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黎明期

第46話 交錯するもの⑨

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私の名は“マリー・ラキリアス”です。

ラルーシファ王子の教育係にして…、ま、いいでしょう。

私の事よりも、王子がたに関して語らせていただきます。

ルシム大公のもとに赴いてからというもの、なんだかせわしなくなってきました。

しかしながら、幾つもの大発見があったので、まったくもって悪い気はしません。

まず、王子によって[神剣しんけんムラクモ]の能力が明らかとなったのです。

更には、王子やアシャーリー嬢に、ダイワの初代国王と近衛衆このえしゅうが、“転生者”だということが伝えられました。

しかも、アシャーリー嬢は【光属性の神法しんぽう】を備えておられたのです。

こうした流れで、[パナーア様]や[カティーア様]を御拝顔できました。

武神様は“女神”だったといのも含めて、きちんと記録しておきます。

それにしても……、次々と歴史的瞬間に立ち会えた私は、果報者です!

これはもう、興奮が止まりません!!

なにせ、私の本業ですから!

すみません。

落ち着くまで少々お待ちください。

…………。

失礼しました。

話しを続けましょう。

私の…、いえ、誰の興味をも惹いたのは、アシャーリー嬢のお料理です。

どれもが美味のなか、 [ロール型セミハードパンとスクランブルエッグ]の組み合わせ・・・・・が私の好みとなっています。

ある日、アシャーリー嬢が〝ナイフでパンの縦に切れ込みを入れ、そこにスクランブルエッグを挟む〟という食べ方を披露してくださいました。

真似させていただいたところ、すぐさま虜になってしまったのです!!

「お店のメニューに加えてみる?」

王子が御提案なされるも、

「うぅ~ん、そうですね……。」
「個人的には、できればソフトパンの方が良いと思いますし…、特に食パンでのサンドウィッチを何種類か作ってみたいので、とりあえず保留にさせてください。」
「ただ、柔らかいパンの製造法を詳しくは知らないので、なかなか難しいですね、現状では。」

そのように答えられるアシャーリー嬢でした。

王子とアシャーリー嬢以外が、「さんどうぃっち??」と揃って首を傾げます。

これを受け、アシャーリー嬢が丁寧に説明してくださったのです……。

数日が経ち、お店などの候補が挙がってきました。

修行を終えたヴォルさん達によって、[チキュウビストロ・ルワーテ]の運営が始まります。

一方、我々は、“実戦”の場へと訪れました…。

ベルーグ殿は[騎士位]を賜っているだけあって、かなりの剣捌けんさばきです。

私はというと、王子に[槍術]を教えてきたので、得意なムチから久しく遠ざかっていました。

そのため、魔物と戦う事が決まってからというもの、お庭で復習してきたのです。

おかげで勘を取り戻し、敵におくれを取らずに済んでいます。

なお、王子は次第に戦闘に慣れてきたようです。

とは言え、[アルラウネ]には、いささか躊躇ためらっておられましたが……。

魔物集団を殲滅したところで、

「ベルーグ、マリー、援護してくれて、ありがとう。」
「分かってはいたけど、二人とも、かなりの腕前だね!」

王子が微笑みながらお声がけくださったのです。

補佐を務め上げられたことに胸を撫で下ろす私でした―。



わたくしは“ユーン・バーンネル”でございます。

ラルーシファ様の“お世話係”にして…、よしましょう。

回りくどくなりそうなので。

ただし、お忘れの方もいらっしゃるかもしれないため、“黒猫の耳と尾を有している”という事は、再認識しておいてください。

……、さて。

ラルーシファ様の教育係も兼任するようになってからというもの、奇跡に驚かされてばかりです。

[大公様の館]に到着してからは、[ムラクモ]に秘められた力を目の当たりにしました。

これだけでなく、女神様がたにお会いできたのです。

新たな楽しみとなったのは、アシャーリー様による調理でございます。

わたくしが虜にされたのは[スープ類]でした。

特に“肉や骨などの煮出し汁”こと“ブイヨン”なるものをもとにした[コンソメ]を口にすれば、心身に幸せが広まるのです。

わたくしなどは、少なからず“肉食”の血を引いているため、お野菜は苦手としてきました。

ですが、コンソメは味わい深いので、自然と食が進みます。

勿論、他のスープも創意工夫がなされているため、今まで飲んできたものより格別です!!

何はともあれ…。

魔物と戦う事になりました。

ラルーシファ様やアシャーリー様の所の“獣人”が、森林に足を踏み入れます。

すると、“マイコニド/アルラウネ/食人花/ウッドゴーレム樹木人形”の約5体ずつが、歩いていたり、休息していたのです。

各自、そこら辺の石を掴んで投げ当てたら、魔物たちが、奇声を発したり、音を鳴らして、仲間を呼びました。

およそ15体ずつとなった“植物系の群れ”が、わたくしどもに襲い掛かってきます。

ここからは、走って森から出たのです。

そうした役割は〝人間やエルフよりも身体能力が高い獣人〟が適しております。

つまり、[素早さ]や[腕力]などが優れているのです。

しかし、“鬼”や“竜”には劣ると、聞き及んでいます。

わたくしとしては、面識がないので、判然としませんが。

ちなみに、“戦闘能力”のほうは【魔法】や【スキル】の数値に左右されます。

結局のところ、〝両方の能力が高いほどに強い〟のです。

さておき……。

魔物を倒しきって、ラルーシファ様に合流したら、

「ご苦労さま!」
「ユーン達も素晴らしい活躍だったね!!」

笑顔で迎えてくださいました。

これには、“お世話係の5人”が、耳や尻尾を〝パタパタ〟させて嬉しがります。

立場的に自分を律しようとしたわたくしではありましたが…、喜びを隠しきれません!

その光景に、アシャーリー様の“教育係”の方々が羨ましそうにしております。

察したらしいアシャーリー様も、感謝や、お褒めの言葉を、述べられたのです。

これによって、ルシム様はもとより、あちらの誰もが、上機嫌となりました―。
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