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- 第五期・再びの異世界 -
第242話 リノベーションダンジョン・前編
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山頂に建っている[遺跡]の正面に“テレポート”したところ、
「おおー! 大魔王様、お越しいただき恐縮でございます。」
ミノタウロス元帥を筆頭に、約二千体の魔物が頭を下げた。
「なんだ?」
「ずっと、ここに居たのか??」
俺が訊ねたら、
「はい。」
「皆でお迎えすべく、一時間ほど待機しておりました。」
元帥が答えたのである。
「それは…、わざわざ、ご苦労だったな。」
俺の社交辞令に、
「ありがたき幸せ!!」
モンスター達が跪く。
「いや、大げさだから直れよ。」
俺が促したところ、
「それでは失礼して……。」
魔物らが立ち上がる流れで、ジャイアントアント参謀役が、
「新しくなった内部を、ご案内いたします。」
軽く会釈した。
まず通されたのは、遺跡の中央だ。
「おぉッ?!」
「食堂がデカくなっているな。」
驚く俺に、
「ええ、三千は悠に入れます。」
「この奥は厨房でして、そちらも割と広めです。」
参謀役が述べる。
もともと肉や野菜に魚介類などを生で食していた連中だが、かつて何度となく俺たちと野営したことで、ある程度の調理法を覚えていた。
「次に行きましょう。」
トロールによって、全員が東側へと足を運ぶ…。
「風呂も造ってもらったのか!?」
俺達が目を丸くしていたら、
「はい。」
「この南に隣接しているのはトイレですが、どちらも男性用です。」
「西側には女性用の浴場とトイレが設けられております。」
ジャイアントアント参謀役が説明したのである。
俺らは北側へと回った。
そこには、下へと続く階段が在り、右隣の床には“魔法陣”が見受けられる。
「結構な数の部屋があった筈だが……、完全に潰したんだな。」
俺が独り言かのように呟いたところ、
「ダンジョンを改造してもらったので、〝遺跡には必要ない〟と、満場一致で決まりました。」
トロールが教えてくれた。
これが聞こえたらしい一年生書記が、
「お部屋って、どういう状態になっているんですか?」
そう質問したのである。
「今回、使ってもらうのは、主に地下5階層と6階層になる。」
「しかし、大魔王様がたや、一部の者たちには、元宝物庫の近くを提供いたす。」
「どれにも、シャワーと厠が設備されている。」
「いずれにしろ、移動しよう。」
「直に見てもらうのが、何かと早いからな。」
このように伝えてきたのは、ミノタウロス元帥だ。
「じゃあ、階段を下りていくか。」
俺が周囲に告げるも、
「いえ、私の“瞬間転移”で赴きましょう。」
聖女が提案してきたので、それを採用した…。
[B5]にて。
「壁の至る所に“ドア”が付けられていますね。」
「つまり……、これらの向こうに部屋が存在していると??」
二年の弓道部エースが尋ね、
「ええ。」
参謀役が頷く。
「それにしても…、よく短期間で造れましたね。」
「相当な数でしょうに。」
勇者の疑問に、東陸ドワーフの棟梁が、
「職人達のなかには“空間操作”というスキルを収得している者らがおりましてな……。」
「これを扱えば、壁や、床であったり、天井に、想像した穴をいともたやすく生じさせる事が可能なのです。」
「四角形であれ、円形であれ、どんな形状のものであっても。」
「ちなみに、その際に出る不要な石や土などは、自分の好きな場所に転送できます。」
「ま、土木建築の為の能力なので、戦闘には役に立ちませんがな。」
そう解説しながら、苦笑いした。
「いえ、素晴らしいですよ。」
「まさか、こんな風に様変わりするとは、思いもよりませんでした。」
感心したのは、魔法剣士だ。
「あー、俺らの中じゃ、お前が最も多く挑んでいたからな、このダンジョンに…。」
「そういや、お前、初めて俺とかに会ったとき、なんで喧嘩ふっかけてきたんだ?」
「つーか、そのために、城に乗り込んで来ただろ、わざわざ。」
俺が視線を送ったところ、
「あれ?? 言っていませんでしたっけ?」
「……、実は。」
「諸国を旅していたときに、とある酒場で噂を耳にしまして…。」
「〝トーキー王国は、勇者を召喚することに成功したものの、魔人に国中を支配されてしまったようだ〟と……。」
「この国は私の故郷ですので、〝その魔人に民衆が虐げられているのであれば、救わねばならない〟と義憤に駆られた次第でございます。」
