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- 最終期・全身にて全霊を賭けて -
第293話 安息・序
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俺たちは、久しぶりに、王城や、その近くの宿舎へと、帰ってきた。
ミノタウロス元帥らも誘ったのだが、モンスター達からは〝ダンジョンでの生活に慣れたので遠慮させてください〟と断られてしまったのである。
このため、セレモニーが始まる30分前までには、三年留学生の【ウィッチ】が迎えに行くとの話しでまとまった。
取り敢えず、誰もが、ゆっくりと一日を過ごしたのである…。
二日目のPM16:30あたりに、城の庭の東側に主だった者たちが集まった。
そこで、トーキー王が、金貨1枚ずつを配ったのである。
人間であれ魔物であれ、出店を楽しんでもらい、余った分は今後なにかしらを購入する際に使ってもらって構わないとの事であった。
これは余談になるかもしれないが、うちらの理数系の男性教師によれば、〝この世界の金貨一枚は、日本の壱万円ぐらいでしょう〟との計算である。
いずれにせよ、賢者の【瞬間転移】で、[総合体育館]の近くに“テレポート”する俺たちだった。
館内の競技スペースには、舞台とアリーナ席が設けられている。
それ以外のスタンド席も使用可能となっており様々な客が腰掛けているが、ステージ裏は〝関係者以外立入禁止〟になっていた。
ま、スタジアムや武道館とかで、コンサートなどが催される時の、あの感じである。
なお、舞台は、[朱色の幕]と[簡易的な屋根]によって、内側が見えないようにされていた。
さて。
定刻の5分前となり、ステージの左側から“副会長”が出てきたのである。
なんでも、下手という名称らしい。
逆に舞台の右側を上手と呼ぶのだそうだ。
……、本題に戻ろう。
ステージの中心かつ、幕の前で、止まった副会長が、「本日は、お忙しいところ、ご来場いただき、誠に」と、喋り始めた。
この声が遠くまで響くなか、舞台の両端を目視した俺は、
「やっぱ、あの二つって、スピーカーだよな…。」
「“マイク”は??」
軽く首を傾げたのである。
そのような疑問に、後列から、
「アヤツの足元に、魔石が備え付けてあるじゃろ。」
アンデッドソーサラーが声をかけてきた。
「ん??」
「……、あー、アレか。」
ステージの先に置かれたトロフィーカップみたいな黒い物体に、[楕円形で透明のジュエル]が収められているのを、俺が認識したところ、
「うむ。」
「西陸のキートフ王国で譲り受けた魔道具じゃ。」
「“偽りの教皇”が扱っておった…。」
「もともとは、〝神々への祈り〟を吸収して、封印を解くために発動しとったが、それを儂が再構成したのじゃよ。」
「お前さんの眷属であるクレリックランサー達に頼まれて、〝音を吸収できるように〟のッ。」
「これが、あの“箱型の装置”に連動しておる、といった仕組みじゃ。」
リッチが解説したのである。
「箱…、ああ、“スピーカー”か。」
一応に納得した俺が、
「どうやって繋がってんだ?」
「ケーブルとか無さそうだけど??」
新たに尋ねてみたら、
「スピーカー自体は、“科学開発班”に図面を書いてもらい、都の職人の方々に作っていただきました。」
「あれらにも魔石が入っていまして……、魔導師さんが魔力を流し込んだことによって機能しているという訳です。」
一年生書記が、こう伝えてきた。
「んん~、…、イマイチよく分からん。」
眉間にシワを寄せた俺の左隣で、
「まぁ、〝素晴らしい〟という事に変わりはありますまい。」
国王が感心する。
その更に左では、
「ええ、確かに。」
王妃が頷いた。
これらが聞こえたらしい魔霊が、
「何もかも、全ては、儂が天才であればこその結果じゃな!!」
