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- 最終期・全身にて全霊を賭けて -

第263話 一括案

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俺と姫殿下は、城の正面に“テレポート”した。

俺たちが訪れることを聞いていたのであろう二体の門兵が、

「これは大魔王様。」

「ようこそ、お越しくださいました。」

恭しく頭を下げたのである。

ちなみに、どちらもガーゴイルだ。

そのうちの一体が、

「皆さんが待っていらっしゃる部屋へと、ご案内いたします。」

こう述べて、俺と聖女を先導したのだった……。


俺達が大きめの[応接室]に入ったところ、ガーゴイルロードに、トーキーのメンバーが、起立して、会釈する。

「大魔王様は、どうぞ、こちらへ。」

[ガーゴイルの王]に勧められた俺は、なかでも豪華な“一人用ソファ”に座った。

ガーゴイルロードは、俺に服従されていないものの、“”と敬称してくれている。

「今、お飲み物を持ってこさせますが…、何が宜しいでしょうか?」

伺ってきた[ガーゴイルの王]に、

「じゃあ、コーヒーを。」

そう頼んだら、

「畏まりました。」
「おい。」

側に控えていた二人の女中メイドらに声を掛けた。

どちらも、ケモ耳&尻尾が生えている。

一人は馬で、もう一人は狐のようだ。

“混血”に違いない彼女らが準備するなか、

「全員、着席していいぞ。」

と、促す俺であった。

なお、[トーキーの姫]は、勇者や魔法剣士と一緒のソファに腰掛け、紅茶をリクエストしたのである。

「で??」
「“魔物の国々”の要望は?」

俺が訊ねたところ、

「はッ。」
「これより、中立を保っている“羊の国”に連絡いたします。」
「此度の件は、“シープロード”が間に入り〝公平を期す〟と約束しておりますので……、暫し時間をくださいませ。」

このように答えたガーゴイルロードが、【念話】を発動した。

「…ふむ、……ふむ、………ふぅむ、…………なるほど。」
「相分かった。」
「オレの方から、大魔王様に、お伺いしよう。」
「それでは、また、後で。」

連絡を終えた[ガーゴイルの王]に、

「どんな状況だ??」

俺が質問してみたら、

「“羊の女王”によれば、犬、トロール、ネズミ、ノール、サイ、サソリの、各ロードたちは、大魔王様を品定めしたがっているそうです。」
「そこで。」
「明日の午後二時より、“犬の国”に在る闘技場で試合を行いたい、と…。」
「大魔王様を含めた六名の代表に参加するよう、申しておるとの事でした。」

そう説明したのである。

「そっか。」
(……、やっぱり、“エルフの国主”が見た未来どおりになっていってるみたいだな。)
(断片的であって、100%確実じゃないだろうから、用心する必要があるとしても、問題ねぇだろう。)
(きっと…。)
「よし!」
「受けて立とう!!」

少なからず不安はあるものの、俺は前向きに決断した。

「それでは、シープロードに伝えます。」
「皆さま、今日のところは、我が城にお泊まりください。」

このように述べたガーゴイルロードが、スキルを再び扱おうとしている。

「ああ、よろしくな。」

そう返した俺は、“馬のメイド”に手渡された珈琲を、口に運ぶのだった―。
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