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黎明期
第31話 二重の意味で進む御飯②
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アシャーリーと、その母親が、連れて来ていた二名の料理人を伴って、厨房に向かっている。
[客間]に残った僕らには、給仕によって、紅茶と、お菓子が、振る舞われた。
“お菓子”と言っても、スコーンみたいな形と大きさで、〝パンを乾かしてもう一度焼いたもの〟である。
いわゆる“堅パン”であり、保存食みたいな味だ。
お昼の支度が済むまでの間に、ルシム大公の家族を軸として、会話を交わしていく僕たちだった……。
▽
一人のメイドが「準備が整いました」と知らせてくれたので、僕らは[食堂]に赴いている。
ひと足先に到着していたアシャーリー達は、二名の子供に、一名の女性と、談笑していた。
ふと“女の子”のほうが、
「あ!」
「おじぃ様!!」
大公に気づき、駆けてくる。
少し年配の“男の子”も、この後ろに続いた。
「おぉ~、二人とも、元気じゃったか?」
〝ニコニコ〟しながら少年少女を抱きしめた大公に、近づいてきた女性が、
「お久しぶりです。」
「お義父様。」
柔らかな物腰で会釈する。
「うむ。」
「息災そうで何よりじゃ。」
そのように返した大公に、
「父上。」
「再会を楽しむのは、また後程になさってください。」
長男さんが声をかけた。
「あぁ、そうじゃったの。」
「儂とした事が、つい、うっかりしてしもうた。」
姿勢を正して、〝コホン〟と咳払いした大公が、
「こちらにおわす御方は、“ダイワの第二王子”ことラルーシファ殿下であらせられる。」
威厳を示す。
これによって、僕に対し、三名が貴族らしい挨拶を行なう。
なお、長男家さんの家族だった。
30代半ばくらいの奥さんは、“ゆるふわセミロングの白金髪”だ。
12歳の男子は“ライトブラウンのショートヘア”で、9歳の女子は“白金のロングヘア”だった…。
▽
それぞれ、ほぼ同時に“唐揚げ”をひとかじりする。
「むッ??」
領主と、
「これは?!」
長男さんが、目を丸くした。
お兄ちゃんのほうは、
「おいっしぃーッ。」
瞳を輝かせ、
「はふぅ~。」
妹ちゃんが至福の表情となる。
奥さんは、
「このようなお肉料理は初めてです。」
「なんと形容したらよいのか……、ただただ感動しております。」
驚きを隠せないようだ。
そこから更に、面々が、“ポテトフライ/スクランブルエッグ/野菜スープ/ロール型のセミハードパン”を口に運んでは、〝おッおぉーッ〟や〝むッはぁ~〟など、何かと喜びを爆発させる。
こうしたなか、
「パンとスープも、こっちで作ったの??」
アシャーリーに素朴な疑問を投げかけてみたら、
「いいえ、そこら辺は、いちから調理する時間がなさそうだったので、今朝の残りを“アイテムボックス”に入れてきました。」
「スープは“ストックポット”ごと持って来て、こちらで温め直しています。」
との説明だった。
ちなみに、[ストックポット]とは、[寸胴鍋]の事らしい…。
▽
“地球の食”を堪能した5人が、〝ふぅ―〟と息を吐き、満足そうにしている。
まぁ、僕らも似たようなものだけど。
「まさか、これほどまでとは……。」
いささか余韻に浸った長男さんが、
「父上が仰せになられていたとおり、お店を開けば繁盛するに違いないでしょう。」
大公に視線を送った。
「で、あろう。」
少なからず得意気になった流れで、
「まずは、ここ“スブキィ”で試して、様子を見たい。」
「軌道に乗った暁には、北の港町“ジィーモ”でも展開していこうと考えておる。」
「噂が広まれば、各国から客が訪れ、かなりの経済効果に繋がるじゃろう。」
「ただ…、忘れてはならんのは、ラルーシファ殿下とアシャーリーの件だ。」
そのように大公が語る。
「何かあったの?」
従兄に尋ねられたアシャーリーが、
「あぁ~、うん、そのぉー、……。」
返答に困ったところ、
「詳しいことは、あとで聞かせるから、今は控えなさい。」
長男さんが優しく諭す。
これに、
「はい、分かりました。」
素直に応じて引き下がる息子くんだった。
「さて…。」
「二人には、できるだけ早く店舗に打って付けそうな物件を探してもらいたい。」
「もし、どこにも無さそうであれば、営業不振で潰れそうな店でも構わん。」
「料理人ごと確保できれば、手間を省けて助かるしのッ。」
そう述べた大公に、
「責任重大ではありますが…、かしこまりました。」
領主と、
「必ずや成し遂げましょう。」
長男さんが、頷く。
「ところで。」
「先程ご馳走になった品々を、たまにでもいいので今後も味わいたいのだけれど……。」
「定期的に、こちらに通ってもらえないかしら??」
長男家の奥さんに窺われ、
「それでしたら、一緒に来ている料理人たちが、厨房で調理法を教えている最中なので、大丈夫ですよ、お義姉さん。」