「結局は、要らぬ心配でしたが…。」
このように返す魔法剣士であった―。
「おおー! 大魔王様、お越しいただき恐縮でございます。」
ミノタウロス元帥を筆頭に、約二千体の魔物が頭を下げた。
「なんだ?」
「ずっと、ここに居たのか??」
俺が訊ねたら、
「はい。」
「皆でお迎えすべく、一時間ほど待機しておりました。」
元帥が答えたのである。
「それは…、わざわざ、ご苦労だったな。」
俺の社交辞令に、
「ありがたき幸せ!!」
モンスター達が跪く。
「いや、大げさだから直れよ。」
俺が促したところ、
「それでは失礼して……。」
魔物らが立ち上がる流れで、ジャイアントアント参謀役が、
「新しくなった内部を、ご案内いたします。」
軽く会釈した。
まず通されたのは、遺跡の中央だ。
「おぉッ?!」
「食堂がデカくなっているな。」
驚く俺に、
「ええ、三千は悠に入れます。」
「この奥は厨房でして、そちらも割と広めです。」
参謀役が述べる。
もともと肉や野菜に魚介類などを生で食していた連中だが、かつて何度となく俺たちと野営したことで、ある程度の調理法を覚えていた。
「次に行きましょう。」
トロールによって、全員が東側へと足を運ぶ…。
「風呂も造ってもらったのか!?」
俺達が目を丸くしていたら、
「はい。」
「この南に隣接しているのはトイレですが、どちらも男性用です。」
「西側には女性用の浴場とトイレが設けられております。」
ジャイアントアント参謀役が説明したのである。
俺らは北側へと回った。
そこには、下へと続く階段が在り、右隣の床には“魔法陣”が見受けられる。
「結構な数の部屋があった筈だが……、完全に潰したんだな。」
俺が独り言かのように呟いたところ、
「ダンジョンを改造してもらったので、〝遺跡には必要ない〟と、満場一致で決まりました。」
トロールが教えてくれた。
これが聞こえたらしい一年生書記が、
「お部屋って、どういう状態になっているんですか?」
そう質問したのである。
「今回、使ってもらうのは、主に地下5階層と6階層になる。」
「しかし、大魔王様がたや、一部の者たちには、元宝物庫の近くを提供いたす。」
「どれにも、シャワーと厠が設備されている。」
「いずれにしろ、移動しよう。」
「直に見てもらうのが、何かと早いからな。」
このように伝えてきたのは、ミノタウロス元帥だ。
「じゃあ、階段を下りていくか。」
俺が周囲に告げるも、
「いえ、私の“瞬間転移”で赴きましょう。」
聖女が提案してきたので、それを採用した…。
[B5]にて。
「壁の至る所に“ドア”が付けられていますね。」
「つまり……、これらの向こうに部屋が存在していると??」
二年の弓道部エースが尋ね、
「ええ。」
参謀役が頷く。
「それにしても…、よく短期間で造れましたね。」
「相当な数でしょうに。」
勇者の疑問に、東陸ドワーフの棟梁が、
「職人達のなかには“空間操作”というスキルを収得している者らがおりましてな……。」
「これを扱えば、壁や、床であったり、天井に、想像した穴をいともたやすく生じさせる事が可能なのです。」
「四角形であれ、円形であれ、どんな形状のものであっても。」
「ちなみに、その際に出る不要な石や土などは、自分の好きな場所に転送できます。」
「ま、土木建築の為の能力なので、戦闘には役に立ちませんがな。」
そう解説しながら、苦笑いした。
「いえ、素晴らしいですよ。」
「まさか、こんな風に様変わりするとは、思いもよりませんでした。」
感心したのは、魔法剣士だ。
「あー、俺らの中じゃ、お前が最も多く挑んでいたからな、このダンジョンに…。」
「そういや、お前、初めて俺とかに会ったとき、なんで喧嘩ふっかけてきたんだ?」
「つーか、そのために、城に乗り込んで来ただろ、わざわざ。」
俺が視線を送ったところ、
「あれ?? 言っていませんでしたっけ?」
「……、実は。」
「諸国を旅していたときに、とある酒場で噂を耳にしまして…。」
「〝トーキー王国は、勇者を召喚することに成功したものの、魔人に国中を支配されてしまったようだ〟と……。」
「この国は私の故郷ですので、〝その魔人に民衆が虐げられているのであれば、救わねばならない〟と義憤に駆られた次第でございます。」
「結局は、要らぬ心配でしたが…。」
このように返す魔法剣士であった―。
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