各種族に転生した僕らの異世界ライフ

ネコのうた

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黎明期

第65話 シークレット②

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俺は、ヴォル・リュウス。

“狼の獣人”だ。

タケハヤしまの南に位置する[港町スブキィ]で、飲食店を経営している。

名称は[チキュウビストロ・ルワーテ]だ。

アシャーリー様がたのおかげで、大繁盛している。

なお、七日に一度は店休だ。

さて…。

ここ最近、周辺で、カラアゲなどの模造品を提供する店舗が増えた。

味としては、うちの下位互換らしい。

噂によれば〝それなりに悪くはないが、決して良くもない〟との事だ。

ま、詳しい調理法を知らずに作っているので、仕方ないだろう。

なかには「料理を教えてほしい」と懇願してくる者らもいたが、全て断った。

ルシム大公殿下と、そういう契約を交わしているので。

この店の目的は、“ラルーシファ王子殿下”と“アシャーリーお嬢様”の計画を遂行することだ。

それは、お預かりしている銀板に刻まれている“ニホン語”を読める方々を、[大公殿下の館]に導くというものである。

なので、調理に関しては「大公殿下に罰せられる」と言えば、地元のヒトたちは諦めてくれた。

大公殿下の怒りを買いたくないため。

しかし、ヒトによるが、余所者よそものは違うみたいだ。

ある日の事、何処かの国の“20代前半らしき貿易商人”が「カネならいくらでも積むから料理の方法を伝授してくれ!!」と頼んできた。

当然、拒んだものの、あまりにもしつこかったので、“出入り禁止”にした次第だ。

ちなみに、この日は、ハイドワーフの“丸メガネの少年”に、例の銀板を、俺が渡していた……。

三日後の夕刻。

店に“男子2人組”が訪れる。

そのうちの1人が、“馬の獣人”であるエウスに、「調理したヒトに会いたい」と述べたらしい。

〝ピン!〟ときたらしいエウスが、「キミ達、トシ・・は幾つ??」と訊いたところ、両方とも13歳だったそうだ。

エウスが、誰に依頼されたのか問いただしたら、こないだの貿易商人だった。

おそらく、〝子供であれば別室・・に通してもらえる〟〝そこ・・で料理についての説明がなされている〟と思い込んでしまったのだろう。

まったくもって、そんなことはないのだが。

あと、ニホン語を解るのは、“王子殿下”に“お嬢様”と同い年の子ら・・・・・・だ。

つまり、〝現在は10才〟である。

事前に機転を利かしたエウスが、良い判断をした。

流れで、「駄賃だちんを貰えるのかもしれないが、こういうのは二度としないように」「次は大公殿下にお報せする」「そうなれば、死刑、もしくは、島からの永久追放、となるだろう」とエウスが真顔で喋ったところ、男子たちは怯えて反省したようだ。

翌日の…、というか、今日の昼頃。

あの貿易商人が、男性4人を連れて、店内に〝ズカズカ〟と入ってきた。

冒険者らしき20代後半の男どもは、白人と黒人が半数ずつで、ガタイがいい。

先頭の貿易商人が、

「調理法を教えろ!!」
「さもなればコイツラに暴れさせるぞ!」

こう脅してきやがった。

その無礼さが頭にきた俺は、

「上等だ!!」
オモテに出やがれ!」

このように怒鳴ったのである……。

路上には、俺とエウスに、“狸の獣人:ロコ”や“リスの獣人:ルディージャ”も佇んでいた。

そこから、4人組と闘っていく。

…………。

圧勝した。

しかも、“素手のみ”で。

舐めきっていたらしい貿易商人が、呆然としている。

この男に、更なる不運が起きた。

いや、まぁ、自業自得なのだが。

大公殿下と、アシャーリー様母子おやこが、女性魔術士を伴って、ご来店なされていたのだ。

とかく。

見物人達を押しのけて、10名ほどの兵士が現れる。

外に足を運んでおられた大公殿下が、

「丁度いい。」
「儂は“ルシム=イズモ”である!!」

巡邏兵じゅんらへいたちに告げられた。

急ぎ敬礼した兵士集団へと、

「コヤツラを牢に入れよ!」
「他にも仲間がおるやもしれん故、残らず探しだせ!!」
「それから、捕らえた連中の人相書きを手配するように!」

そう指示なされる。

ここから、

「お前らの入島を、生涯、固く禁じる!!」
「破ったときは、その場で首を刎ねるよう流布るふしておく故、きもめいじよ!」

そのように宣言なさった。

これによって、

「そんな…。」

貿易商人が膝から崩れ落ちる。

兵士達が連行してゆくなか、

「恐れながら、よろしいでしょうか?」

俺は、大公殿下に話しかけた。

「ん??」
「どうした?」

耳を傾けられたところで、

「“北の港町ジィーモ”にも、ああいったやからどもがいるかもしれません。」
「あちらの店舗は、戦闘経験がない3人の女性が営んでいるとか。」
「であれば、このようなことに巻き込まれでもしたなら、対処できないでしょう。」
「そのため、警備の者を何人か付けてあげるべきかと。」

そう提案してみる。

「うむ。」
「確かにな。」

頷かれた大公殿下が、

「すぐにでもメリン領主に伝えおこう。」

このように約束してくださった―。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

[チキュウビストロ・ルワーテの店員たち]

“馬の獣人”
 名前:エウス・フェーア
 容姿:痩せ型/長身
 髪型:ブラックのロング

“狸の獣人”
 名前:ロコ・メーレス
 容姿:小太り/中背
 髪型:ブラウンのベリーショート

栗鼠リスの獣人”
 名前:ルディージャ・ラヘリ
 容姿:標準体型/小柄
 髪型:ライトブラウンのサラサラショート
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