Arousal of NPC‘s

猫乃麗雅

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Chapter 1/最初の国

№1 オープニング

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科学技術が飛躍的に進歩した時代において――。
日本のゲーム会社である[Future Create Company未来を創る企業 = FCC]が、新作にあたる“フルダイブMMRORPG”を製作した。
その名も[Wonder Worldワンダーワールド]である。
開発を公表した段階から、ちまたでは、“WWワンワー”と略されていた。
これは、一作目の[Ideal World理想の世界]と、二作目の[Great World素晴らしい世界]と合わせて、“FCC世界三部作”と呼ばれている。
そんな[ワンワー]は、過去二作品を学習させた“最先端のAI”を用いて、完成させたのだそうだ。
また、このAIにゲーム内を管理させているのだとも言う。
ただし、何人かのスタッフも交代制で24時間カスタマーサポートするらしい。
まさに万全を期した[Wonder World]は、G.Wゴールデンウイーク一日目の午前九時に、めでたく、オンライン配信を開始した…。
 
 

スタート地点になるのは[フラルン帝国]のである。
建物や道路は中世ヨーロッパを彷彿とさせる“石造り”で、全体的に幻想的な雰囲気だ。
帝都そのものは“円形の石壁”で囲まれている。
都の、東西南北には“表通り”が、中央には“大きめのサークル広場”が、設けられていた。
AM09:00となり、この広場・・に、ユーザー達が続々と集まってきている。
ま、最初は、ログインした時点で、そこ・・に転送されるのだが……。
 
広場の中心よりやや南東あたりにて。
[初期装備]である一人の少年が、北方を向きながら〝キョロ キョロ〟している。
身長159㎝かつ標準的な体型である彼は、黒色短髪で、青色を基調とした長袖&長パンツの甚平じんべえみたいな和装に、白足袋しろたび草履ぞうりを履いていた。
左腰には[木刀ぼくとう]を帯びている。
ジョブが【武士】なのであろう少年は、自分の右側に〝フ〟と目を止めた。
5Mほど離れた位置に佇んでいるのは、背丈が152㎝ぐらいで、金髪セミロング/青い瞳/白肌といったスレンダーな少女である。
(可愛い…、いや、キレイだなぁ。)
少年が、このような感想を抱いた女子は“キレカワ系”であった。
彼女に見惚みとれていたところ、
「お、居た居たー。」
「トオ、じゃなかった。」
「ヤト!」
左側より誰かしらが声をかけてきたのである。
振り返ってみたら、身長168㎝でライトブラウンのスポーツ刈りと、背丈165㎝で金色サラサラショートヘアーといった、男子たちが、歩いて来ていた。
「よう。」
「クマッシー。」
「ニケ。」
笑顔で応じた“ヤト”に、
「女子たちは?」
ライトブラウンでスポーツ刈りの“クマッシー”が尋ねる。
「さぁ??」
肩をすくめたヤトの背後から、
「お待たせぇ~。」
ある少女が近寄ってきた。
身長は162㎝といったところである。
ブラウンのセミロングヘアーは三つ編みになっており、白猫の耳&尻尾が付属していた。
この側には、他に二人の女子がいるようだ。
一人は、背丈が164㎝の、黒髪ショートである。
もう一人はというと、身長157㎝で、ゆるふわセミロング銀髪に、狼の耳と尾を着けていた。
 
[FCC世界三部作]において、“アバター”は、プレイヤーの容姿が八割がた採用される。
残り二割は、自由に変更できるようになっていた。
例えば、髪や瞳の色に、ケモミミ&テイルの有無、である。
ルックスや、背丈に、体重などは、本人そのものが反映される仕組みになっていた。
理由としては〝ユーザー達が現実に戻った際に、仮想とのギャップで心を病まないように〟との配慮からだった。
 
「で?」
「とりあえず、どーするの??」
「タカヤマ。」
こう質問した“猫耳”を、
「ばッ!!」
「こっちの世界では、本名で呼ぶのはNGだって、事前に伝えておいただろ!」
「個人情報が第三者に知れ渡って、悪用されるかもしれねぇんだから!!」
ヤトが焦って注意する。
それに対して、
「あ。」
「ごっめぇ~ん。」
「忘れてた。」
少女が〝テヘヘヘ〟と笑みを浮かべた。
「ったく。」
怒った感じを装いつつ、ヤトは、再び右を向く。
さっきの“金髪の女子”が気になったからである。
すると、あの少女の周りに、老若男女問わず、数人が集結していた。
何かしら会話を交わした彼女たちは、各自、[横長・・の超薄型画面]を宙に出現させたみたいだ。
“イベントリ”や“アイテムボックス”に“ストレージ”など、幾つかの呼び方がある機能に違いない。
いずれにせよ、この流れで、画面を指で操作した一同が、〝シュンッ!〟と消えたのである。
おそらく、何処かに【テレポート】したのだろう。
「どうかした?」
金髪サラサラショートの“ニケ”に訊かれ、
「いや、なんでもない。」
答えたヤトが、
「そうだなぁ……。」
「まずは、パーティーを組んで、その名称とリーダーを決めようぜ。」
友達集団に告げる。
「例えば、どんな名前??」
首を傾げたネコミミに、
「んー、…、“勇敢なる冒険者たち”とか?」
ヤトが述べた。
この結果、
「いや、ダサイでしょ。」
猫耳に、冷たい視線を浴びせ掛けられてしまったのである。
「え?!」
ヤトは意外そうにしたものの、他のメンバーは〝うん うん〟と頷いていた。
「ねぇ。」
「私たちの“第一中学校”から取らない?」
口を開いた“黒髪ショートの女子”が、
「イチチュウズとか、イッチューズ、みたいな??」
そう提案したら、
「“イッチューズ”が、いいよねぇ。」
「かわいらしくって。」
狼耳の少女が同意したのであった。
「じゃあ、そーしよぉう!」
まとめに入ったネコミミに、
「オッケー。」
誰もが賛成するなか、
「ええ~ッ!?」
「マジかよぉー。」
ヤトだけは不服のようだ。
これを、
「まぁ、まぁ、ここは一つ、女性陣の顔を立てよう。」
「そのほうが、後々、平和だよ、ヤト。」
クマッシーが優しく諭す。
「…………。」
少し考えこんだヤトは、
「分かった。」
そこ・・は許可するとしよう。」
「だが!!」
「リーダーは、俺だかんな!」
「これだけは絶対に譲らねぇぞ!!」
そう宣言したのであった。
「はい、はい。」
「ほんっと、“お子ちゃま”よねぇ~。」
猫耳が半ば呆れつつ、からかったところ、仲間が〝ドッ!〟とウケたのである。
この状況に、
「ぬぅ~ッ。」
“ぐうの”も出なくなるヤトだった―。
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