58 / 77
黎明期
第58話 過ぎゆく季節のなかで①
しおりを挟む
ルシム大公の“曾祖父の妹の子孫”にあたる“メリン・ハースト領主”が帰った二日後の朝だった。
再びヴァイアが訪れたのは。
僕が、館の庭で“片目のベルーグ”と剣術を稽古しているところに、足を運んできた。
今回は、10代後半くらいの容姿をした“竜人の男女”を伴っている。
なんでも“双子の兄妹”らしい。
余談かもしれないけど、お兄さんはショートヘアで、妹さんはセミロングだった。
どちらも、翼と尾は、緑色だ。
更に〝100年以上は生きている〟との話しだった。
そうした二人は、ヴァイアの父君が〝念の為に〟と付けた護衛らしい。
何はともあれ。
僕とヴァイアは、軽めの手合わせを行なっている。
僕は[木剣]で、ヴァイアは[木槍]だ。
ゆるめの動作のなか、
「すまないな、また、遊びに来てしまって。」
「親族が〝どうしても地球の料理を食べたい〟と、うるさくて仕方ないんだ…。」
「あと、これからは、七日に一度は通うことになる。」
「それぐらい、あれらの味にドハマリしたらしい。」
こうヴァイアが口を開く。
「いや、それは、大公やアシャーリーとかに、言ったほうがいいんじゃない??」
そのように僕が返したところ、
「あぁ、既に、挨拶と、事情の説明は、済ませてある。」
とのことだった。
ヴァイアたちは、今回も、それぞれの[アイテムボックス]に、お皿や食材を収納して持ってきたようだ。
これからも1人につき金貨一枚を支払うらしく、大公が快諾してくれたそうだ。
それと、アシャーリーは、今日、鍛錬と勉学が休みなので、調理を手伝っているらしい。
「だったら、問題ないね。」
僕の意見に、
「ま、迷惑はかけてしまうだろうけど。」
苦笑いしたヴァイアが、
「スピードアップしても?」
このように尋ねてくる。
「うん、いいよ。」
そう応えた事で、ヴァイアの[木槍]を扱う速度が徐々に上がっていく。
ただでさえ距離感をイマイチ掴めずにいた僕は、次第に翻弄されてしまう。
防ぐので精一杯になっていったところ、完全に押し込まれた挙句、[木剣]を弾かれてしまった。
「凄いねぇ~。」
感心した僕に、
「竜人と人間の〝身体能力の差〟が出ただけだろうな。」
「技術面は私よりラルーシファのほうが優れていると思う。」
こうヴァイアが述べる。
「確かに、そうですね。」
「ベルーグ殿がたによって鍛えられているのが、よく分かります。」
そのように喋ったのは、“双子の妹さん”だ。
「恐縮です。」
いささか照れるベルーグに、
「しかし、ラルーシファ殿下は、槍との戦いに不慣れなご様子でしたね。」
“お兄さんの方”が指摘した。
これによって、
「まぁ、これまでは、同じ得物での打ち合いしか反復してきませんでしたので。」
「来年から、別々の武器での戦闘を、お教えする予定だったのですが……。」
「こちらの館で生活させてもらうようになってからというもの、いろいろと状況が変わっておりますので、他の皆と相談して、時期を早めても構いませんか??」
ベルーグが僕を窺う。
「任せるよ。」
簡略的に告げた僕は、
「とろこで。」
「この前、ヴァイアが竜になったり人の姿に戻ったりしたとき、衣服が自動で消えては現れていたみたいだけど…、あれって、スキル?」
素朴な疑問を投げかけてみる。
そうしたら、
「……。」
「〝竜人族の全員に生まれつき備わっている〟〝言うなれば亜空間収納の変異型〟だったよな??」
双子に視線を送るヴァイアだった。
これに、
「ええ、その通りでございます。」
「けれども、詳細は誰も知らないみたいです。」
妹さんが答えた流れで、
「我々にとっては呼吸をするくらい至極当然なので、深く考えたことがありませんでしたが…、確かに妙ですよね。」
お兄さんが首を傾げる。
ちなみに、お兄さんは“ドッシュ”で、妹さんは“ラッス”という名前だ。
姓は、“エレブ”というらしい。
さておき。
「もしかしたら、神様がそのように御創りになられたのかもしれません。」
ラッスさんが推測したところ、
「では、いつか、カティーア様かパナーア様がお越しになられた際に、お伺いしてみたら如何でしょう?」
そのようにベルーグが提案した事で、
「うん、そうだね。」
頷いて理解を示す僕だった……。
▽
半月が経とうとしている。
夏真っ盛りだ。
暑い日が続くなか、メリン領主が、お抱え魔術士さんの【瞬間移動】で[大公の館]に渡ってきた。
お店と従業員の候補が見つかったらしく、メリン領主が[客間]で語っていく―。
再びヴァイアが訪れたのは。
僕が、館の庭で“片目のベルーグ”と剣術を稽古しているところに、足を運んできた。
今回は、10代後半くらいの容姿をした“竜人の男女”を伴っている。
