上 下
16 / 350
- 第一期・異世界召喚 -

第16話 老騎士

しおりを挟む
総大将とおぼしき騎士が、自身の後方に向けて、

「戻れッ! 戻れぇいッ!!」

と声を張り上げている。

俺は、その男の頭上間近で止まった。

〝ハッ!〟とした騎士が慌てて振り返り、俺の姿を認めるや否や、

「おのれッ! この魔人めがぁッ!!」

と、槍を突き出してこようとしたので、

【絶対服従】を発動させた。

これで、残りのMPが10となる。

白馬から降りた身長180㎝程の男が、顔までもが隠れている兜を脱いで、跪き、

「非礼を働いたこと、ひらに、ご容赦ださい。」

と頭を下げた。

歳は70ぐらいだろうか、肩までの長さがある白髪をオールバックにしている。

鼻の下および顎の髭も白い。

3ポイントを使用しての【可視化】で見てみたところ、

やはりジョブは【騎士】で、レベルは48だった。

「許そう。」

と言いながら着地した俺は、その場にドカッと胡坐《あぐら》座りして、

「で?」
「お前たちは何で不戦協定を無視して攻め込んできた??」
「やはり、トーキーの王と大将軍が言っていた〝5年前の遺恨〟によるものか?」

と、聞いてみたところ、

「いえ。あれは、トーキーの王子と、サータ先王の弟君が、共に討ち死になされたので、痛み分けとなっております。」

との事だった。

「ふ…む? じゃあ、何故だ??」

と、更に質問してみたら、

「大変言い辛いのですが…、跡を継がれた現国王が、所謂〝ボンクラ〟でして…。」

と語りだした。

「3ヶ月前に、先王が齢40で崩御なされ、その一人息子が王位を継承しまして…、もともと愚鈍ではありましたが、王座に就くなり権力に酔いしれたのか無茶な政策を執るばかりで、人心が離れる一方と相成りました。」

「ふむ。」

「母君であらせられる王太后が、溺愛する現王に威厳を持たせるべく、事も有ろうに“ゴブリンロード”に後ろ盾になって貰えないかと、願い出たのでございます。」

「ゴブリンロード?」

「はい。」
「サータ王国の北に位置する、通称“ゴブリンの国”の王にございますが…、〝ちからを貸す代わりに、トーキー王国を攻め滅ぼせ。さもなくば、サータの人間どもを食らい尽くすぞ〟と脅してきた次第で、恥ずかしながら、サータ国の王族は一人残らずこれに屈してしまったのです。」

「…、その“ゴブリンロード”の狙いは何だ? 俺か??」

「いえ、ご主君の存在はまだ知られていないかと…。」
「先日大敗を喫した第一陣の生き残り数名が、我ら第二陣の宿営地に駆け込んで参りまして、いろいろと話を聞きましたが、それほどまでに強き者がいるとは、にわかには信じられず、このように目の当たりにするまではそれがしも疑っておったぐらいですので…。」

「じゃあ一体?」

「おそらくは、勇者かと…。」

「そっちかい!」

「はい。」
「勇者が召喚された事は、東の大陸中に広まっていっておりますので、それを知ったゴブリンロードが、魔王以上に成長する前に息の根を止めておこうと計らったものかと、推測されます。」

「なるほど、事情は分かったが…、ゴブリンの国と戦うという選択肢はなかったのか?」

「残念ながら、勝算なき故に。」

「ん? 相手はゴブリンだろ?」

と、RPGを想像した俺は、

(どちらかと言えば、モブキャラじゃん。)

と高を括ったのだが…、

「モンスターの強さもそれぞれでして…。」
「下位クラスは大したことありませんが、中位クラスはなかなか侮れず、上位クラスともなれば歯が立ちません。」
「なかでも、ロード級の最上位クラスは、魔王の次に強いと噂されております。」

との説明が返ってきた。

現在の魔王がどれぐらいのレベルなのか知らない俺は、漠然なイメージを抱くことしか出来ず、

「そっか…。」

と、呟く以外にすべがなかった。

「なぁ、“ゴブリンの国”って事は、ゴブリンしか住んでないのか?」

そう確認してみたところ、

「国に生息している魔物の6割がゴブリンで、あとの4割は他種族の集まりと、聞き及んでおります。」

と教えてくれた。

「ところで、サータ国は、何陣まで送り込んでくるつもりだ?」

と、話題を変えてみたら、

「第四陣までにございます。」
「今は、ここより1時間ほど北上した場所で第三陣が野営していますが…、明日の朝、第四陣が到着すれば、入れ違いで第三陣が南下してくる手筈になっております。」

との情報を提供してくれたので、暫く考えた俺は、

「よし! 今からそこ・・に行こう!」

と、勇ましく立ち上がったのだった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

処理中です...