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- 第四期・大陸を越えて -

第174話 アンデッドソーサラー

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宙に浮いているのは、魔術師とおぼしきスケルトン骸骨だった。

この事を周りに教えたところ、

「もしかしたら…、“リッチ”かもしれませんね。」

との見解を、一年生書記が示したのである。

彼女や、三年生の【ウィッチ魔女】によれば、“魔霊”とも呼ばれたりする存在とのことだ。

魔術を極めんとする高位の魔法使いや僧侶が、自らを“Living Dead(生けるしかばね)”に変化させるらしい。

人間の一生は短く、魔術を追求するには、あまりにも時間が足りないので、不老を得る為に“降霊術”たる[死霊魔法]を発動するのだそうだ。

リッチは、普通のスケルトンやゾンビなどのように、知性を持っていないか、あるいは、知能が極端に低いアンデッドらとは異なり、高い頭脳や技能を有しているので、自分よりも下位の者たちを従えている描写が多いらしい。

一方で、不死身になろうとした魔法使いや僧侶が、魔術に失敗してしまい、リッチ死体になるという描き方のファンタジーもあるようだ。

その魔法は、あまりにも高度すぎて、容易には扱いきれないので、まず成功しない、みたいな展開である。

この場合、魔霊になってしまった人物は、精神を蝕まれ、発狂し、無差別にを振りまく厄災に成り果てるのだという。

姿に関しても、〝体はシワが寄った抜け殻みたいになる〟や、〝骨と皮だけになる〟であったり、〝骨のみである〟だのと、幾つかの説があるみたいだ……。


リッチになった者は、金銀財宝や酒池肉林などから興味をなくすらしいのだが…、敵軍の奴は、宝石類の指輪やブレスレットにネックレスを装着している。

ネックレスには、10㎝大の“赤いクリスタル”が付属しているようだ。

それ・・を左手で握った魔霊が、右手の“金の杖”を突き出した。

これによって、[屍の軍]が突撃を開始したのである。

すかさず、[狼の王]が【咆哮】を用いた。

敵の七割が停止するも、三割は殺到して来る。

無論、[アンデッドロード]と[リッチの魔術師]も意に介さず、こっちに向かってきた。

味方の軍勢が迎え撃つなか、鞘から[常闇とこやみつるぎ]を抜いた俺は、直径10Mの“黒い球体”を出現させたのである。

スカルドラゴンの真上に。

その結果、[骨の竜]らが、重力に押されて、うつ伏せになった。

「ぬおッ?!」

バランスを崩し、地面に叩き付けられた魔霊が、

「これは、“常闇”かッ!?」

と驚く。

どうやら喋れるみたいので、あのスケルトンは狂っていないタイプの[リッチ]なのだろう。

ま、このまま潰すつもりだから、関係ねぇけど。

球体の範囲内で、地に這いつくばっている連中が〝ミシミシ〟と音を立てる。

あとは、一気に勝負を着けるだけだった。

のだが……。

[アンデッドロード]が、口を〝ガガ、ガガガガァーッ〟と半開きにして、幅2.5Mかつ、外側が紫色で内側が白色の【光線ビーム】を、

ドォウッ!!

と、俺めがけて、放ってきたのである―。
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