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- 第二期・各々の立場 -
第37話 東へ
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『急用か?』
と、聞いてみたところ、蛇のモンスターが、
『なんでも、〝トーキーの同盟国から援軍要請がきた〟とのことで…、〝詳細は城にてお話させて戴きたいので、一度お戻りくださいませんか?〟と、王が申しておるそうでございます。』
と返してきた。
何を隠そう、俺は、[ゴーレムのダンジョン]へ出発する前に、
「もし何かあったらチヨーダ森林の川に行け。“念話”を使える魔物が居るから。」
と、王や宰相に指示しておいたのだ。
『分かった。〝すぐに戻る〟と使者に伝えといてくれ。』
と通信を絶った俺が皆に事情を説明したら、大将軍が、
「成程…。」
「して、如何いたします?!」
と、窺ってきたので、
「まぁ、例の如く俺一人で空を…。」
と発言している途中で、勇者が、
「お待ちください、主様。」
「私、何を隠そう、LV.30になった時に、〝瞬間転移〟を収得いたしております!」
と、右手を左胸に添えて、背筋を伸ばし、ドヤ顔してきた。
これに、聖女が、
「それでしたら、私も手に入れております!」
「なので、私の瞬間転移をお使いくださいませ。」
と、微笑んだ。
〝ムッ〟とした勇者が、
「いいえ、主様。私をお選びください。」
と歩み出たら、
「いえいえ、私でございまよねッ。主様♡」
と、聖女が対抗した。
「まぁ待て、お前たち。」
「ダンジョンに潜っている連中がまだいるから、先発隊と後続隊に分けよう。」
と仲裁に入ったところ、
「それであれば、勇者たる私が先発隊です!」
「違います。聖女である私に決まっております!」
「残念ながら、主様は私の方を好いておられますので、お引き下がりを!」
「主様は、私の方を愛してくださっていますので、そちらこそ!」
といった不毛なラリーが勃発した。
俺の右隣にいた【アサシン】でもある二年生の生徒会書記に、
「あいつらって、もともと仲良かったよな?」
「いつから、あんな感じになったんだ??」
と、訊ねてみたら、
「お二人は同年であり、どちらも特殊な存在なので、ライバル心が芽生えたのでございましょう…。〝主様にとっての一番〟を巡って。」
と回答したうえに、
「ちなみに、私は、二番目でも三番目でも構いません。」
と、目を〝キリッ☆〟とした。
俺の左隣にいる【クレリック】の一年生書記が、
「あの…、私も…、何番目であっても大丈夫です♡」
と便乗してデレるのだった。
「ああッ!もうッ! これじゃ埒が明かないわ! “じゃんけん”で決めましょう!」
と、提案した勇者に、聖女が、
「ジャン・ケン??」
「なんですの? それは…。」
と首を傾げる。
この世界には、“くじ引き”はあるものの、“じゃんけん”はないらしい。
勇者が一通り教えてあげたところ、
「良いでしょう。受けて立ちますわ!」
と、ルールを理解した聖女が拳を握る。
「じゃーんッ、けーんッ、ぽんッ!」の結果…。
“チョキ”の勇者が、“パー”を出した聖女に、勝利した。
「くぅ~ッ。」
と、悔しがる聖女を横目に、誇らしげな勇者が、
「それでは先に参りましょう、主様。」
と地面に魔法陣を展開する。
すると、小将軍が、
「姫殿下を一人きりにさせるわけにはいきませんので、私は残ります。」
と、頭を下げた。
「うむ。」
「では…、中将軍や魔法剣士などの、残りのメンバーが1階に上がってきたら、一緒に帰ってこい。」
と許可した俺は、その場に居合わせた約1600人(体?)と共に〝シュンッ!〟と消えた。
城の会議室には、国王/宰相/大将軍/勇者に、ミノタウロスとメスのジャイアントアントが出席した。
人間と直に話せるようになったミノタウロスが、
「魔物代表として参加させて戴きとうございます!」
と、主張したのだ。
(一理ある)と思った俺だったが、ミノタウロスは割と〝バ〟から始まり、〝カ〟で終わるアレなので、勤勉なタイプのジャイアントアントに参謀役として同席させた。
ちなみに、[バンドウイルカ]ではない。
あしからず…。
「で?」
と促したら、王が、
「かれこれ40年近く同盟関係にある、東の〝バラーキ王国〟が助けを求めておりまして…。」
「立場上、断る訳にもいきませんでしたもので。」
と、口を開いた。
「つまり…、〝どこか別の国に攻め込まれている〟ということか?」
と確認したところ、
「バラーキの東に位置する、通称〝スライムの国〟が相手の模様です。」
との事だった。
「ん? スライムって、そんなに強くないんじゃ??」
と、疑問を呈する俺に、ミノタウロスが、
「いえ、ご主君。彼奴等は伸縮自在が故に、厄介でございます。」
と述べて、ジャイアントアントが、
「まるで、“簀巻き”の如く身体の自由を奪ってきたり、“投網”のように絡み付いては、そのまま窒息死させてきます。」
と、補足する。
(ふ~む…。)
(別の異世界に転生した、最強のスライムと言っても差し支えのない、“リ○ル=テン○スト”も、やたらと膨張するしな…。)
と俺は納得した。
更には、〝LV.50以上のスライムたちは、何かしらの[スキル]を得ているうえに、人の姿に[擬態化]できる〟という。
水色のスライムは様々な物を溶かす【溶融】を、紫色は【毒】を、黄色は【混乱】を、そして赤色は【麻痺】を扱うのだとも…。
いずれにせよ、この“クエスト”を断ろうものなら、トーキー王国の信頼が失墜するだけでなく、服従させていない国々から俺が舐められかねない。
