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- 第四期・大陸を越えて -

第172話 次なるマスター

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「そうなのか?」

訊ねた俺に、

「うむ。」

拾った鞘を差し出しながら、

「“常闇とこやみ”は、自身が主と認めた者が柄を握っている時にだけ、黒い霧状のつるぎを発動させるそうだ。」
「ただ…、1秒ごとに1ポイントのMPを吸収していくらしいので、不要の際は納めておくがよかろう。」

[ワーウルフのロード]が述べた。

「お、おう。」

受け取った鞘に剣を納めた俺が、常闇を渡し返そうとしたところ、

「これは、そなたが持っておれ。」

と、人狼の王が述べたのである。

「いいのか?」

確認したところ、

「その剣を扱える者は、我が国にはおらぬ。」
「ぜひ、有効活用してくれ。」
「常闇……、いや、元は“魔破まはの剣”の為にもな!」

そう答えたのだった。

「じゃあ、ありがたく。」

軽く会釈した俺が、

「“黄泉よみの甲冑”は、どうする?」
「多分、装備できたとしても、手に余る代物なんだろ??」

と聞いてみたら、

「ええ、そうですね。」
「改めて保管しておくのがいいのでしょうけれども…。」

[馬の女王]が考え込み、

「今回と同じような事が再び起こらないように、分散させてください。」
わたくしどもの国と、狼の国や、魔人の国に、トーキー王国で。」

との提案をしてきたのである。

「構いませんが……、正式に同盟を結んで国交を開くことになりますけど?」

[魔人の女王]が窺ったところ、

「ええ。」
「こちらは、もう、“中立国”ではありませんので、そうさせてください。」

[半ペガサスのロード]が、お辞儀したのである。

「んー、この件は、俺の独断で決めるわけにはいかねぇな…。」

少し離れた位置に居る[トーキーの姫]を呼び寄せて、事情を説明していく。

「成程。」
「分かりました。」
「私の方から、王である父に話しを付けましょう。」

了解した聖女に兜を託し、俺は常闇の剣を左腰に下げたのである。

他のパーツに関しては、マント付きの鎧を[馬の国]が、両脚の部分を[狼の国]が、両腕の部分を[魔人の国]が、それぞれに所有する運びとなった。

一部始終を黙って見ていた一年の生徒会書記が、

「あの! 主様!」
「“大地の槍”を使わなくなるのであれば、私が貰いたいです!!」

と、言ってきたのである。

「ん?」
「そう、だな……。」
「ま、お前が扱えるんだったならなッ。」

俺は、アイテムBOXから[大地の槍]を引っ張り出した。

これを手にした一年生書記に、

「誰も居ない所に向けて、やってみろ。」

そのように指示する。

(どうせ無理だろう。)

と思いつつ…。

「はい!」

元気よく答えた彼女が、ひらけた場所に小走りで移動して、槍の腹を、地面に〝ドンッ!〟と叩き付けた。

これによって、直径5M×高さ8Mほどの“歪な円錐形”に、

ズドォオ――ンッ!!

と、地が隆起したのだ。

「おお――ッ!!」
「出来ましたよ、主様!!」

一年の生徒会書記が瞳を輝かせる。

「あ、ああ。」
(流石は“クレリックランサー”ということか?)

驚きながらも感心した俺は、

「正式に譲ってやるから、もっと正確に扱えるよう、精進しろよ。」

そう促した。

「ありがとうございます!!」

深々と頭を下げる一年生書記を眼前に、

(俺も“常闇”を完全に扱えるようになんないと、示しがつかねぇな。)

鍛錬することを秘かに誓ったのである―。
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