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黎明期

第63話 過ぎゆく季節のなかで②

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先生がたとヴァイアたちが、帰国した。

それから二日が経った午後に、先生が【瞬間移動】で再び訪れる。

今回は、祖父君そふぎみに、“男女のエルフ”が一人ずつ、といった計4名の組み合わせだ。

こうして、僕らは、[広間]で、採寸されていく。

なお、ヴァイアは来ていない。

もともとヴェルン王国産の“武器”と“防具”を所有しているため、新たに作る必要がなかったみたいだ。

それもまた〝体に合わせて伸縮可能〟との事だった…。



各自が紅茶を飲んでいる。

「そういえば、先生の“お取り寄せ”って、どんな能力なんですか?」

ふと尋ねたのは、アシャーリーだ。

「あぁ。」
「お金を支払うことで、地球の本を、こちらに出現させられるんですよ。」
「ただし、漫画や卑猥なものは“不可”となっていますけどね。」

このように説明した先生に、僕などが〝へぇー〟と興味を示す。

「試してみますか??」

先生に訊かれたものの、僕は何も思い浮かばない。

そうしたところで、

「じゃぁ、料理関係のものを、お願いしたいです。」
「代金をお渡し致しますので。」

アシャーリーが申し出た。

「大丈夫ですよ、僕が払いますから。」

こう先生が述べるも、

「いえ、そういうわけにはいきません。」
「金貨一枚で足りるのであれば、お受け取りください。」

アシャーリーが断る。

「そうですか?」
「では、遠慮なく。」

承諾した先生が、

「どういった内容のものにします??」

改めて質問した。

「ん~、そうですねぇ……。」
「ソフトパンに、マヨネーズやソース類とマスタードについて、といった感じですかね。」
「あ。」
「あと、パスタ生地を麺状にするマシンが欲しいのですが…、それを知ったところで私には作れないでしょうし。」

アシャーリーが悩んだら、

「“製麺機”であれば、祖父達に頼めばいいかと。」

そのように先生が勧める。

「ん?」
「セイメンキ??」
「なんだ、それは?」

トラヴォグ公爵が反応を示したところ、

「この世界にはだ無い美味しい料理を作るために必要な機械ですよ。」

孫にあたる先生が伝えた。

これによって、

「ほぉーう。」
「どういう物かは想像が付かんが、楽しみだ!!」
「良かろう! 協力してやる!!」

トラヴォグ公が嬉々とする。

他の皆も〝ワクワク〟しているみたいだ。

ちなみに、先生たちは[チキュウビストロ・ルワーテ]に寄ってから館に赴いたらしい……。

「それでは、いただいた金貨を、テーブルに置いて…。」
「スキルを発動しますね。」

そう告げた先生が、ここから暫く黙り込む。

数十秒が過ぎ、

「マヨネーズなどに関しては、ピンポイントでの雑誌などがありませんね。」
「大きく“調味料”のカテゴリーを当たってみますので、もう少し待っていてください。」

そのように先生が報せると、

「ピンポイント??」
「カテゴリー?」
「それに、マシンって??」

“ハーフエルフのリィバ”が首を傾げた。

これらについて僕が教えていったタイミングで、

「ここら辺を選びましょうかねぇ。」

先生が独り言を口にする。

僕達には何も見えないけど、先生の脳内には“リスト表”が出ているのだろう、きっと……。

数秒後に金貨が〝フッ!〟と消えた。

代わるようにして“三冊の書籍”と“銀貨4枚&銅貨5枚”がテーブルに〝シュンッ!!〟と現われる。

そうした展開に、誰もが〝おぉー〟と目を丸くした。

この流れで、

「それらの通貨は?」

素朴な疑問を呈したアシャーリーに、

お釣り・・・のようですから、本と一緒にどうぞ。」

先生が〝ニッコリ〟と微笑む。

貨幣を収めたアシャーリーが、一冊の書籍を捲るなか、

「日本円に換算した場合、いくらになるんでしょうか??」

先生に聞いてみる僕だった。

〝んッんー?〟と考え込んだ先生は、

「おそらくですが…。」
「まず、どれもが、1枚に対して、金貨は壱万円、銀貨が千円、銅貨であれば百円、鉄貨てつかは十円、石貨せっかが一円、といったところでしょう。」
「それでいくと、〝五千五百円の買い物をした〟という事になりますかね。」

そのように結論づけた。

僕が納得していたら、

「あった。」

呟いたアシャーリーが、

「先生、これです。」

あるページを見せる。

「これはまた、“精密な絵”ですなぁ。」

感心する“魔術師のレオディン”に、

「いや、それ・・は“写真”だよ。」

僕が教えたところ、転生者以外が〝はて??〟となった。

どうやら、これについても解説しないといけなさそうだ……。

いずれにせよ。

「まぁ、当然ですが、日本語で書かれていますね。」
「こちらの文字を僕が翻訳して、祖父に確認してもらいましょう。」
「この本、お預かりしても?」

先生に窺われ、

「勿論です。」

快諾するアシャーリーだった―。
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