なので、聖女たちと合流した後に、東へ赴く意向を固めたのだった―。
と、聞いてみたところ、蛇のモンスターが、
『なんでも、〝トーキーの同盟国から援軍要請がきた〟とのことで…、〝詳細は城にてお話させて戴きたいので、一度お戻りくださいませんか?〟と、王が申しておるそうでございます。』
と返してきた。
何を隠そう、俺は、[ゴーレムのダンジョン]へ出発する前に、
「もし何かあったらチヨーダ森林の川に行け。“念話”を使える魔物が居るから。」
と、王や宰相に指示しておいたのだ。
『分かった。〝すぐに戻る〟と使者に伝えといてくれ。』
と通信を絶った俺が皆に事情を説明したら、大将軍が、
「成程…。」
「して、如何いたします?!」
と、窺ってきたので、
「まぁ、例の如く俺一人で空を…。」
と発言している途中で、勇者が、
「お待ちください、主様。」
「私、何を隠そう、LV.30になった時に、〝瞬間転移〟を収得いたしております!」
と、右手を左胸に添えて、背筋を伸ばし、ドヤ顔してきた。
これに、聖女が、
「それでしたら、私も手に入れております!」
「なので、私の瞬間転移をお使いくださいませ。」
と、微笑んだ。
〝ムッ〟とした勇者が、
「いいえ、主様。私をお選びください。」
と歩み出たら、
「いえいえ、私でございまよねッ。主様♡」
と、聖女が対抗した。
「まぁ待て、お前たち。」
「ダンジョンに潜っている連中がまだいるから、先発隊と後続隊に分けよう。」
と仲裁に入ったところ、
「それであれば、勇者たる私が先発隊です!」
「違います。聖女である私に決まっております!」
「残念ながら、主様は私の方を好いておられますので、お引き下がりを!」
「主様は、私の方を愛してくださっていますので、そちらこそ!」
といった不毛なラリーが勃発した。
俺の右隣にいた【アサシン】でもある二年生の生徒会書記に、
「あいつらって、もともと仲良かったよな?」
「いつから、あんな感じになったんだ??」
と、訊ねてみたら、
「お二人は同年であり、どちらも特殊な存在なので、ライバル心が芽生えたのでございましょう…。〝主様にとっての一番〟を巡って。」
と回答したうえに、
「ちなみに、私は、二番目でも三番目でも構いません。」
と、目を〝キリッ☆〟とした。
俺の左隣にいる【クレリック】の一年生書記が、
「あの…、私も…、何番目であっても大丈夫です♡」
と便乗してデレるのだった。
「ああッ!もうッ! これじゃ埒が明かないわ! “じゃんけん”で決めましょう!」
と、提案した勇者に、聖女が、
「ジャン・ケン??」
「なんですの? それは…。」
と首を傾げる。
この世界には、“くじ引き”はあるものの、“じゃんけん”はないらしい。
勇者が一通り教えてあげたところ、
「良いでしょう。受けて立ちますわ!」
と、ルールを理解した聖女が拳を握る。
「じゃーんッ、けーんッ、ぽんッ!」の結果…。
“チョキ”の勇者が、“パー”を出した聖女に、勝利した。
「くぅ~ッ。」
と、悔しがる聖女を横目に、誇らしげな勇者が、
「それでは先に参りましょう、主様。」
と地面に魔法陣を展開する。
すると、小将軍が、
「姫殿下を一人きりにさせるわけにはいきませんので、私は残ります。」
と、頭を下げた。
「うむ。」
「では…、中将軍や魔法剣士などの、残りのメンバーが1階に上がってきたら、一緒に帰ってこい。」
と許可した俺は、その場に居合わせた約1600人(体?)と共に〝シュンッ!〟と消えた。
城の会議室には、国王/宰相/大将軍/勇者に、ミノタウロスとメスのジャイアントアントが出席した。
人間と直に話せるようになったミノタウロスが、
「魔物代表として参加させて戴きとうございます!」
と、主張したのだ。
(一理ある)と思った俺だったが、ミノタウロスは割と〝バ〟から始まり、〝カ〟で終わるアレなので、勤勉なタイプのジャイアントアントに参謀役として同席させた。
ちなみに、[バンドウイルカ]ではない。
あしからず…。
「で?」
と促したら、王が、
「かれこれ40年近く同盟関係にある、東の〝バラーキ王国〟が助けを求めておりまして…。」
「立場上、断る訳にもいきませんでしたもので。」
と、口を開いた。
「つまり…、〝どこか別の国に攻め込まれている〟ということか?」
と確認したところ、
「バラーキの東に位置する、通称〝スライムの国〟が相手の模様です。」
との事だった。
「ん? スライムって、そんなに強くないんじゃ??」
と、疑問を呈する俺に、ミノタウロスが、
「いえ、ご主君。彼奴等は伸縮自在が故に、厄介でございます。」
と述べて、ジャイアントアントが、
「まるで、“簀巻き”の如く身体の自由を奪ってきたり、“投網”のように絡み付いては、そのまま窒息死させてきます。」
と、補足する。
(ふ~む…。)
(別の異世界に転生した、最強のスライムと言っても差し支えのない、“リ○ル=テン○スト”も、やたらと膨張するしな…。)
と俺は納得した。
更には、〝LV.50以上のスライムたちは、何かしらの[スキル]を得ているうえに、人の姿に[擬態化]できる〟という。
水色のスライムは様々な物を溶かす【溶融】を、紫色は【毒】を、黄色は【混乱】を、そして赤色は【麻痺】を扱うのだとも…。
いずれにせよ、この“クエスト”を断ろうものなら、トーキー王国の信頼が失墜するだけでなく、服従させていない国々から俺が舐められかねない。
なので、聖女たちと合流した後に、東へ赴く意向を固めたのだった―。
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