〝カーッカッカッカッカ――ッ!〟と高笑いする。
もはやコイツにとっての“テンプレ”に、呆れるしかない俺であった―。
ミノタウロス元帥らも誘ったのだが、モンスター達からは〝ダンジョンでの生活に慣れたので遠慮させてください〟と断られてしまったのである。
このため、セレモニーが始まる30分前までには、三年留学生の【ウィッチ】が迎えに行くとの話しでまとまった。
取り敢えず、誰もが、ゆっくりと一日を過ごしたのである…。
二日目のPM16:30あたりに、城の庭の東側に主だった者たちが集まった。
そこで、トーキー王が、金貨1枚ずつを配ったのである。
人間であれ魔物であれ、出店を楽しんでもらい、余った分は今後なにかしらを購入する際に使ってもらって構わないとの事であった。
これは余談になるかもしれないが、うちらの理数系の男性教師によれば、〝この世界の金貨一枚は、日本の壱万円ぐらいでしょう〟との計算である。
いずれにせよ、賢者の【瞬間転移】で、[総合体育館]の近くに“テレポート”する俺たちだった。
館内の競技スペースには、舞台とアリーナ席が設けられている。
それ以外のスタンド席も使用可能となっており様々な客が腰掛けているが、ステージ裏は〝関係者以外立入禁止〟になっていた。
ま、スタジアムや武道館とかで、コンサートなどが催される時の、あの感じである。
なお、舞台は、[朱色の幕]と[簡易的な屋根]によって、内側が見えないようにされていた。
さて。
定刻の5分前となり、ステージの左側から“副会長”が出てきたのである。
なんでも、下手という名称らしい。
逆に舞台の右側を上手と呼ぶのだそうだ。
……、本題に戻ろう。
ステージの中心かつ、幕の前で、止まった副会長が、「本日は、お忙しいところ、ご来場いただき、誠に」と、喋り始めた。
この声が遠くまで響くなか、舞台の両端を目視した俺は、
「やっぱ、あの二つって、スピーカーだよな…。」
「“マイク”は??」
軽く首を傾げたのである。
そのような疑問に、後列から、
「アヤツの足元に、魔石が備え付けてあるじゃろ。」
アンデッドソーサラーが声をかけてきた。
「ん??」
「……、あー、アレか。」
ステージの先に置かれたトロフィーカップみたいな黒い物体に、[楕円形で透明のジュエル]が収められているのを、俺が認識したところ、
「うむ。」
「西陸のキートフ王国で譲り受けた魔道具じゃ。」
「“偽りの教皇”が扱っておった…。」
「もともとは、〝神々への祈り〟を吸収して、封印を解くために発動しとったが、それを儂が再構成したのじゃよ。」
「お前さんの眷属であるクレリックランサー達に頼まれて、〝音を吸収できるように〟のッ。」
「これが、あの“箱型の装置”に連動しておる、といった仕組みじゃ。」
リッチが解説したのである。
「箱…、ああ、“スピーカー”か。」
一応に納得した俺が、
「どうやって繋がってんだ?」
「ケーブルとか無さそうだけど??」
新たに尋ねてみたら、
「スピーカー自体は、“科学開発班”に図面を書いてもらい、都の職人の方々に作っていただきました。」
「あれらにも魔石が入っていまして……、魔導師さんが魔力を流し込んだことによって機能しているという訳です。」
一年生書記が、こう伝えてきた。
「んん~、…、イマイチよく分からん。」
眉間にシワを寄せた俺の左隣で、
「まぁ、〝素晴らしい〟という事に変わりはありますまい。」
国王が感心する。
その更に左では、
「ええ、確かに。」
王妃が頷いた。
これらが聞こえたらしい魔霊が、
「何もかも、全ては、儂が天才であればこその結果じゃな!!」
〝カーッカッカッカッカ――ッ!〟と高笑いする。
もはやコイツにとっての“テンプレ”に、呆れるしかない俺であった―。
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