各種族に転生した僕らの異世界ライフ

ネコのうた

文字の大きさ
上 下
49 / 111
黎明期

第49話 会商③

しおりを挟む
平原での実戦を終えた僕らは、魔女さんの【瞬間移動】で、[大公の館]に戻ってきた。

「次回は、もう少し手強い魔物らがよいな。」
「ラルーシファ殿下とアシャーリーの“神法しんぽう”や“戦闘スキル”を向上させるためにも。」

ふと口を開いた“ルシム大公”に、

「でしたら、二人の防具を作る必要がありますね。」
「今日に比べて危険性が高まるでしょうから。」

“次男さん”が意見する。

〝ふむ〟と頷いた大公が、

「レオディン殿たちは、備えておられるか?」

僕の“教育係”と“お世話係”を窺う。

「いえ、久しく戦っていなかったので、かつて使っていた品は、とっくに処分しております。」

そのように答えた“魔術師のレオディン”に、

「ボクもです。」

“ハーフエルフのリィバ”が続く。

ここから、それぞれが述べたところ、“片目のベルーグ”を除いたメンバーは、似たようなものだった。

ベルーグは、師団長を辞めたあと、城兵として勤めていたので、甲冑が有るらしい。

「まぁ、この際だから、全員の分を依頼するか。」

そう思案した大公に、

「でしたら、我々のは、こちらで支払いましょう。」
「代金が不足しそうであれば、ライザー王陛下に懇願いたしますので、見積りを渡してください。」

レオディンが申し出る。

「なぁ~に、心配はいらん。」
「“チキュウビストロ”を軸に、あの町の経済が発展するであろうからな。」
「“北の港町”でも店を開けば、かなりのものとなるだろう。」
「さすれば、税金も増えるというものよ。」

なんだか〝良くない政治家〟みたいな顔つきになった大公を、

「職人に発注するにしても、まだ先の話しでしょう??」
「取り敢えず、お昼にしませんか?」

このように促す“次男さん”だった……。



あれから5日ほどが経っている。

その日の午後、[スブキィ]から“長男さん”が訪れた。

お抱えの“男性魔術士”による【テレポート】で。

更には、[ルワーテの店長]こと“ヴォル・リュウス”も見受けられる。

これだけでなく、他に、知らない二人組がいた。

[客間]にて。

「ん??」
元料理長・・・・ではないか?」

軽く首を傾げた大公に、

「ご無沙汰しております!」

お辞儀した“中年男性”が、

「こっちは、私の弟です。」

もう一人のほうを紹介する。

「して??」
「何用だ?」

大公が素朴な疑問を投げかけたところ、説明を始める“長男さん”だった…。



なんでも、[ヴォルの店]が物凄く繫盛していってる事で、“ティミドパーソ兄弟”の所が経営難になったらしい。

それ以外にも、幾つかの飲食店が、同じような窮境きゅうきょうに陥りつつあるのだとか。

ただし、[チキュウビストロ・ルワーテ]の近場は、まだ大丈夫とのことだ。

[ルワーテ]の行列に並んだものの、売り切れになって食にありつけなかった人々が、〝その代わりに〟といった感じで入店してくるため。

一方で、[チキュウビストロ]から離れるほどに、お客さんが赴かなくなっているらしい。

〝お腹が空いているので、あまり遠くまでは歩きたくない〟との理由にて。

この兄弟の[リヌボ]という店舗も、そうした状況との話しだった。

“ティミドパーソ兄弟”は、これを打開すべく、恥を忍んで「料理を教えてもらいたい」といった旨をヴォルに相談したのだそうだ。

当初は断ったヴォルではあったものの、半泣きで頼み込む兄弟が、なんだか可哀想になったらしい。

そのため、“大公の長男さん”に伝えた結果、〝現在に至る〟との事だった……。

〝うぅ~む〟と悩む大公に、

「僭越ながら。」
「もともとの計画が成就しなくなるかもしれませんので、こちらで慎重に会議するべきかと思います。」

“細長眼鏡のマリー”が勧める。

「確かに、な。」

納得した大公が、

「数日、待て。」
「悪いようにはせんから、今日のところは帰るがいい。」

こう告げたら、

「何卒よろしくお願い致します!!」

深々と頭を下げる“ティミドパーソ兄弟”だった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...