上 下
66 / 78
黎明期

第66話 派生③

しおりを挟む

オレは、ロトーゾ・ルヴェッキ。

父は[ルヴェッキ商会]の二代目を務めている。

オレ自身は、その次男だ。

なお、商会は[ルゴカータ王国]の港町に拠点を構えてきた。

ルゴカータは、この世界の南東に位置する[サウスト大陸]に存在している。

さて…。

祖父の時代から、貿易を中心として、国内の王族貴族とも商売を行ない、かなり稼いでいてきたので、店は大きい。

その店舗の側に建てられている自宅は、豪邸だ。

こうした環境で、オレは何不自由なく育ってきた。

そんなオレが二十歳を過ぎた或る日のこと、父親に「社会勉強のために国外の各地を巡ってあきないをやってみろ」「まずは近場でいいから」と促されたのである。

……、正直メンド―だ。

冒険とか、危ない印象しかないし。

オレは、なるべく、地元で〝ぬくぬく〟していたい!!

だが、ふと思った。

ここで実績を上げて、認めてもらえれば、大きな仕事を幾つも任せてもらえるようになるのでは?

そうして結果を出し続ければ、兄ではなく、オレが跡を継げるかも??

と…。

このため、オレは、旅立つことにしたのだ。

従業員と召使を、二名ずつ連れて。

家から出発したオレ達は、護衛を雇うべく、一旦、[冒険者ギルド]に足を運ぶ。

[窓口]にて。

料金を惜しみ、できるだけ安い連中を頼んだ。

すると、“受付嬢”に「それでしたらペーパー級かウッド級になります」と言われた。

クラス的に最も低い“ペーパー”は不安でしかない。

よって、“ウッド”にしたのである。

白人と黒人が半数ずつの計4名で、全員が男性だ。

そうして、オレたちは、商会が何艘なんそうも所有している[貿易船]のなかでも小型なものに乗り込んだのである。

ちなみに、船長と操縦士は1人ずつで、船員は2人だ。

余談になるかもしれないが、オレは、【魔法】はもとより【スキル】を全くもって扱えない。

父は[闇属性の魔法]を、兄は[剣術・壱]を、生まれ持っている。

あと、どちらにも【亜空間収納アイテムボックス】が備わっていた。

……、なんか不公平じゃないか?

まぁ、いいけど…。

べ、別に拗ねてなんかないんだからな!

【アイテムボックス】とか以外であれば、“鍛錬”や“実戦”によって得られるみたいだけど、商家だから経験がないだけだし??

商いに関して学ぶのを重要視されているわけであって、他は優先事項じゃないから、仕方ないだろ?

オレだって、励みさえすれば、何かしらの【魔法】に【スキル】が開花するかもしれないもんッ!!

…………。

すまない。

取り乱してしまった。

話しを戻そう。

今回の顔ぶれのかなでは、従業員の1人だけが【亜空間収納】の“小規模”を使える。

冒険者達は、各自、【戦闘スキル】を二つ扱えるそうだ。

こういった状況で、数ヶ月かけて西方面の島を三つほど回った。

その流れで、[タケハヤしま]の南側に在る“港町”に寄ってみたのだ……。

久しぶりに1人になりたかったオレは、[スブキィ]の宿屋に成員を残し、町を散策してみた。

そうしたところ、[チキュウビストロ・ルワーテ]とやらに行列が見受けられたのである。

飲食店で、このような現象は、あまりにも珍しい。

個人的には初めてだ。

興味を惹かれたオレは、すぐに並んでみた…。

注文した“カラアゲセット”なるものを食べてみる。

……、なんだこれは??!

美味すぎるぅ――ッ!!

衝撃と感動に震えたオレは、どの品についても調理法を教えてもらうことにした。

それらを実家に伝えれば、高く評価してもらえるに違いないからだ!

うちで事業展開したら、莫大な利益に繋がるだろう。

となれば、貢献したオレこそが、ゆくゆくは当主になれるに違いない!!

こう考えたオレは、店長に懇願した。

しかし、かたくなに首を縦に振ろうとはしなかったのである。

だが、オレは知っていた。

数分前に、家族であろう“ハイドワーフ4人組”が、[別室]に案内されていたのを。

あの時、店員に質問していたのは、少年だった。

つまり、〝子供であれば問題ない〟ということではないか?

そう判断したオレは、後日、街中で暇そうにしている“男子2人”に声をかけ、[ルワーテ]に赴かせた。

計二枚の銀貨を持たせて。

これだけでなく、「成功した暁には1人につき金貨一枚を与えてやる」と約束したのである…。

暫くして、店から少し離れた位置で待機していたオレのもとへ、少年らが姿を現した。

いささか怯えた様子で「報酬は要らない」と告げるなり、何処へともなく走り去っていく。

お釣りを返さないままに。

のッ、ガキどもめ!

追い掛けようとしたオレではあったが、土地勘がないので、やめておいた……。

翌日、例の冒険者たちと、[ルワーテ]に怒鳴り込んだ。

所詮は料理人の集まり、脅せば泣きつくだろう。

そう推測したのだが…、逆効果だった。

激昂げっこうした店長によって、おもてに出される。

ここから、オレが雇っていた連中が、あっという間に倒された。

それこそ、秒で。

呆然とするオレに、更なる不運が訪れる。

事態を目撃していた“ルシム大公”に処罰されてしまったのだ。

本当は、この後、北東の[ノイスト大陸]に向かう予定だったのだが、意気消沈したオレは、家に帰ったのである……。

父親を、どうにか誤魔化ごまかした。

けれども、同行していた者らに、洗いざらい喋られてしまったのである。

迂闊うかつだった。

幾らかカネを渡して、口裏を合わせるよう指示しておけば良かったものを。

オレの、馬鹿!!

いや、冒険者達であれば通用しただろうが、[ルヴェッキ商会]で働いている面子は無理か。

あとで発覚したら、父によって解雇されかねないので…。

何はともあれ。

いまだかつてないぐらい父に叱られるオレだった―。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

ロトーゾ・ルヴェッキ
中背/標準体型/金色マッシュルームヘア/白肌/瞳は青い/21歳
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...