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黎明期

第64話 交錯するもの⑪

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わたくしは、“メリン・ハースト”です。

ルシム大公殿下の遠戚にあたる者で、[タケハヤしま]の“北方の一部”を治めてきました。

なお、婿養子だった夫は、数年前に他界しております。

……、さて。

ある日の事、大公殿下から珍しく手紙が届きました。

(何か問題でも起きたのかしら??)

そう危惧しつつ、内容に目を通します。

すると…、アシャーリー御令嬢がいまだかつてない料理を作れることや、これをもとにした飲食店がスブキィで大繁盛しているといった旨が、書かれていたのです。

また、〝ジィーモでも事業展開したいので、話しを聞きに赴いてもらいたい〟〝その際には館内へ瞬間移動して構わん〟とも。

このため、久方ぶりに、あちらへと渡るわたくしでした……。

驚かされた事が二つございます。

一つは、“ダイワの第二王子殿下”がお越しになられていた件です。

御令嬢の友人だと勘違いしたわたくしは、90度に頭を下げて無礼を謝罪しました。

もう一つは、御令嬢の調理です。

確かに、それらの品々は美味でした!!

当初、(大公殿下が孫娘かわいさに大袈裟になっていらっしゃるだけでしょう)と、たかくくっておりましたが…、間違いを改めるわたくしです。

これであれば、かなりの経済効果となっているのも頷けます。

そのため、わたくしは、[北の港町ジィーモ]で店舗などを探すことに決めたのです!

……、ええ、見事のまでの“手の平返し”でございます。

自覚はありますので、どうぞ、そっとしておいてください。

まぁ、このような流れにて、候補を調査していった次第です…。

数日後、お店の経営が上手くいかずに困っている女性三人組を、大公殿下がたに報せました。

そうして、御令嬢と母君ははぎみに、ご足労いただきます。

御令嬢の“鍛錬”と“勉学”のため、大公殿下がたも付いて来られました。

……、わたくしの所で働いている料理人達にも、御令嬢が伝授してくださるので、よしとしましょう。

ちなみに、わたくしを虜にしたのは、スープ類です☆

なかでも、“冷製系”が、お気に入りとなりました♪

このような形でお野菜を補給できて、美肌と健康に繋がるのは、魅力でしかありません!!

…………。

つい取り乱してしまったことを、お詫び致します。

誠に申し訳ございませんでした。

いずれにしろ…。

修行を終えた彼女たち三人の、前途が明るいものであるよう、心から願うばかりです―。



私は、“リラル”です。

ジィーモの[孤児院]で育ちました。

そこは、15歳になったら卒業しないといけません。

これによって、私は、もともと興味があった“飲食の道”を歩むため、ある店舗に住み込みで働かせてもらうようになったのです……。

一年後には、仲の良かった2人も、孤児院を出ました。

私より二つ年下の彼女たちは、それぞれ別々の飲食店に勤める運びとなったのです。

余談になるかもしれませんが、私達に“姓”はありませんでした。

そのため、院長先生の苗字みょうじである“エニスモ”を貰い受けています。

結果、3人とも同じ姓になりました…。

更に二年が過ぎ、各自が貯めたお金で、共同経営することにしたのです。

選んだ建物は、一階が店舗になっています。

お客さんが一度に入れるのは16人迄といった面積です。

ま、“厨房”や“お手洗い”に“従業員控室”があるので、割と広めな印象でした。

二階は、少し狭いながらも、“お部屋”が三つと、“脱衣所に浴室”が、設けられています。

あと、“お手洗い”も。

ちょっとした裏庭には、“中くらいの氷室”が備わっていました。

お値段は安めだったので、すぐさま契約した私たちです。

夢と希望に満ちた〝ワクワク〟の新生活が始まります!

こう思ったのですが……、現実は甘くはありませんでした。

およそ二ヶ月後には、倒産寸前に追い込まれていたのです。

立地条件が悪かったのが原因かもしれません。

大通りではなく、路地裏に在って、いささか分かりづらいため、お客さんがあまり入らないのです。

だから建物の価格が低めだったのでしょう。

そういう事に関して、私達は、素人すぎました。

世間知らずだったのを悔いるばかりです。

お店を畳むしかないと、諦めるようになったときでした。

救いの手が差し伸べられたのは!!

“孤児院の支援”と“女性の社会的自立”を推進なされているメリン領主様に、お声がけいただけたのです!

こうして、私たちは、大公様がたを紹介してもらいました…。

アシャーリー御令嬢様が考案なされたという調理法は、素晴らしい限りです。

全ての品に、頬が落ちそうになります。

特に私が惹かれたのは、“スクランブルエッグ”と“プレーンオムレツ”でした☆

……、ええ、私は、玉子が大好きなのです!!

この気持ち、誰かと分かち合えたなら、どれほどの喜びとなるでしょう☆ミ

ま、それはおいといて…。

いろいろと教わった私たちは、改めて開業しました。

〝いつか訪れるかもしれない、とある方々に、珍しい文字が彫られた銀板をお渡しする〟といった条件で……。

お店の名称は[チキュウビストロ・リジュフィース]となっています。

“リジュフィース”は、私達が元より使ってきました。

意味は“可憐な乙女たち”です。

更に、[大公家御用達ごようたし]を掲げるのが許可されました。

これだけでなく、営業を再開した初日には、大公様と御令嬢様がたに、メリン領主様が、お越しくださったのです。

わざと大通りで[馬車]を降りて、そこから徒歩で来られたそうで、とても注目を集めておられました。

おかげで、私達の店舗は、瞬く間に噂となったのです…。

〝どれもが美味しすぎる〟と評判になったのもあって、客足が伸びていきました。

今となっては行列が絶えません!

これに伴い、かなりの多忙を極めております。

しかしながら、嬉しい悲鳴と言えるでしょう♪

そうして、私たち3人は、いろんな方々と神様に心から感謝しつつ、幸せな日々を過ごすようになりました―。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

[チキュウビストロ・リジュフィースの店長]

名前
 リラル・エニスモ

年齢
 18歳

容姿
 髪と瞳はライトゴールド
 (ゆるふわセミロングヘアを“ツインテールおさげ”にすることが多い)
 肌は白色

性格
 真面目な一方で天然な部分がある
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