アシャーリーの母親が状況を伝える。
この発言を受け、〝ぱぁあ~☆〟と幸せそうな顔つきなる“長男さん家族”だった―。
[客間]に残った僕らには、給仕によって、紅茶と、お菓子が、振る舞われた。
“お菓子”と言っても、スコーンみたいな形と大きさで、〝パンを乾かしてもう一度焼いたもの〟である。
いわゆる“堅パン”であり、保存食みたいな味だ。
お昼の支度が済むまでの間に、ルシム大公の家族を軸として、会話を交わしていく僕たちだった……。
▽
一人のメイドが「準備が整いました」と知らせてくれたので、僕らは[食堂]に赴いている。
ひと足先に到着していたアシャーリー達は、二名の子供に、一名の女性と、談笑していた。
ふと“女の子”のほうが、
「あ!」
「おじぃ様!!」
大公に気づき、駆けてくる。
少し年配の“男の子”も、この後ろに続いた。
「おぉ~、二人とも、元気じゃったか?」
〝ニコニコ〟しながら少年少女を抱きしめた大公に、近づいてきた女性が、
「お久しぶりです。」
「お義父様。」
柔らかな物腰で会釈する。
「うむ。」
「息災そうで何よりじゃ。」
そのように返した大公に、
「父上。」
「再会を楽しむのは、また後程になさってください。」
長男さんが声をかけた。
「あぁ、そうじゃったの。」
「儂とした事が、つい、うっかりしてしもうた。」
姿勢を正して、〝コホン〟と咳払いした大公が、
「こちらにおわす御方は、“ダイワの第二王子”ことラルーシファ殿下であらせられる。」
威厳を示す。
これによって、僕に対し、三名が貴族らしい挨拶を行なう。
なお、長男家さんの家族だった。
30代半ばくらいの奥さんは、“ゆるふわセミロングの白金髪”だ。
12歳の男子は“ライトブラウンのショートヘア”で、9歳の女子は“白金のロングヘア”だった…。
▽
それぞれ、ほぼ同時に“唐揚げ”をひとかじりする。
「むッ??」
領主と、
「これは?!」
長男さんが、目を丸くした。
お兄ちゃんのほうは、
「おいっしぃーッ。」
瞳を輝かせ、
「はふぅ~。」
妹ちゃんが至福の表情となる。
奥さんは、
「このようなお肉料理は初めてです。」
「なんと形容したらよいのか……、ただただ感動しております。」
驚きを隠せないようだ。
そこから更に、面々が、“ポテトフライ/スクランブルエッグ/野菜スープ/ロール型のセミハードパン”を口に運んでは、〝おッおぉーッ〟や〝むッはぁ~〟など、何かと喜びを爆発させる。
こうしたなか、
「パンとスープも、こっちで作ったの??」
アシャーリーに素朴な疑問を投げかけてみたら、
「いいえ、そこら辺は、いちから調理する時間がなさそうだったので、今朝の残りを“アイテムボックス”に入れてきました。」
「スープは“ストックポット”ごと持って来て、こちらで温め直しています。」
との説明だった。
ちなみに、[ストックポット]とは、[寸胴鍋]の事らしい…。
▽
“地球の食”を堪能した5人が、〝ふぅ―〟と息を吐き、満足そうにしている。
まぁ、僕らも似たようなものだけど。
「まさか、これほどまでとは……。」
いささか余韻に浸った長男さんが、
「父上が仰せになられていたとおり、お店を開けば繁盛するに違いないでしょう。」
大公に視線を送った。
「で、あろう。」
少なからず得意気になった流れで、
「まずは、ここ“スブキィ”で試して、様子を見たい。」
「軌道に乗った暁には、北の港町“ジィーモ”でも展開していこうと考えておる。」
「噂が広まれば、各国から客が訪れ、かなりの経済効果に繋がるじゃろう。」
「ただ…、忘れてはならんのは、ラルーシファ殿下とアシャーリーの件だ。」
そのように大公が語る。
「何かあったの?」
従兄に尋ねられたアシャーリーが、
「あぁ~、うん、そのぉー、……。」
返答に困ったところ、
「詳しいことは、あとで聞かせるから、今は控えなさい。」
長男さんが優しく諭す。
これに、
「はい、分かりました。」
素直に応じて引き下がる息子くんだった。
「さて…。」
「二人には、できるだけ早く店舗に打って付けそうな物件を探してもらいたい。」
「もし、どこにも無さそうであれば、営業不振で潰れそうな店でも構わん。」
「料理人ごと確保できれば、手間を省けて助かるしのッ。」
そう述べた大公に、
「責任重大ではありますが…、かしこまりました。」
領主と、
「必ずや成し遂げましょう。」
長男さんが、頷く。
「ところで。」
「先程ご馳走になった品々を、たまにでもいいので今後も味わいたいのだけれど……。」
「定期的に、こちらに通ってもらえないかしら??」
長男家の奥さんに窺われ、
「それでしたら、一緒に来ている料理人たちが、厨房で調理法を教えている最中なので、大丈夫ですよ、お義姉さん。」
アシャーリーの母親が状況を伝える。
この発言を受け、〝ぱぁあ~☆〟と幸せそうな顔つきなる“長男さん家族”だった―。
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