Arousal of NPC‘s

猫乃麗雅

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Chapter 1/最初の国

№16 WWにおける設定④

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“道具屋の窓口”にて。
「はい、いらっしゃい。」
「どれにしますか?」
おカミさんが尋ねてくるなり、[イッチューズ]の眼前に“商品一覧表”が現れた。
それは、防具屋のときと同じように[縦長・・の超薄型画面]であった。
書かれている文字に目を通ししつつ、
「HPはヒットポイントで、MPはマジックポイント、でしょ??」
「じゃあ、“SP”って、何?」
首を傾げたカリンに、
「あー、…、“スキルポイント”だな。」
「例えば、エイトのような精霊術士や、魔術士に、召喚士であったり、陰陽師は、MPなんだよ。」
「で。」
「それ以外のジョブは、SPという事になってるんだ。」
ヤトが教えてあげたのである。
「“復帰の粉”っていうのは??」
今度はセブンが質問したら、
「そこも過去作と同じみたいだな。」
こう呟いたニケが、
「RPGによってはヒットポイントが0ゼロになると“死亡”ということになるんだけど……、このゲーム内では、気絶による“戦闘不能”といった扱いになって、ブラックアウトしたうえに、体が動かなくなってしまうんだ。」
「そこに仲間が“復帰の粉”を使ってあげれば、再び活動できるようになるってわけだよ。」
「ただし、HPやMPにSPは半分しか戻らない。」
「あとは…、パーティーの全員であったり、ソロのプレイヤーが、“戦闘不能”に陥ってしまった場合は、聖堂に転送されて、全回復の状態で再開されるって感じだね。」
と、説明したのだった。
女性陣が〝へぇー〟と理解を示すなか、
「他にもステータスが異常になったのを治す“特効薬”があるから、とりあえずバランスよく買っておこう。」
そのようにクマッシーが締め括ったのである……。
 
 

[Teamチーム Zゼット]は、力ずくでリーダーになった“ゾース”の考えが上手くいき、魔物たちを倒しつつ南西・・に足を運んでいた。
まさに〝順調そのもの〟だったみたいだ。
ここまでは・・・・・
 
新たに15数のモンスター達が向かって来ている。
その顔ぶれは、いつもと同じであった。
敵集団を視界に捉えたゾースが、
「止まれ!」
味方に命令する。
三人一組で、遺跡調査団の前後左右を囲んでいるメンバーが、これに従う。
先頭は、無論、ゾースである。
ともあれ。
身構える[Team Z]に、魔物らが突進してきた。
「返り討ちにしたらぁあッ!!」
ゾースが気を吐くなか、モンスター達が五匹ずつの“3グループ”に分かれる。
このうちの2つが、両脇を駆け抜けてゆく。
「あん?!」
ゾースの注意が削がれたところで、正面の[食人花]が“ピンク色の霧”を放射した。
更には、左右の班に含まれていた食人花たちまでもが、同様のアクションを行なったのである。
それらによって、9人が眠らされてしまう。
起きているのは、NPCである調査団と、最後尾の3名だけだった。
「草よ。」
[陰陽師のゼン]や、
「アイスボール!」
[30代後半の黒魔術士]が、急ぎ唱えるも、敵の数からして対応しきれなさそうである。
【特効薬】を幾つか持っていれば、違う展開になっていたかもしれない。
悔やんでも仕方ない状況で、魔物の7割ぐらいが、寝ている面子に襲い掛かった。
これによる衝撃で全員が目を覚ますも、なかには【クリティカルダメージ致命傷】を負った者らもいるみたいだ。
「ソロヒール!!」
後方支援たる[白魔術士のゼシュー]が【治癒】を施す。
とは言え、一人ずつしか無理なので、かなり慌てながら次々と発している。
その結果、途中で“マジックポイント”が底を突いてしまった。
焦ったゼシューが、数少ない[MP回復ポーション]を出現させたタイミングで、
「やってくれたじゃねぇーか!」
ゾースがモンスター達に反撃しようとしたところ、
「うわああああ――ッ!!」
「助けてくれぇーッ!」
といった叫び声が聞こえてきたのであった。
背後を見れば、様子を窺っていた残り3割の魔物が[痩せている男性調査員]を攻めまくっていたのである。
「っざけんなッ!!」
救出のため走りだそうとするゾースの左脇腹を、[ダークマウス.Jr]が“木製の槍”で突いて邪魔した。
「コイツっ!」
ゾースの意識が逸れるなか、ボコボコにされたNPCが〝ピクリ〟ともしなくなる。
ここに、悪い出来事が重なった。
クリティカルダメージをくらっていた仲間たちのなかで、ゼシューの【ヒール】が間に合わず、モンスターどもから追加で攻撃されてしまった者らが息絶えた・・・・のだ。
一人は[40代後半の女性騎士]で、もう一人は[50代半ばの男性アーチャー]である。
そのどちらもが、いくつもの“白く輝く泡”となって消滅・・したのだった。
「ああ、あ…。」
愕然とするゼシューなどを、
「今は自分が生存することに集中しよう!!」
[剣士のザイラ]が激励したのである。
 
 

[Team Z]はどうにかこうにか勝利を収めたものの、先程のNPCは亡くなってしまっていた。
「またも依頼を達成できんかったのう。」
「非常に残念じゃ。」
「儂らは、もう、帝都に帰る。」
「お前さんがたとは、もはや会う事など無いじゃろう。」
こう伝えた“団長”が、調査員を連れて【テレポーテーション】したのである。
誰もが沈黙するなか、〝ギリッ!〟と歯軋りしたゾースが、
「別のクエストを受けるぞ!!」
イラつきながら告げたのであった……。
 
 

ヤトたちは、改めて[サウスウエスト南西ギルド]に赴いている。
彼らは“最西端の村まで新品の農具を届ける”という依頼を選んでいた。
茶髪でポニーテールの[受付嬢]によれば、
「まだ魔物らが凶暴化する数日前に、この都に訪れた村民が、鍛冶職人に質の高い農具の生産を発注したそうです。」
「本来であれば、お弟子さんが完成品を搬送する予定だったそうですが…、モンスター達が活発になっており危険なので、その役を冒険者に代わってもらいたいと、棟梁が仰っていました。」
との話しである。
「ここまで御理解いただけましたでしょうか?」
「もう一度お聞きになりますか??」
NPCに訊かれて、
「いや、いい。」
ヤトが断った。
「そうですか……。」
「ちなみに、報酬は、お一人につき金貨1枚です。」
「期間は七日ですが、大きな問題に巻き込まれることなく、順調にいけば、村には四日ほどで到着するでしょう。」
「この案件を、お受けになりますか?」
女性の確認に、
「ああ、よろしく。」
ヤトが頷く。
「でしたら、みなさんの地図に、依頼主が待っていらっしゃる場所を赤丸で印しておきます。」
NPCが喋っていたところ、建物内に〝ズカズカ〟と入ってきたのは“ゾース”だった―。
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