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黎明期

第57話 展望③

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“ヴァイア三世代”が帰ってから、一週間以上が経っている。

この日の朝に、[館の一階エントランス]へ【テレポート】してきた人たちがいるそうだ。

以前、ルシム大公が[ケンタウロス便]で手紙を送った相手らしい……。



僕らは、“大公家族”と一緒に、[客間]に足を運んだ。

すると、“60歳ぐらいの貴婦人”が、ソファに腰かけて、紅茶をたしなんでいた。

その後ろには、40代前半あたりの魔術士と、30代半ばといったところの給仕が、控えている。

ちなみに、どちらも女性だ。

さておき…。

大きめの“お団子ヘア”に、ドレス姿の、貴婦人が、〝スッ〟と立ち上がった。

髪は白金であり、瞳は青く、痩せ型で、凛としている。

こうした特徴の貴婦人が、

「お久しぶりです、ルシム殿下がた。」

大公家族に会釈した。

そこから、

「まぁ、大きくなられましたわねぇ、アシャーリー御令嬢。」

穏やかな表情になった流れで、僕を見つつ、

「そちらは、アシャーリー御令嬢の友人の方ですか??」

軽く首を傾げる。

「いや。」
「ダイワの第二王子、ラルーシファ殿下であらせられる。」

このように大公が紹介したところ、

「はい?」
「ご冗談ではなく??」

貴婦人が怪しんだ。

けれども、大公が真面目な感じで〝うむ〟と頷いた事によって、ほんの少しの間を置き、

「御無礼いたしましたぁあッ!!」

かなりの勢いで、頭を深々と下げる貴婦人だった。

更には、お連れの二人も、慌てた様子で、お辞儀する。

それらに対し、

「あー、うん。」
「ラクにせよ。」

こう告げる僕だった……。



主だった者だけがソファに座り、話しを進めている。

なお、貴婦人は、“メリン・ハースト”という名前なのだそうだ。

大公にとって“曾祖父の妹の子孫”にあたるらしく、[北の領主]を努めているらしい。

そのため、〝港町ジィーモも管轄している〟とのことだった…。

「成程、事情は承知いたしました。」
わたくしの命に替えましても、王子殿下のことは、他言いたしませんし、させません。」

こう約束したメリン領主が、

「それで?」
「チキュウの料理というのは、どのようなものなのでしょうか??」
「スブキィで大盛況しているとはゆえ、わたくしが治めさせていただいている港町で事業展開するには、具体的なことが分からなければ決断いたしかねます。」

大公に述べる。

「ま、もっともだな。」

理解を示した大公が、

「頼まれてくれるか?」

アシャーリーを窺う。

「ええ、構いませんよ。」

起立して、スカートの両端をつまみ、

「それでは、早速、厨房に向かいますので、一旦、失礼します。」

挨拶したアシャーリーが、

「お母様も。」

ふと声をかけた。

それによって、一礼した“アシャーリーの母親”もまた、退室していく……。



お昼となり、[食堂]に移動している。

アシャーリー達が調理した品々を口にして、

「な…んですか??! これはぁ――ッ!!?」

メリン領主が驚くのと共に瞳を輝かせた。

他の二人も〝んッふぅ―☆〟と幸せそうにしている。

これらの反応を受け、

「そうであろう、 そうであろう。」

ニコニコご満悦な大公だった…。



食事が済んだところで、

「確かに、これらの料理であれば、行列ができるくらい成功して至極当然というものでしょう。」

納得したメリン領主が、

「これより、ジィーモで、お店などの候補を探します。」
「数日お待ちいただいても??」

そう尋ねてくる。

これに、

「無論だ。」
「慎重に熟慮してくれ。」

そのように大公が返す。

余談になるかもしれないけど、メリン領主は〝北の港町では生活していない〟とのことだった。

しかし、〝あちらに別宅がある〟そうだ。

このため、いつも暮らしている館に戻って準備を整え次第、[ジィーモ]に渡ってくれるらしい。

そうした経緯いきさつで、[北の港町]にも店舗を構える事になる僕らだった―。
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