かれていました。

「ん?」
「数、多くない??」

私が首を傾げたら、

「夜中の2時に、あいつらの所為で目が覚めたから、新たにコピーしておいた。」

と説明しくれたのです。

「おー、やるねぇ。」

ご満悦な私に、

「これさ、一つずつ貰っておいてもいい?」
「明日からも複製していきたいから。」

と、聡真くんが提案します。

「勿論!」
「どんどん増やして、全員に配ろう!」
「いや、いっそ販売して生計に役立てるのもアリ、かな?」

私が今後の展望を考えていたところへ、

「ご飯にするから片付けてー。」

母と叔母さん達が、食事を載せた大きめの黒いトレーお盆を運んできたのでした―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

収納大魔導士と呼ばれたい少年

カタナヅキ
ファンタジー
収納魔術師は異空間に繋がる出入口を作り出し、あらゆる物体を取り込むことができる。但し、他の魔術師と違って彼等が扱える魔法は一つに限られ、戦闘面での活躍は期待できない――それが一般常識だった。だが、一人の少年が収納魔法を極めた事で常識は覆される。 「収納魔術師だって戦えるんだよ」 戦闘には不向きと思われていた収納魔法を利用し、少年は世間の収納魔術師の常識を一変させる伝説を次々と作り出す――

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

処理中です...