上 下
337 / 350
- 最終期・全身にて全霊を賭けて -

第337話 最後の戦い・其之弐

しおりを挟む
“南の総大将”たる[パズズ]が、息を吸い込んでいく。

〝何かくる〟と察したロードらが身構えるなか、[蜂の女王]があるスキルを使う。

そのタイミングで、総大将が【咆哮】を発した。

連合軍の多くが、しゃがんだり、尻餅を着いて、恐怖に震える。

こうした状況で、パズズの後頭部を、[クイーンビー]が“短剣ダガー”で突きに掛かった。

しかし、

「むッ?!」

気配を感じ取ったらしい総大将に、躱されてしまう。

勢い余って通過していく[インセクト昆虫ロード]を、パズズが右手で掴もうとする。

後ろを振り返っていた[蜂の女王]は、全身を捩じるようにして回避した。

そんな[クイーンビー]が、総大将から少し離れた宙で停止する。

どうやら、[インセクトロード]は、先ほど、アサシンの【残影】を扱ったらしい。

なお、【咆哮】は、前方にいる者らには効果があるものの、後方は範囲外である。

とかく。

パズズと[蜂の女王]が隙を窺い合うなか、あちらこちらのクレリックたちが、【ディスオーダー異常リカバリー回復】を用いてゆく。

立とうとする[キャットロード]などを、総大将が回転するのと同時に“サソリの尾”で払う。

態勢が整っていないところを直撃されてしまい、

「ぐあッ!!」

弾かれた王と女王に国主が、横倒れになる。

こうした状況で、パズズが鞘から“ハンティング・ソード”を抜いた。

剣身には何やら模様が施されているみたいだ。

キャットロードのほうに左足を踏み込んだ総大将が、右手の剣を振り上げる。

おそらく【縦断】を使おうとしたのだろう、「じゅ」と言いだしたパズズに、

「挑発!」

空中の[クイーンビー]が少しだけ早くスキルを扱った。

それによって、総大将は[インセクトロード]へと狙いを変える。

武器を払ったり突いたりするパズズではあるが、全てが大振りなため、[蜂の女王]は〝ヒラリ ヒラリ〟と余裕で躱していく。

この間に改めて起きたキャットロード達は、それぞれに“HP回復デラックスDXポーション”を飲んで治癒を完了させた。

余談になるかもしれないが、獅子王/蛇の女王/森人族の長は、鎧や盾にひびが入っている。

さて…。

ふと正気に戻ったらしく動きを一旦ストップした総大将の、右膝の外側に“ホワイト色とオレンジ色が混じったかのような矢”が当たるなり〝ボオォンッ!!〟と爆発した。

[エルフの国主]による【伝導】で、パズズが若干バランスを崩す。

そこを、間合いに入った[バジリスク]が、“伸び”をするかのようにして、[森人族の長] によって亀裂が生じていた中心地に、

「一点集中!」

“ロングソード”をヒットさせる。

この部分を砕かれた総大将は、

「うッ!!」

眉間にシワを寄せながら、ぐらつく。

踏み止まったパズズへと[キャットロード]が猛ダッシュした。

そうして、割と高くジャンプした[獅子王]が、口から【ビーム】を放射する。

負傷している箇所に“追加のダメージ”をくらった総大将は、膝から崩れ落ちそうになるも、咄嗟に逆さにした剣を〝杖代わり〟にしてこらえた。

好機と捉えた[各ロードと国主]が、一斉に何かしらの【スキル】を用いようとする。

だが。

パズズに再び〝ウオオォォ――ッ!!!!〟と【咆哮】を使われてしまうのであった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...