なんでも“双子の兄妹”らしい。
余談かもしれないけど、お兄さんはショートヘアで、妹さんはセミロングだった。
どちらも、翼と尾は、緑色だ。
更に〝100年以上は生きている〟との話しだった。
そうした二人は、ヴァイアの父君が〝念の為に〟と付けた護衛らしい。
何はともあれ。
僕とヴァイアは、軽めの手合わせを行なっている。
僕は[木剣]で、ヴァイアは[木槍]だ。
ゆるめの動作のなか、
「すまないな、また、遊びに来てしまって。」
「親族が〝どうしても地球の料理を食べたい〟と、うるさくて仕方ないんだ…。」
「あと、これからは、七日に一度は通うことになる。」
「それぐらい、あれらの味にドハマリしたらしい。」
こうヴァイアが口を開く。
「いや、それは、大公やアシャーリーとかに、言ったほうがいいんじゃない??」
そのように僕が返したところ、
「あぁ、既に、挨拶と、事情の説明は、済ませてある。」
とのことだった。
ヴァイアたちは、今回も、それぞれの[アイテムボックス]に、お皿や食材を収納して持ってきたようだ。
これからも1人につき金貨一枚を支払うらしく、大公が快諾してくれたそうだ。
それと、アシャーリーは、今日、鍛錬と勉学が休みなので、調理を手伝っているらしい。
「だったら、問題ないね。」
僕の意見に、
「ま、迷惑はかけてしまうだろうけど。」
苦笑いしたヴァイアが、
「スピードアップしても?」
このように尋ねてくる。
「うん、いいよ。」
そう応えた事で、ヴァイアの[木槍]を扱う速度が徐々に上がっていく。
ただでさえ距離感をイマイチ掴めずにいた僕は、次第に翻弄されてしまう。
防ぐので精一杯になっていったところ、完全に押し込まれた挙句、[木剣]を弾かれてしまった。
「凄いねぇ~。」
感心した僕に、
「竜人と人間の〝身体能力の差〟が出ただけだろうな。」
「技術面は私よりラルーシファのほうが優れていると思う。」
こうヴァイアが述べる。
「確かに、そうですね。」
「ベルーグ殿がたによって鍛えられているのが、よく分かります。」
そのように喋ったのは、“双子の妹さん”だ。
「恐縮です。」
いささか照れるベルーグに、
「しかし、ラルーシファ殿下は、槍との戦いに不慣れなご様子でしたね。」
“お兄さんの方”が指摘した。
これによって、
「まぁ、これまでは、同じ得物での打ち合いしか反復してきませんでしたので。」
「来年から、別々の武器での戦闘を、お教えする予定だったのですが……。」
「こちらの館で生活させてもらうようになってからというもの、いろいろと状況が変わっておりますので、他の皆と相談して、時期を早めても構いませんか??」
ベルーグが僕を窺う。
「任せるよ。」
簡略的に告げた僕は、
「とろこで。」
「この前、ヴァイアが竜になったり人の姿に戻ったりしたとき、衣服が自動で消えては現れていたみたいだけど…、あれって、スキル?」
素朴な疑問を投げかけてみる。
そうしたら、
「……。」
「〝竜人族の全員に生まれつき備わっている〟〝言うなれば亜空間収納の変異型〟だったよな??」
双子に視線を送るヴァイアだった。
これに、
「ええ、その通りでございます。」
「けれども、詳細は誰も知らないみたいです。」
妹さんが答えた流れで、
「我々にとっては呼吸をするくらい至極当然なので、深く考えたことがありませんでしたが…、確かに妙ですよね。」
お兄さんが首を傾げる。
ちなみに、お兄さんは“ドッシュ”で、妹さんは“ラッス”という名前だ。
姓は、“エレブ”というらしい。
さておき。
「もしかしたら、神様がそのように御創りになられたのかもしれません。」
ラッスさんが推測したところ、
「では、いつか、カティーア様かパナーア様がお越しになられた際に、お伺いしてみたら如何でしょう?」
そのようにベルーグが提案した事で、
「うん、そうだね。」
頷いて理解を示す僕だった……。
▽
半月が経とうとしている。
夏真っ盛りだ。
暑い日が続くなか、メリン領主が、お抱え魔術士さんの【瞬間移動】で[大公の館]に渡ってきた。
お店と従業員の候補が見つかったらしく、メリン領主が[客間]で語っていく―。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜
MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった
お詫びということで沢山の
チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。
自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる